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報道の自由が下がったことを記事にする自由



今朝の朝日新聞の第7面に、ぽつんと孤立したような記事があった。第1面の目次欄にも紹介はなく、パリ駐在員からの報告の形をとっている。「国境なき記者団」(本部・パリ)が20日に発表したランキングで、報道の自由ついての日本の順位が、前年より11下がって72位になったというのだ。

 これは世界の180国を対象にしていて、日本の下には主要国としてはイタリア、ロシア、中国ぐらいしかない。上位には北欧諸国が並んでいて、日本も2010年には11位だったものが、毎年つづけて順位を下げ、下げ止まらずにいるわけだ。2010年と言えば日本では民主党への政権交代が実現した翌年だった。そう言えば政権への要望や批判を、当時のマスコミは活発に書いていたような気がする。世の中の風通しがよかった。

 今年の上記の報告書では、「東洋の民主主義が後退している」としたうえで、特に日本について特定秘密保護法に言及して、「定義があいまいな『国家機密』が厳しい法律で守られている」と説明し、さらに多くのメディアが自主規制に陥り、とりわけ安倍首相に対して自主規制が働いている、としている。

 そしてこの記事の後半では、この19日に行われた「表現の自由」に関する国連特別報告者の記者会見にふれ、調査の結果として日本では「報道の独立性が重大な脅威に直面している」と指摘したこと、そして日本のニュース番組のキャスターが相次いで交代したことを、海外の有力メディアが憂慮していることを紹介している。

 これはまさに日本のマスコミの危機なのだが、いまいち腑に落ちないのが、朝日新聞のこの記事の扱い方である。いわゆる客観報道で、こんなニュースがありましたと伝えているに過ぎない。しかし内容は日本のマスコミが重大な局面にあるという指摘である。当のマスコミの重要な当事者である朝日新聞社が、それについて何の論評も反応もしなくていいのだろうか。

 もし自主規制などしていない、自分たちは期待されている役割を充分に果たしているつもりだというのなら、社説にとりあげて堂々と反論すればいいではないか。それができずに、言われてみればその通りなのだが、自分たちにはどうすることもできない、せめて実情をお知らせするので、読者・世論の力でなんとかしてほしいと訴えているのだとしたら、これほど情けないことはない。言論の当事者が、言いたいことを言えなくてどうするというのだ。

 それとも、今はこの程度の自由しか残っていないというのが、本当の実情なのだろうか。だとしても、黙っていたら助かる命も助からないのが今の世の中なのだ。命のあるうちに、なりふり構わぬ絶叫を上げればいいではないか。聞く耳を持つ読者はいる。新聞には世の中を動かす力があるのだから。

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