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言葉は同じでも向いている方向は

同じ言葉でも、位置するところは正反対である場合もあります。諸外国と同じようなスローガンを叫んでいても実は日本だけ真逆の方向を向いている、みたいなことも多々あるのではないでしょうか。そして日本だけ経済成長から取り残され、「グローバル化が悪いのだ」みたいに強弁されることも多いですが、たぶんそれはあらゆる面で間違っているのだと思います。

 典型的なのは「ムダ削減」です。一口に「ムダ削減」といった場合でも、日本の場合は他国のそれとは全く違う方に努力を注いでいるのではないかな、と。この辺は長年ダラダラとブログを書き続けているだけにネタが被りますが、ジュースを絞る場合を例に挙げて考えてみましょう。オレンジジュースを絞るとして、一通り絞って果汁の出が悪くなったオレンジをどうするか? 僅かでも絞りかすが残っていれば余さず絞り尽くそうと全力を尽くすのか、それとも速やかに新しいオレンジを切って絞り始めるのか――果たして日本社会における「ムダ削減」はどっちでしょう?

 ここで「ムダ」は二通り考えられると思います。僅かに果汁の残った絞りかすを捨ててしまうことを削減すべき「ムダ」と考えるのか、それともカラカラの絞りかすから数滴の果汁を得ようとする労力をムダと考えるのか、ですね。時間あたりに得られる果汁の量を最大化するのであれば、取るべきは後者と言えます。費やした時間と労力に見合った果汁が得られないと判断すれば、絞りかすは捨てて新しいオレンジを切れば良いのです。時間あたりの労働生産性を上げたいのなら、指針とすべきは当然、後者です。

 周知の通り日本は(時間あたりの)労働生産性が低いことが指摘され続けています。ただ日本より労働生産性が高いように見える国は日本よりずっと賃金が高い、給与水準の低い日本は時間あたりの生産性は低くても、実は賃金あたりの生産性は高かったりするわけです。上記のオレンジジュースのたとえで言えば、やはり日本は前者なのでしょう。時間と労力を費やして絞りかすから一滴、二滴の果汁を搾り出せば時間あたりの生産性は当然ながら低下します。反面、オレンジ1個あたりの生産性は上がりますから。

 とりあえず私は国際標準である「時間あたりの」労働生産性を向上させるべきと考えますけれど、まぁ「賃金あたりの」労働生産性を追求していくのも異論としてはアリなのかも知れません。問題は、一口に「ムダ削減」なり「労働生産性向上」と語られている一方で、その「中身」を無視した議論だけが消費されているところでしょうか。ムダ削減や生産性向上を目標に掲げるのは結構ですけれど、それはどちらを向いた改革なのか、この辺あまりにも無自覚なまま旗が振られているようにも思います。

 日本企業が実際にやろうとしていることは(賃金あたりの)生産性向上なのに、国際基準での(時間あたりの)労働生産性が上がっていないと嘆くのは、何とも愚かしい話ではないでしょうか。日本はグローバル化しない、時間あたりではなくあくまで賃金あたりの生産性向上を目指す、というのなら賛成は出来ませんが筋は通ると思います。しかし日本の経済言論は自家撞着の酷いものばかりで……

 結局、日本企業が「ムダ削減」を進めれば進めるほど、ヨソの国の物差しでの「ムダ」はむしろ増えてしまう、労働生産性と同じで(日本式に)努力すれば努力するほど、(国際基準では)悪い方向に進んでしまう、そういうものなのだと思います。この結果として日本が世界経済を牽引するような格好になっていれば「日本のやり方が正しかった」と証明されそうなものですけれど、現実は全くの正反対です。もう、日本で主流の経済言論は180°ひっくり返してしまった方が良いのではないか、という気がしますね。

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