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復興財源は、原子力関連予算の徹底した見直しで捻出せよ。

国であれ民間であれ、ある特定の目的で積み立てられてきた積立金を、目的外に使用することは、いずれにせよ、筋が悪い。

そこにお金があるからと言って、別の目的に使うことを認めるのであれば、例えば、年金の給付にあてるために積み立てていた年金積立金を、現役世代への還元という屁理屈をつけて、豪華な宿泊施設等に使ってきた自民党時代のやり方と変わらなくなる。復興の名を借りたマッサージチェアである。民主党も、随分、与党らしくなってきたと言えよう。

国債整理基金の積立金にしても、年金積立金にしても、労災保険の積立金にしても、目的外使用のためにどんな理由をつけようと、本来使うべき使途に使わない限り、いずれにせよ、屁理屈の類(たぐい)であることに変わりがない。

また、一時的に借りてくるというアイデアもあるが、将来、返済しなくてはならない以上、その返済財源を工面する段階になると、同じような財源捻出の問題が再燃する。問題の先送りに過ぎないのである。
私が主計局にいた1990年代初頭、赤字国債の再発行を回避するため、主計局では、悪知恵を絞りに絞って様々な「かくれ借金」を考案していたものだが、20年経って、同じような作業を、役人ではなく政治家がやるというのも、皮肉な政治主導である。
ただ、積立金等の目的外使用も、かくれ借金も、極めて「筋が悪い」政策だと認めたうえで、本ブログでは、先日から話題となっている「復興債」の償還財源を捻出するための臨時異例の措置として、「より筋の悪くない」財源捻出策とその屁理屈をお示ししたい。
私が提案する「筋の悪さの度合いが小さい」財源確保策は、一言で言えば、既存の原子力関連予算の徹底した見直しである。

より具体的に言えば、

①エネルギー特会の見直しと、②財団法人原子力環境整備促進・資金管理センター(以下、「原環センター」という。)の資金の見直しで、復興財源を確保せよ、というものである。

概要は以下のとおりである。
福島第一原発の事故という歴史的な事故が発生した今、従来と全く同じように原子力政策を推進することは誰が見ても困難であり、まずは、エネルギー特会の原子力関連予算の徹底的な見直しが不可欠である。

「脱原発」と呼ぼうが、「減原発」と呼ぼうが、今後、一定の時間をかけて、原発への依存度を引き下げていくなら、少なくとも、これまで計画してきたペースで原発を新設することは困難である。

仮に、新設するにしても、福島第一原発の事故被害者への賠償に目途をつけてからにならざるを得ないであろう。そして、それには少なくとも数年の時間を要すると考える。

そうであるならば、原発推進を前提に編成されている現在のエネルギー特会の予算、とりわけ、電源開発促進勘定の予算は、少なくとも数年間は、ある程度縮減、凍結できるのではないか。

まず、計画的新設のために電促勘定に積み立てられている「周辺地域整備資金」(ストック)については取り崩しが可能である。

もともと1000億円超あった同資金については、23年度第一次補正予算の財源として既に500億円が取り崩されている。これには自民党も賛成している。そうであるなら、残りの500億円についても、復興関連予算に回すことは可能である。今後、新設のための資金が必要なら、復興や被害者の賠償に目途が立った時点で、積み立てを再開すればいい。

次に、エネルギー特会の毎年のフローの予算についても、一時的に復興に回すことを検討すべきである。

現在のエネルギー特会の電促勘定の年間予算は、3500億円程度である。これは、電源立地交付金のほか高速増殖炉(FBR)「もんじゅ」の開発などにも回されているが、少なくとも、「もんじゅ」は、現在、稼動していない。FBRの研究開発自体は否定しないにしても、少なくとも、復興や被害者への賠償の目途が立つまでは、関連予算は、復興にまわすべきではないか。

そもそも、今後数十年かけて「脱原発」、「減原発」を進めるのであれば、最短で2050年の実用化を目指している「もんじゅ」の開発計画そのものを、根本的に見直す必要がある。

「もんじゅ」を含め、仮にエネルギー特会の電促勘定の原発関連予算(フロー)を年間1000億円程度縮減できれば、10年間で1兆円の財源が確保できる。

この際、重要なことは、エネルギー特会の予算を縮減すれば、その分、一般会計に留保される分が増える仕組になっている(いわゆる「北方領土」が増える)ことである。この点について、財務省主計局も変な“スケベ心”を出さずに、浮いた財源については、復興債の償還財源にまわすことに協力すべきである。

次に、財団法人原子力環境整備促進・資金管理センター(以下、「原環センター」という。http://www.rwmc.or.jp/)の資金の見直しである。

この資金は、エネルギー特会そのものの資金ではないが、核燃料サイクル事業を推進するため、法律(「原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律」第10条)に基づき、使用済核燃料の再処理や最終処分のために、電力各社から拠出された資金が、原環センターという公益法人に積み立てられたものである。

仕組み→http://www.rwmc.or.jp/organization/financing/saisyori2.html

22年年度末で、再処理のために2兆円強、最終処分のために約1兆円、合計3兆円超のストックが、「原環センター」に積み上がっている。
再処理積立金 2兆4415億円(22年度末)
最終処分積立金  8200億円(22年度末)

加えて、毎年のフローとして約6700億円(22年度ベース)を超える資金が、この原環センターに流れ込んでいる。
再処理のための拠出金  5854億円(22年度)
最終処分のための拠出金等 853億円(22年度)
原資は、電気料金である。
もちろん、これらの資金は、再処理や最終処分という、いわゆるバックエンドのコストを賄うものとして積み立てられているものであるが、いわゆる「核燃料サイクル事業」が計画通り進むことを前提にしたものである。
ところが、相次ぐトラブルで、六ヶ所村の再処理工場が本格稼動する目途はたっていないし、「もんじゅ」についても本格稼動していない。また、NUMO(原子力発電環境整備機構)が多額の広告宣伝費を使って公募しているにもかかわらず、最終処分場の具体的場所は、未だに決まっていない。http://www.numo.or.jp/koubo/guide/procedure.html

バックエンドの重要性を否定するものではないが、少なくとも、六ヶ所村の再処理工場が本格稼動するまで、また、最終処分場が見つかるまでの間は、この原環センターのお金は、復興や原発事故被害者の救済のために、当面、活用すべきではないだろうか。

仮に10年間、原環センターの資金を復興にまわせるとしたら、
フローベースで6700億円×10年=6.7兆円と、現在既に積み立てられているストックベースの3.3兆円の合計10兆円の資金を、復興再の償還財源にまわすことができる。電力各社は反対するだろうが、少なくとも、新たな増税や電気料金の値上げは一切必要ない。

この10兆円に加えて、上述したエネルギー特会の見直しから約1兆円を捻出できれば、10年間で合計11兆円の財源捻出が可能となる。これは、現在の「復興債」の償還財源として提示されている臨時増税分を上回る額である。

私は、従来、これらエネルギー特会の予算や原環センターの資金については、原発事故被害者の賠償資金にあてるべきだと申し上げてきた。仮に、目的外に使う場合であっても、被害者の賠償にまわすことには合理性があると考えたからである。

しかし、先般、原子力賠償機構法が成立したことによって、こうした既存の予算に1円も手を付けることなく、賠償に必要な資金は、原則、電気料金に転嫁して追加の国民負担で賄うこととされた。私は、この機構法の考え方に納得できないが、こうした方針が覆らないのであれば、せめて、これら原子力関連の予算・資金は、復興債の償還財源にまわすべきである。

繰り返しになるが、積立金等の目的外使用は、いずれにせよ「筋の悪い」政策である。しかし、福島第一原発の事故を受け、原子力政策の見直しが不可避であること、また、六ヶ所村の再処理工場や「もんじゅ」の稼動の目途がたたず、加えて、最終処分場の場所が決まっていない現実を踏まえれば、エネルギー特会や原環センターから、10年間に限り合計11兆円の財源を捻出することは、年金積立金に手をつけるような方策に比べれば、「筋の悪さ度合いが低い」政策だと考える。

とにかく、代替財源を見つけなければ、「復興」の償還財源のための増税が必要になってくる。

本提案は、極めて大胆で、政治的には困難な内容だと自覚している。少なくとも旧来の自民党政権では絶対にできない政策である。だからこそ、「増税なき復興」を進める同僚議員、および、反増税を掲げる次の民主党代表候補には、是非とも、強力な応援をいただきたいと思う。

<提案の概要>
「復興債」の償還財源(必要財源13兆円)は、10年かけて以下の方策のうちから確保する。

1.子ども手当てや国家公務員人件費等既存予算の見直し 約3兆円(既定方針)
2.エネルギー特会(電源促進勘定)の見直し 約1兆円(10年間)
 ・「周辺地域整備資金」の取り崩し 0.05兆円(一回限り)

 ・「もんじゅ」等原子力関連予算の圧縮 約1兆円(1000億円×10年)

3.(財)原環センターの資金の活用 約10兆円(10年間)
 ・再処理および最終処分のための積立金の取り崩し 約3.3兆円
 ・電力会社からの毎年の拠出金の活用 約6.7兆円(6700億円×10年)

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