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東電の賠償スキームについて

 明日中にも、東電の賠償スキームが決定されるという話が出ている。まだ、党内でも十分な議論が行われていないので、正直、驚いている。

 現在、検討されているとされているスキームについては、あくまで、マスコミの情報で知り得たものなので、前提が間違っているところが多々あるかも知れないが、いくつかの論点について、基本的な考えを述べる。

 まず、いかなる賠償スキームになろうとも、数兆円にも達するであろう賠償額について、株主、社債権者、融資のレンダー、国(国民の税金)、電力利用者(電気料金)等のステークホールダーが、何らかの形で負担を分かち合うことになる。それゆえ、スキーム自体の透明性と公平性が極めて重要である。

 また、賠償スキームで守るべきは、電力の安定供給という「機能」であって、東電という「組織」ではない。金融機関への公的資金の場合もそうであったが、守るべきは「決済システム」であって「金融機関」ではない。この点を見誤ると政権に致命的なダメージとなる。

特に、以下の点に留意が必要だと考える。

1.プロセスの透明性と公平性には十分配慮が必要

 東電の処理スキームとしては様々な方法が考えられるが、そのうち、プロセスの透明性は法的整理が一番高い。また、例えば、会社更生法を適用した場合であっても、政府保証や政策金融等の公的支援のあり方によっては、法的整理の下でも、電力の安定供給を担保することは可能である。それゆえ、何らかの裁量的スキームを採用する場合には、なぜ、法的整理では対応できないのか、明確に説明する義務がある。そして、仮に、かかる裁量的スキームを採用する場合には、経済合理性と負担の公平性を調整する中立的な第三者機関の存在が不可欠である。少なくとも、第三者機関によるデューディリジェンス(資産査定)なくして、安易な処理策を決めるべきではない。少なくとも、上場維持のためや、決算を作るために処理スキームの策定を急ぐべきではない。

2.金融市場への影響は、原子力発電のリスク軽減で対応するのが筋

 東電に過大な責任を負わせると、株式・社債市場に悪影響が及び、他の電力事業者の資金調達にも悪影響が出るとの見方がある。もちろん、金融市場への影響は十分配慮すべきであるが、他社の資金調達能力は、あくまでそれぞれの電力会社がさらされているリスクに依存するものであり、東電の処理スキームとは直接には関係がないはずである。例えば、現在稼動中の全て原発の事故発生リスクを再検証し、耐震・津波対策の強化や、場合によっては運転停止を行えば、事故賠償リスクを低減・回避することができる。高いリスクを放置したままにして、免責適用がなければマーケット全体に悪影響を及ぼすと主張することは本末転倒だと思われる。

3.東電以外の各社からの「保険料」を、東電の賠償にまわすべきではない

 また、今後、発生する同様の原発事故に備えるための「保険料」と称して、他の電力各社からも資金を拠出させようとしているが、住専のときの「一般勘定」や「協定後勘定」と同様、最終的には、この「別勘定」も、東電の処理のために、“目的外に”使われる可能性が高い。仮に、他社にも負担を求めるなら、電促税等の増税など法律に基づく措置で行うのが筋である。しかし、次に掲げるようなエネルギー特会の予算や原環センターの積立金の徹底的な見直しもせずに、増税を行うべきではない。

4.原子力関連予算の徹底した見直しを行うべき

 東電の各ステークホールダーが、一定のルールで負担を分担することが必要であるが、一方で、国の負担分についても明確にすべきである。その際の財源としては、安易な増税に走らず、まずは、エネルギー特会の電源開発促進勘定3000億円強など、既存予算の徹底した見直しを行うべきである。原発を直ちに全て止めることは非現実的だが、少なくとも、新規増設は見送るべきと考える。平成23年度第1次補正予算で、エネ特の「周辺地域整備資金」が半減されたことはその一歩である。

 また、核燃料サイクル事業については、もんじゅの運転再開の目途が立っていないことも勘案すれば、見直しを検討すべきである。昨年秋、「事業仕分け」で原子力関係の予算を担当したが高速増殖炉関連の予算については、根本的に見直す必要があると思われる。そもそも、今から40年後の2050年に商用化を目指している特殊な炉の研究を、電促税を払っている電力会社自身がどれだけ求めているのか疑問である。

 いずれにしても、こうした電促勘定の予算については、賠償が終わるまでは、被害者救済に優先的に振り向けることも一案である。

5.原環センターの積立金の活用について

 また、使用済核燃料の再処理のため、(財)原環センターに積み立てられている積立金2兆円強については、核燃料サイクル事業を一時凍結する方針を決定すれば、取り崩すことも可能だと思われる(法的には、電力各社への返還か)。ただし、核燃料サイクルを止める場合には、直接処分のコストが増える可能性があるため、その分は割り引いて考える必要がある。また、そもそも、現在想定されている最終処分のコストは低すぎる可能性もある。いずれにせよ、再計算が不可欠である。

6.総括原価方式を見直すべき

 スキームの如何にかかわらず、今後生じる東電の利益の一部を、賠償および配当の原資にまわす形をとる場合、「総括原価方式」の下では、東電は、賠償コストをそのまま電力料金に上乗せすることができる(特に、家庭向け等)。東電にリストラを求めるといった精神論的な対応ではなく、電気事業法に基づくこうした料金設定の仕組そのものを改めない限り、東電の賠償負担は、結局、全て利用者にパス・スルーされることになる。その前提として、次の地域独占体制の見直しも検討する必要がある。

7.地域独占体制や発送電一体の見直しを検討すべき

 何らかの公的支援を行う場合には、現行の地域独占の9社体制や発送電一体についても見直しを検討すべきである。今後のエネルギー政策の転換を見据えた改革とすべきであり、単に既存体制の維持を助長するような処理スキームとすべきではない。ただし、こうした電力再編の問題は、我が国のエネルギー政策全体の見直しの中で議論すべきである。

8.原子力発電コストを再計算すべき

 一方、仮に、電力料金の上乗せを求めざるを得ない場合、原子力発電の真のコストを国民に明示すべきである。国際的に高いと言われてきた日本の電気料金の中で、原子力発電のコストは他の発電に比べて最も安いと言われてきた。しかし、今回のような賠償コストや、再処理および最終処分コストなども含めた、「原子力発電の真のコスト」は一体いくらになるのか改めて再計算し、国民に示した上で、料金値上げの理解を求めるべきである。

9.仮払いの仕組を早急に創設すべき

 賠償スキームがどのようなものになるにせよ、出荷停止の対象となった野菜や魚、また、警戒区域等における家畜などの補償については、一日も早く仮払いを行うべきである。発災から2か月が経とうとしているが、現行の仕組では二重の意味で迅速な支払いが難しい。第1に、紛争審査会の決定がなければ賠償対象が確定しないこと、第2に、仮に賠償対象が確定しても、そのうちどれだけを東電が支払い、国がどれだけ「援助」するのか、この負担割合が簡単に確定しないからである。そこで、国は速やかに「損害賠償支払基金」などの仕組を早急に設け、国が窓口になって支払いを行える仕組を創設すべきである。東電の支払う範囲が確定次第、国は東電分について追って求償権を行使すればよい。

 私のこうした考えについては、反論も多々あると思われるが、ただ、オープンな場で喧々諤々の議論を経ることなく、これほど巨額なスキームを決定すべきではないと思う。

 報道されているようなスキームは、見かけは複雑だが、実は、数兆円単位の電気料金負担増を、時間をかけて国民に求めていくシンプルなスキームである。

 負担増を求めるなら、丁寧な説明が不可欠である。

 政治はプロセスである。

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