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練習中の怪我で車椅子生活に それでも競技続ける情熱の源は ラグビー選手 金澤功貴さん - 大元よしき

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車椅子のキャプテン誕生

 2014年3月。ようやく車椅子に乗れるようになり病院から外出許可が下りた。

 功貴は常翔学園の試合会場であった摂南大学のグラウンドへ向かった。その後、何度か外出許可をもらって試合会場へ足を運んだ。

 功貴が学校に通えるようになり、本格的にグラウンドに戻ったのは、あの菅平合宿から1年2カ月後の2014年10月のことである。功貴にとっては、様々な意味を含んだ長く濃密な時間だったに違いない。全国大会大阪地区予選が始まろうとする、まさに秋本番という季節だった。

 その年の常翔学園は、大阪第3地区決勝戦で大阪桐蔭に「12-13」で敗れた。常勝学園はその後新チームに向かって動き始めた。例年であれば野上友一監督がキャプテン、バイスキャプテンと話し合って、次年度のキャプテンを指名する。しかし、この年の決定プロセスは大きく例年とは異なった。

 「野上先生から、『誰をキャプテンにするか、おまえたちで話し合って決めろ』と。そうしたら『功貴がええ』『おまえしかおらんやろ』とみんなが言ってくれて、僕にキャプテンが決まりました。常翔学園でキャプテンをやるのは生半可な気持ちではできません。中学からの夢だったからと言っても、覚悟を決めてやるしかないと思いました」

だが、就任当初は自分がプレーできないだけに遠慮があった。本来ならキャプテンとして言わなければならないことも、「プレーしていないヤツに言われたくないと思われないだろうか」などと考えて、言葉を飲み込んでしまったこともある。

“捨て身になる”と腹くくる

 けれど、新チームになってから「目標に向かって毎試合成長していけるチームになろう」と言ってきた。それには気が付いたことや、言うべきことはしっかり伝えなくてはチームの成長に繋がらない。信頼されたからこそのキャプテン指名だったはずだ。であるなら、自分がキャプテンとしてどう思われるかなど考える必要はない。車椅子だからといって、できない理由にはならない。功貴はさまざまな葛藤を抱えながらも、「捨て身になってやるだけだ」と腹をくくった。

 「そんな思いが通じたのかもしれませんが、チームのみんなから『遠慮せんで、どんどん言ってくれ』と言われたので、僕も言いやすくなりました。みんなにはありがたいと思っています」

 新チーム最初のヤマ場は2015年3月~4月上旬にかけて行われた「全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会」(埼玉県熊谷市開催)だ。

 常翔学園のメンバーは車椅子を中心に円陣を組み、功貴はチームメイトを鼓舞した。試合中は声で仲間の背中を押した。

 常勝学園は予選リーグを順調に勝ち上がったが、準決勝で同じ大阪地区の東海大仰星に「7-36」で敗れた。直前の近畿大会で敗れていた相手だけに、リベンジを果たせなかった思いは強かった。頂きへの道程の遠さを噛みしめ、全国選抜への挑戦は終わった。

『花園』3年ぶりの出場を果たす

 最終的な目標は高校ラグビーの最高峰である「全国高等学校ラグビーフットボール大会」、通称『花園』で優勝することにある。

 功貴はグラウンドでチームメイトを鼓舞する傍ら、繰り返し試合の映像を確認し、そのデータを基に分析するという「知」の面からチーム強化に貢献した。

 大阪は全国一参加校が多く、まさに高校ラグビーのメッカと言える地域だ。予選は第1から第3地区に分かれて行われ、勝ち上がった3チームが大阪代表として『花園』への出場権を獲得する。どの地区もハイレベルの戦いの連続で『花園』への道は険しい。2012年に全国優勝を果たした常翔学園も、2年連続で『花園』への出場権を逸していた。

「常翔学園に憧れて、キャプテンになって優勝したいっていう夢を持って入ってきました。でも怪我をしてしまい、それでも、その夢をずっと持ち続けて、覚悟を決めてここまで来ました。車椅子のキャプテンだからといって、負けていいはずがないと思ってきました」

 そして2015年11月15日、常勝学園は決勝で関西大学北陽高校に「49対12」で勝利し、3年ぶりに『花園』への切符を勝ち取った。

 「この2年間出られなかったので、正直ほっとしました。全国優勝するという僕たちの夢の第一歩が踏み出せたのかなって思いました。ここから目標に向かって、チームの再スタートだって、みんなで気持ちを切り替えていったのですが……」

ラグビーと一生涯付き合いたい

 常翔学園は2回戦(1回戦はシード)で奈良の天理高校と対戦し「3対5」で敗れた。2回戦屈指の好カードに花園第3グラウンドは観客で溢れかえっていた。

 功貴は今の気持ちをこう語る。

 「もっとこうしたらええんちゃうか、もっとできたんちゃうかって思います。後悔先に立たずとか言いますけど、もっとこうしたら良かったとか、今になったらいっぱい出てきます。そう思っても、もう遅いんですよ。この天理戦を『花園』で負けた記憶としてだけじゃなく、この先、僕にとっての『あの負けがあってこそ』って言えるようにしたいです」

 功貴は2016年4月、摂南大学法学部法律学科スポーツ法政策コースに進学した。

 ラグビー部に所属しながら常翔学園でも分析を担当するテクニカルコーチとして、しっかり学んでチームに貢献していきたいと語っている。また、将来的にはどのような形にせよ、ラグビーには関わり続けていきたいと考えている。怪我というアクシデントはラグビーの練習中に起きたが、その後を支えたのはラグビーの仲間であり、ラグビーの絆だからだ。そのラグビーと一生涯付き合っていきたい。それが功貴の願いだ。

 学業とラグビーとリハビリと、恋もあり友情もある。いやいや、まだまだ、青春にはやることがいっぱいある。功貴の学生生活は今後ますます濃度の濃いものになっていくだろう。自分が欲する限り可能性は限りなく大きく、創意は無限である。

常翔学園高校ラグビー部「金澤巧貴君のブログ」
http://www.navyreds.com/nextstep/category/kkblog

「金澤功貴君を支援する会」にご理解とご協力をお願いいたします。
http://www.navyreds.com/nextstep/kouki

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