- 2016年04月19日 12:00
トランプ旋風「アメリカ大統領選」最新現地リポート
1/2「メキシコとの国境に万里の長城をつくる」。そんな不動産王の人気に、米国政治が戸惑っている。急進の影にあるのは、有権者の「怒り」だ──。
「アウトサイダー」に中高年の白人が期待
2月23日夜、ラスベガスのカジノ兼リゾートホテル「トレジャー・アイランド」では中高年の白人有権者が長蛇の列をつくっていた。アメリカ大統領選挙のネバダ州共和党党員集会で圧勝したドナルド・トランプ氏(69歳)の勝利集会に参加するためだ。
「「腰痛持ちだから」と言ってスロットマシーンの椅子に腰かけて入場の順番を待っていたラスベガス出身のアデル・プールさんは「彼なら、政治家が解決できない問題を解決できる」と話す。
「みんな、彼に首ったけ。知的でパワフルで、有能なビジネスマン。政治家はウソばかりで、もううんざりよ」
列に並んでいたラスベガス近郊に住む教師のイボンヌ・ジャイルズさんも、党員集会でトランプ氏に一票を投じた。
「外交政策や移民問題に通じ、『イスラム国』もコントロールしてくれる。『米国を再び偉大な国』にできるのは彼だけ。クリントンにも勝てる」と「トランプ大統領」の誕生に期待する。
この日、トランプ候補は、2位のマルコ・ルビオ候補(44歳)に20ポイント以上の差をつけ、45.9%という得票率で圧勝した。さらに3月1日の「スーパーチューズデー」でも11州中7州を制覇。泡沫候補として消えていく「はず」だった同氏が一大旋風を巻き起こし、快進撃を続けている。
こうした「トランプ旋風」とは、いわばトランプ氏を「アウトサイダー的世直しヒーロー」とみなす動きだ。
トランプ候補は既成の政治家を激しく批判する。いわくワシントンの政治家は、ウォール街からの政治献金で操られている。民衆のための政治ができるのは、大金持ちの自分だけだ――。
「不法移民」を標的に怒りをかき立てる
さらに中国や日本、メキシコを「敵」に見立て、「敵」から米国を奪還できるのは自分しかいない、と訴える。富裕層に所得が集中する経済格差に「怒り」を持つ有権者は多いが、その矛先を外国の「敵」に向け、そして自分が大統領になれば、「米国を再び偉大な国にする」と連呼する。
米民間世論調査機関ピュー・リサーチ・センターの最新調査(3月4日付)によると、有権者がトランプ氏を支持する最大の理由は「政治家ではない、アウトサイダー性」。そして、「有能なビジネスマンであること」「自分の考えを歯に衣着せず話すこと」「移民問題」と続く。
米国の雇用はかなり改善しているが、中間層はオバマ政権が喧伝する景気回復の恩恵とも無縁だ。米政府は、ウォール街やシリコンバレー、大企業の利益を優先させ、製造業軽視の政策を推進。「持つ者」が「さらに持つ者」になるなか、中間層は弱体化の一途をたどっている。環太平洋連携協定(TPP)も、さらなる雇用喪失につながるという危機感が広がっており、トランプ氏は「TPP反対」を打ち出す。
仮にトランプ氏が大統領になっても、グローバル化の反転など無理な話だが、「『怒り』をかき立てて票につなげるのは効果的な選挙戦略だ」とカリフォルニア州ロヨラ・メリーマウント大学のマイケル・ジェノビース教授は言う。
「トランプ旋風」を支えているのは、主にブルーカラー層の白人有権者だ。ジェノビース教授によると、米国では、歴史的に少数派がスケープゴートにされる傾向がある。1920~30年代はアイルランド系とイタリア系の移民。そして今、トランプ氏が狙い撃つのはメキシコ系移民だ。
「自分たちの問題を誰かのせいにするやり方だ。白人有権者の間で、米国が非欧州系移民の手に落ちてしまうという『怒り』が渦巻いている」
人種的反発を支持の背景にしているのはトランプ氏だけではない。トランプ氏に次ぐ勢いのあるテッド・クルーズ候補(45歳)は、保守派の草の根運動「ティーパーティ」の支持を受けている。「ティーパーティ」は参加者の多くが白人で、医療保険制度改革「オバマケア」の撤廃を叫ぶ。2009年にはオバマ大統領への人種差別的な誹謗を行うなど、偏狭な主張で知られている。
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