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金正恩氏が「偉大なる祖父」から受け継ぐ血塗られた歴史

金正恩氏

北朝鮮は15日、金正恩第1書記の祖父、故金日成主席の生誕祭である「太陽節」を迎えた。国内では何週間も前から、様々な記念行事や祝賀イベントが行われている。その一方、金日成氏と正恩氏が一緒に映った写真や映像は、これまで一度も公開されたことがない。

というより、正恩氏の母である高ヨンヒ氏が大阪出身の元在日朝鮮人であることからくる様々な事情により、金日成氏は生前、正恩氏やその兄妹と一度も会わなかったという説が有力なのだ。

(参考記事:56年前の今日、「金正恩伝説」は日本で始まった

それでも、正恩氏は自らの権力を維持するため、「偉大なる祖父」の威光を利用してきたわけだ。そして、もともと「お爺ちゃん似」とされてきた正恩氏は、独裁体制を守る上での無慈悲さでも祖父や父、故金正日総書記にひけをとらない存在になってきた。

そして、そこに至る過程こそが、正恩氏が核・ミサイル開発の強行に突き進む伏線ともなっている。

(参考記事:北朝鮮「核の暴走」の裏に拷問・強姦・公開処刑

北朝鮮の「建国の父」である金日成氏も、独裁体制を確立するまでの道は平たんではなかった。1953年に朝鮮戦争が休戦となり、北朝鮮は韓国との体制間競争としての戦後復興に取り組むが、フルシチョフによるスターリン批判(1956年)、中ソ対立(1960年代~)、キューバ危機(1962年)、韓国のベトナム参戦(1964年)、日韓条約締結(1965年)など国際情勢の激動にもまれ続けた。

金日成氏はこうした危機に、政敵の粛清と唯一思想体系の確立で対応。1956年のいわゆる「8月宗派事件」において国内のソ連派と延安派をまず排除し、自らを中心とする抗日パルチザン派による支配を固めていった。

粛清は、金正日氏の時代になっても続く。有名なのが、朝鮮人民軍のソ連留学組が標的となったフルンゼ軍事大学事件だ。また、金一族の政敵とは言えない、悪政に批判の声を上げただけの国民たちも数多くが虐殺された。

(参考記事:同窓会を襲った「血の粛清」…北朝鮮の「フルンゼ軍事大学留学組」事件

(参考記事:抗議する労働者を戦車で轢殺…北朝鮮「黄海製鉄所の虐殺」

こうした歴史のために、金正恩体制が国連において、国家的な人権侵害に対する厳しい追及を受けているのは周知のとおりだ。彼としては、祖父と父から「負の遺産」を背負わされた側面もあった。それも、現在では違う。正恩氏は多数の幹部を粛清し、自分自身の手を血に染めている。

(参考記事:北朝鮮の「公開処刑」はこうして行われる

金日成氏と正日氏はいかに残忍な粛清を行っても、その実態がなかなか国外に伝わらず、人権問題で本格的な追及を受けることがなかった。そのためおそらく、米国や日本との国交正常化に希望を持って外交を行えたはずだ。

だが、正恩氏の場合はそうは行かない。その厳然たる事実こそが、彼の暴走をより危険なものにしているのだ。

(参考記事:徐々にわかってきた金正恩氏の「ヤバさ」の本質

(参考記事:金正恩氏が「暴走」をやめられない本当の理由

※デイリーNKジャパンからの転載

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