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刈られても踏み付けられても這い上がる力

東芝、シャープなど、あれだけ日本政府に円安を迫ってきた日本企業は円安でも利益を上げられず、逆に安く海外メーカーに買われる始末です。期待の星だった新興企業楽天も、気がつけば中国を撤退し、東南アジアも撤退し、国内に安住してしまいました。業績のよいセブンアンドアイグループですが、83歳の会長が現役社長を解任する理由を「(現社長は)自分の指示に従ってきただけで、ほとんど改革案を出さなかった」と言うのです。社長を傀儡にした事実を認めた上、それを社長のせいにする老害ぶりには呆れるばかりです。

今週、IMFが今年と来年の世界成長予測を発表しました。日本の成長について今年は0.5%、来年はマイナス0.1%と予測しています。「黒田バズーカ―」や「異次元金融緩和」を使えば日本経済が良くなるという妄想をアベノミクスと称しているうちに、日本企業の本当の経営力は下がる一方です。

私は現政権の経済政策に反対しているのではありません。「何とかミクス」と言って政治力によって経済力を上げることが可能という妄想をする政治家、そしてその妄想を共有する経済人や企業家はダメだと思うのです。経済の本当の力はあくまでも一人一人の経済人、特に企業家たちの雑草のような、刈られても踏み付けられても這い上がり再生する力がカギです。

そんな堅い信念を持っているから前々回の宋メールを書きました。
http://www.softbrain.co.jp/mailmaga/back297.html
友人の中学生のお子さんが商売を始めたことに心の底から応援したくなるのです。実はその友人は北京在住のライター斎藤淳子さんでした。彼女自身もこの件について見解を書きましたので皆さんに読んでほしいと思います。

彼女を知った切っ掛けは中国の人気雑誌に掲載された彼女のエッセイでした。非常に心を打つ中国語エッセイを読んだ後、作者の名前を見ると「斎藤淳子」と書いてあります。日本の方でこんな素敵な中国語エッセイを書くとはびっくりしました。それから北京のイベントで本人とも出会ってお付き合いをいただくようになりました。

自分を持ちながらも新しいことについて果敢に触れる彼女を、私は大変尊敬しています。彼女の感想をそのままこの後に掲載します。お楽しみください。

お金を稼ぎたいと言い出した娘を前に考えたこと

北京在住ライター斎藤 淳子

私は北京で2人の子供を子育てしている。自分が育った日本の70、80年とは時代も文化も違う上、当然、子供の個性も私と違うので、自分の「当たり前」はいつも挑戦を受ける。今回もそれがまた、音を立てて崩れた。

中国の人も口を揃えて言うように、中国のイマドキの風潮はよろしくないものが多い。拝金主義もその一つだ。だから、私は自分の娘がこの国の悪しき拝金主義的風習に毒されないように、という心配を常にしている。

そのためか、今回も中1の娘がお小遣いが足りないからネットショップを開店して、お金を稼ぎたいと言いだした時、まず、考えたのは「拝金主義」に感染したからではないだろうかという心配だった。

私は、娘に「それは違うでしょう。もっと中学生らしい事をやるべきよ」と一喝した。

しかし、不屈の娘は夫に相談したところ、ビジネスマンでもある彼は早速ネットショップ開業のレクチャーを開始。代理と中継ぎの違いや、金銭的リスクと人的リスクなどを説明している。娘はいつもになく真剣に話を聞いていると思ったら、あっという間に小さなショップを出店してしまった。

夫に抗議したが、彼は涼しい顔で、本人が興味を持っているならやってみたらいい。僕がコーチする方が、他の人に教わるより良いし、下手なビジネススクールに行くよりずっと多くのことを学べる。自立して生きていく力を養うチャンスだし、全く問題ない、と言う。

確かに理屈はその通りではある。でも、私は腑に落ちない。何かが間違っているという気持ちが残った。夫は賛成できるのに、私はなぜ違和感があるのか。これは男女の差なのか、それとも日中の違いなのかと考えた。

更に言えば、拝金主義的な中国だからこそ、子供のビジネスも肯定されているのであって、日本の人はきっと皆反対するだろうと心の隅では思っていた。

とにかく、いつも私が頼りにしている日中の知人たちに意見を聞いた。日本人ママはおおよそ私と同じ反応だったが、驚いたことに圧倒的に多くの両国の友人たちが夫を支持した。私が疑っていた「拝金主義云々」などを指摘する声は全くなく、むしろ私のように大げさに反対する問題ではない、というのが大多数だった。

「そうなのかあ」と思っていたところ、知人の宋文洲さんからは一歩踏み込んでこう指摘された。日本にはお金を稼ぐことに対する偏見がある、と言うのだ。合法的で消費者に支持され、儲かっているビジネスは今の社会の基本細胞なのに、日本では、お金儲けと言うとマイナスイメージが付いて回る、と。なるほど、これは痛いところを突かれた。私はまさにこの偏見の権化だったのではないか!

娘が私に突き付けたお金儲けの是非は、中国の拝金主義のレッテルを張って非難して終わりという単純な話ではなかった。むしろ、賛成する夫と反対する私の間の溝を作っていたのは日本人の私の心に潜んでいたお金儲けに対する偏見だったようだ。

中国風の「皆お金が好きなもの」とアッケラカンと表現してしまう文化は美しくないが、だからと言って私のように、お金儲けを頭から否定するのも極端だ。一番良いのは、両者の真ん中で、お金を直視し、賢く扱えるが、それに従属しない生き方なのかもしれない。少なくとも娘にはそう生きてくれることを望みつつ彼女の小さな発意を見守ることにした。

「宋メール」のコンセプト

「宋メール」は宋自身が読者のご参考のため提供する個人の考えです。
「宋メール」は正論や結論ではなく、独自な視線を提供します。
「宋メール」は個性的なゲスト・オピニオンを用意します。
「宋メール」の読者は自立心が強く、世間に流されたくない方々です。

宋 文洲


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