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「自浄作用」としての会社による役員損害賠償請求訴訟の提起

マスコミではほとんど取り上げられていませんが、先日(2016年3月25日)、名古屋地裁岡崎支部において、フタバ産業さんの元社長さん、元専務さんに対する損害賠償請求訴訟の判決が出ています(WSJのニュースはこちらです)。フタバ産業さんの不正会計事件は、当ブログでも過去に何度かご紹介していましたが、一連の事件に対して、会社が不正見逃し責任を追及した事例かと思われます(判決文を読んでおりませんので、あくまでも記事からの推測ですが、会社資金の不正支出を主導したとして刑事処分を受けた役員さん方とは異なるようです)。

元社長さんには14億7000万円、元専務さんには2億1000万円の返還命令、ということで非常に高額ですが、過去の事件経過からみて、この裁判を最後まで進めたのはフタバ産業さんの監査役の方々だった可能性があります。おそらく会社としての自浄作用を発揮されたうえでの裁判だったものと推測いたします。近時、FCPA問題等、フタバ産業さんではいろいろとコンプライアンス上の問題が重なりましたので、社会的な信用を維持するためにも、会社自身が(和解もせず)経営トップの責任追及を果たした意義は大きいものと考えます。

このフタバ産業さんの件だけでなく、最近は会社自身が(つまり新経営陣や監査役が会社を代表して)経営者の責任を追及して勝訴判決を得るケースも出てきています。特筆すべきは会社が訴える場合における会社の「損害」に関する捉え方(何をもって会社の損害とみるか)です。たとえば先日、会社側が一部勝訴したクラウドゲート社事件判決では、会計不正事件が発覚した際の社内・社外調査費用、追加監査報酬、課徴金、有価証券報告書訂正費用等が損害として認定された模様です(「模様です」と書いたのは、これも会社側リリースからの推測であり、判決文まで確認したわけではないことからでして、あしからず)。また、こちらは株主代表訴訟ですが、シャルレのMBO頓挫事件の大阪高裁判決(2015年10月29日)においても、元経営者らのMBO遂行時における公正性を疑わせる手続き的瑕疵を問題にして、たとえ株主に対する損害が明確でないとしても、不正の疑義を解明するために設置された第三者委員会の費用等が会社の損害であると認定をしていました。

監査役さんによる提訴理由の判断権は、株主代表訴訟制度の見直しとの関係で、次の会社法改正における検討項目にもなっているようです。ただ、会社側勝訴の裁判例が重なり、何をもって会社の損害とみるか、という点が明確になってきますと、そもそも(経営陣に遠慮をして)監査役さんが提訴をしない理由の合理性が厳しく問われる事態となり、逆に監査役さんの善管注意義務違反が追及される可能性が出てきます。コンプライアンス経営の一環としての「自浄作用」の発揮という点は、それ自体は法的責任の枠外の議論ですが、その発揮された事例が裁判例として積み重なることにより、とりわけ監査役さんの善管注意義務の根拠(とくに不作為の違法性を高める根拠)になりつつあるように感じます。

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