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減るか投資詐欺。金融商品取引法改正についてあなたが知っておくべきこと - 松澤 登

■要旨

悪質な投資ファンドによる消費者、特に高齢者の被害が多発している。投資ファンドの中には運用規制や販売規制などのルールが緩やかな、いわゆるプロ向けファンドと呼ばれる商品を悪用したものがある。これを踏まえ、平成26年の国会でプロ向けファンドの悪用防止のための法改正がなされ、この6月までに施行される。
この法改正によりプロ向けファンドへ投資することが出来る投資家が限定されるなど規制強化がされ、一般の高齢者をターゲットとするような販売手法は禁止される。本稿ではその改正のポイントとその効果について検討する。

■目次

1――プロ向けファンド問題は消費者問題
  1|はじめに
  2|プロ向けファンドとその規制
  3|プロ向けファンドで消費者被害が発生するのは
2――消費者被害の防止のための金商法改正
  1|改正金商法の概要
  2|私法上の効果
3――おわりに~悪質ファンド商法は減少するか

1――プロ向けファンド問題は消費者問題

1はじめに
悪質な投資ファンド販売の被害が絶えない。○○社債、○○ファンドといった名称の投資商品が投資経験の乏しい高齢者などをターゲットに販売され、結果的に出資金がほとんど返ってこないような事例が多発している。最近も診療報酬債権を裏づけ資産とする債券が十分な資産を保有しないまま販売され、問題となった。また、プロ向けファンドと呼ばれる特殊な商品の被害も報道されている。
ところで投資商品(金融商品)は金融商品取引法(金商法)で横断的に規制されている。一言で言えば、他の法律で規制されているものなど一部の例外を除き、投資家がお金を出して運用し、配当などリターンを返す仕組みのものはすべて金商法で規制される。そして、横断的に規制しているがゆえに、規制内容が商品種類や販売方法によって異なるという、いわゆる柔構造となっている。このことは投資ファンドによる被害の発生については金商法がどうなっているかが大きく関係してくることがあるということである。

2プロ向けファンドとその規制
本稿で取り上げるプロ向けファンド(正式には適格機関投資家等特例業務)とは何か。詳細は省くが、匿名組合や投資事業組合といった一般にはあまり聞きなれない仕組みを使ってファンドを作り、不動産やベンチャービジネスに投資を行うもののうち、一定の条件を満たすものである。これも金商法の適用対象である。

このようなプロ向けファンドはもともと適格機関投資家が不動産の現物を持ったり、ベンチャーに直接投融資したりするのではなく、ファンドを作って投資を行うためのものである。ファンドを作るのは会計上の必要性やリスク管理などの理由から行なわれている。
通常、金商法ではファンドの運用や販売は厳格な規制が適用される。登録された金融商品取引業者により、資産分別管理義務や、投資家への書面交付や適合性原則などの行為規制の下で行なうこととされている。しかしプロ向けファンドは、特例として、金融商品取引業者でなくとも、運用も販売も金融庁に届出だけをしておけば誰でも行なえることとなっている。また、運用や販売時にかかる規制も緩やかである(下記表参照)。

3プロ向けファンドで消費者被害が発生するのは
上述のプロ向けファンドとなるための一定の条件は単純である。具体的には、先ほど述べた仕組みの投資ファンドを作り、適格機関投資家が最低一社でも投資をすることである。このような仕組みにすれば、残り49名までは一般の個人でも出資できることとされている。

なぜ、個人にも販売することが出来るのか。それは機関投資家が自己運用のためのファンドを作る際に関係者を投資家に加えることが行なわれるからである。そしてイノベーションを阻害しないように、投資のプロである適格機関投資家や関係者に不要な負荷をかけないようにすることが目的であった。

しかし、悪質業者は本来の趣旨とは異なった販売を行なってきた。形ばかりの適格機関投資家を設けて投資させ、関係者ではなく、高齢者1を中心とした一般人を対象に電話勧誘を行っている。金融庁への届出は、届出をした正規の業者と標榜できるメリットまである。そして実際には49名という枠も守られず、運用もろくに行なわれず、消費者(投資家)被害が発生してきた2
このような消費者被害の発生に鑑みて平成26年の国会で金商法が改正され、この6月までに施行されることとなった。

1 国民生活センターの資料(平成25年12月19日報道発表資料)によれば、契約者の9割弱が60歳以上で70歳代が4割を占めるとのことである。
2 プロ向けファンドに関する最近の状況は証券取引等監視委員会の報道発表資料等のHP等を参照。


2――消費者被害の防止のための金商法改正

1改正金商法の概要
今回、変更の改正内容の概要は下記表の通りである(筆者作成)。 リンク先を見る

この中での重要なポイントは適格機関投資家以外で出資できる人の属性を限定したところであろう。これに反するものは、プロ向けファンドの特例は受けられず、一般の金融商品販売事業者の登録を受けないと販売することは出来ない。つまり一般の人へのプロ向けファンドへの販売は禁止されたのである。

2私法上の効果
ひとつの検討課題は、私法上の効果である。仮に今後プロ向けファンドを、販売を認められない人に販売した場合に私法上どう取り扱われるか。これに触れた文献は見当たらなかったが、少なくとも金商法違反であり、私法上も不法行為あるいは債務不履行による損害賠償の対象になることについては異論がないところと考える。

さらに直接的に契約自体が無効になるかどうかである。金商法には無登録業者が未公開株式等を販売した場合に無効となるとする条文がある (金商法第171条の2)。このような規定がない中では、一般論としては、監督法である金商法の当条文を根拠に直接的に無効とするところまで踏み込むのは難しいように思われる。ただ、ファンド自体や販売方法が悪質性の高いものであるならば、一般条項に戻り、公序良俗違反による無効や詐欺による取消が可能とはなるケースも多いのではないかと考える。

3――おわりに~悪質ファンド商法は減少するか

上記の通り、この形態をとる悪質ファンド商法は少なくともやりにくくなるとは言えよう。しかし、上述の通り、診療報酬債権を裏づけ資産とする債券が、金融商品取引業者である証券会社を通じて販売されていたように、特例が使いにくくなるだけで投資ファンド被害がなくなるわけではない。そもそも悪質業者は現行法の特例の条件すら守っていなかったということもある。

大事なのは消費者サイドの自衛である。振り込め詐欺への対応のように行政や関係機関が継続的な啓蒙活動を行なう必要もあるが、特に高齢者の居るような家庭ではうまい話には乗らないといったことをよく話し合っておくことが重要と思われる。

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