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【読書感想】残念なメダリスト - チャンピオンに学ぶ人生勝利学・失敗学

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リンク先を見る 残念なメダリスト - チャンピオンに学ぶ人生勝利学・失敗学 (中公新書ラクレ 539)

Kindle版もあります。

リンク先を見る 残念なメダリスト チャンピオンに学ぶ人生勝利学・失敗学 (中公新書ラクレ)

内容(「BOOK」データベースより)

真央、なでしこ、錦織ら現役スターから、柔道の嘉納治五郎・山下・篠原、「東洋の魔女」らのレジェンドまで、本物のチャンピオンの資格を問う。メダリストになっていい人、悪い人とは?JOC理事として東京五輪に注力し、柔道界の改革にも邁進する「女三四郎」からの問題提起。


 柔道女子の世界選手権王者で、ソウルオリンピックでは銅メダリストを獲得した山口香さんが「アスリートの『その後の人生』を論じたものです。

 このタイトルや「内容紹介」を読むと、「オリンピックでメダルを取った残念な人」の具体名をあげて、徹底的に批判しているのかな、と、ちょっとワクワクしながら読み始めたのですが、「立派な人」の名前はあがっていても、「残念なメダリスト」については、具体的な個人批判はありませんでした。

 それは、こういう新書では難しいのかもしれないけれども、正直、「釣りタイトルっぽいな」と感じたのは事実です。

 アスリートのセカンドキャリアとか、メダルを獲ったあとの人生設計の難しさとか、メダリストになってみたいとわからない現実が書かれているんですけどね。

 興味深くはあるけれど、僕がメダリストになるとは思えないので、あまり親近感が湧いてこないのですよね。

 

 「残念なメダリスト」といえば、柔道界には、内柴正人さんというレジェンド級の「残念メダリスト」がいるのだから、「なぜあんなことが起こってしまうのか?」についての考えを聞きたかったのですが。


 この新書では、「世界で戦ってきたアスリートの視線」が活かされています。

「日本人らしさ」に世界標準がミックスされれば、「鬼に金棒」だろう。

 たとえば、テニスの錦織圭選手の会見を見ていると気付くことがある。

 最初にまず、結論を述べている。

 続けて、「なぜならば」「こうだったので」という説明が来る。

 日本語では普通、こうした話し方にはならないはずだ。そこに至った説明が長く、結論は最後に来る。日本語の特徴とも言える。

 日本人にとっては普通でも、世界のプレスを前にそうした話し方をすると、「いったい何を言いたいんだ」と伝わらない場合も出てくる。

 錦織選手は英語でものを考え、発言することで語り口が自然と簡潔で伝わりやすくなっている。ダラダラと負けた要因を述べることなく、相手を賞賛し、自分の敗因を簡潔に分析し、次に向かう決意を述べる。

 日本人が見れば錦織選手の端的に結論を伝えるコメント力は秀逸だが、世界では特別なものではなく極めて標準的である。


 どうも日本人アスリートや日本のメディア、そしてスポーツを見る人たちも「日本の常識・伝統」を信用しすぎているのではないか、と思うのです。

 そのなかには、「悪しき伝統」もたくさんあるのに。

 体罰による「シゴキ」などはまさにそのひとつで、山口さんは「日本代表に選ばれる選手には、暴力を振るわれないと努力しない、などという人はひとりもいない」と仰っています。

 そんなの考えてみれば当たり前のことなのに、「シゴキ」は先輩から後輩に受け継がれ、自分の順番が終わったら、「オレの時代は、練習のあとに血の小便が出た」なんて「しごかれ自慢」をする人が、また同じことを後輩にしてしまう。

 2013年1月に、15名の柔道の女子選手が日本代表監督やコーチからの暴力行為を告発し、社会問題となりました。

 このとき、女性選手たちを積極的に支援したのが山口香さんだったんですよね。

 この新書を読み、山口さんのアスリートとして、女性としての姿勢を知ると、「だから、山口さんだったのか」と腑に落ちます。


 日本よりもむしろ、理念を大切にしているのがフランスの柔道だ。

「生き方を学ぶ」という姿勢が強調されているように見える。

 たとえば友情、リスペクトといった柱を立てて、「柔道から学べることは人間としての基本だ」と明確に子どもたちに教えている。「あなたを強くします」とは、一言も謳わない。

 フランスの柔道は、「選手」を育てるのではなく、「人」を育てることをめざしているのだ。柔道を習う場が、社会性を持った子どもに育てあげていく基本的なしつけの場となっている。だから、学び終えたらどうぞやめていただいて結構です、というドライな距離感がある。

 何が何でも強い選手に育てる、といった指導の仕方はしない。

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