- 2016年04月15日 07:02
【ほら吹きと核爆弾】
オバマ大統領が伊勢志摩サミットにあわせて広島を訪問するかどうかがニュースとなっていますね。
画像を見る(NY Times: From Hiroshima to a Nuke-Free World)
4/13のNY Times社説は「ケリー国務長官が広島を訪問したことで、オバマ大統領が来月のサミットで訪日する際に寄らない理由はない」と広島訪問を促しています。さたに大統領による核の非拡散政策の推進を訴えています(promote his antinuclear legacy)。
一方、今週のThe EconomistのコラムBanyanは核の拡散ついて。Of blowhards and bombs(ほら吹きと爆弾について)というタイトルです。
サブタイトルはDonald Trump and Kim Jong Un seem to want to make nuclear proliferation more likely (ドナルド・トランプと金正恩は核拡散を容易にしたがっているようだ)。
2人の共通点をきっかけにアジアの核保有の可能性について書いています。ざっくりこんな感じです(全文の翻訳ではありません)。
ドナルド・トランプ氏と金正恩氏は道徳的には似ていない。こどもたちを強制労働収容所に送ったりしない。
しかし、大言壮語の大物実業家 (bombastic tycoon)と好戦的な暴君(bellicose tyrant)には共通点がいくつかある。
▼大げさな自画自賛 (self-adulation) 、▼現実に対するユニークな見方 (original take on reality) 、▼国を高い壁で囲いたくなる気質 (a preference for high walls around their countries) など。そしてそれぞれに、北東アジアの核拡散についての議論を巻き起こしたことだ。
北朝鮮が10年前に核実験を行った際に、周囲が追随するという危惧が広がった。韓国、日本、台湾はみな技術的に熟練していて、脅威に感じる理由が十分にある。しかし、その後どこも核武装していない。
おそらくこれからも抑制を続けるだろう。金正恩が自称水素爆弾の実験を行い、トランプがアメリカ軍の負担を軽減するために日本と韓国に核兵器を製造するよう提案しても、である。
"Asia’s Latent Nuclear Powers"を執筆したIISSのMark Fitzpatrick によると3つのうち、核兵器を取得する確率が高いのは韓国である。もちろん、確率はそれほど高くないのだが。世論調査によると、韓国の国民の3分の2近くが核保有を望んでいる。同調する政治家もいる。
北朝鮮を20年以上にわたって言葉で威嚇し、カネの力を使い、なだめすかしてきたが、成果はない(More than two decades of browbeating, bribing and cajoling North Korea have been fruitless)。
韓国の核保有賛成派は、インドとパキスタンが1998年以来、核保有国と見なされながら戦争にいたったり、国際的に排除されたり(international pariahs)していないことを指摘する。
とは言え、韓国が核を保有するデメリットはメリットを大きく上回る。今のアメリカは強く反対しており、韓国が安全保障を依存する米韓同盟を危機に陥れる。経済制裁の対象にもなりかねない。
韓国が核保有すれば、日本も続くかもしれない。韓国は18か月程度で核搭載の爆弾を作れると専門家が見ているが、その兆候が伝われば、北朝鮮が武器で反応するかもしれない。核保有は、現実の政策ではなく、アメリカに「核の傘(nuclear umbrella)」を再確認させることを促し、中国が北朝鮮に対して本格的な圧力を加えるために、保有自体に意味があるという人もいる。
韓国には、日本と比べて我慢を強いられているという思いがある。
日本はNPT=核不拡散条約体制の185か国の非核兵器国の中で、唯一、核燃料サイクル技術を持つ国である。これには、ウラン濃縮とプルトニウム再利用が含まれている。
このため、Fitzpatrickは、核爆弾1個を作るのに必要な時間=breakout timeは、日本が最短だと見ている。それでも、西側関係者が主張する6か月よりももっとかかるだろう。
日本には、核武装を主張するタカ派もいる。内閣は4月1日に閣議決定した答弁書の中で、これ(自衛のための必要最小限度の実力保持)は、憲法違反にあたらないという見解を再度示した。
こうした動きや安倍首相が日本の自衛隊にかけられた抑制を緩和するのではないかという不信感を背景に、韓国や中国には、日本が近く非核の原則を撤廃するのではないかという脅威がある。
そうはならない。韓国同様、日本にもデメリットが大きすぎる。有権者がこれに強く反対するのは、韓国と異なる点だ。ヒロシマとナガサキを経験した日本は、決して核保有国になりたいわけではない。
4月1日にワシントンで開かれた第4回核セキュリティサミットで、日本はアメリカの最大の同盟国として称賛された。日本のbreakout timeがあまりに短いこともあり、日本は核武装のドミノ現象の最初の一撃とはならない(Japan would not be the first nuclear domino) 。
台湾も同様だろう。中国が国土の"再統一"に向けて武器の使用を主張しているため、より明確な脅威にさらされているが。中国の武力の強化は、台湾が伝統的な武器で自衛できるのか疑問もわく。
さらに、日本と韓国と違い、防衛にはせ参じるアメリカと同盟関係にあるわけではない。それでも、台湾の蔡英文次期総裁が核保有を進めるとは考えにくい。自殺行為だ。
韓国、日本、台湾が"潜在的(latent)"な核保有国だというのは、いずれも必要な技術開発を進めたものの、放棄したからだ。日本は岸信介首相、韓国は朴正煕大統領、台湾は荘経国総統のころだ。
当時、核が必要だとされた要素は、現代の教訓ともなる。1969年、アメリカのニクソン大統領は、同盟国の防衛をそれぞれに移管する政策をグアムで発表した。1976年、大統領を目指していたカーターは、韓国からアメリカ軍を撤退すると公約した。 1979年にアメリカが台北ではなく北京と外交関係を樹立したことで、台湾などに警戒感をもたらした。
日本、韓国、台湾は、その後アメリカが防衛してくれるという確約を取り付けたことで核の生かじり (nuclear dabbling) を断念した。
11月のアメリカ大統領選挙の結果は分からないが、トランプは、外国人にくたばれ (telling foreigners to get stuffed) ということで、有権者の票を獲得できることを示したことで、そうしたアメリカに対する信頼を台無しにした。
その結果、中国は地理的にアジアにいる(it is in Asia by geography)一方で、アメリカは選択でアジアにいる(America is there by choice) に過ぎず、いつか撤退するかもしれないという中国の議論に拍車がかかる。
さらに、アメリカの同盟国に抑止のために核保有するべきだという機運を促すことになる。
やはりお金持ちのパパがいてプレイボーイの金正恩同様に、トランプはアジアをより危険にしている(Like Mr Kim, his fellow playboy-with-a-rich-dad, Mr Trump makes Asia more dangerous)



