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コメント力も抜群 金本阪神がやることは侮れない - 赤坂英一 (スポーツライター)

阪神・金本知憲監督がやっているのは広島野球だ。それもカープが最も強かったころの〝赤ヘル機動力野球〟である。現に、広島の石井琢朗打撃コーチも開幕前からこう言っていた。「監督の金本さん、ヘッドコーチ(兼三塁コーチ)の高代(延博)さんは、ぼくが横浜(現DeNA)の選手として戦っていた時代、カープを引っ張っていた人たち。今年の阪神は広島野球をやってきますよ」と。

 1番にパワーとスピードを兼ね備えたドラフト1位新人・高山俊(明大)を抜擢、2番に3年目の横田慎太郎や2年目の江越大賀を据えた上位打線からして、野村謙二郎と緒方孝市・現広島監督が1・2番コンビを組んでいた1990年代後半のカープにそっくりである。当時の広島監督は、金本監督が野球の師と仰いでいた三村敏之。

自分もヒットで生きて無死一・三塁に

 2009年に三村が61歳で亡くなったとき、金本は喪主の三村夫人から直々の指名を受け、告別式で弔辞を読んだほどの師弟関係にあった。その三村は広島監督時代、1・2番の人選についてこのように自分の起用法を語ったことがある。

 「1番がヒットか四球で塁に出たら、バントで送って1死二塁にするんじゃなく、自分もヒットで生きて無死一・三塁にできる。そういう選手を選びたかった。私たちの現役時代は、そういう野球をやってましたからね」

 広島が球団創設25年目で初優勝を果たした1975年、三村は2番・遊撃のレギュラーだった。1番・二塁はこの年、44盗塁で盗塁王のタイトルを獲得した大下剛史である。

 「当時は、大下さんが出塁すると、まず二塁への盗塁をアシストするのが私の仕事です。打席で粘って投手に球数を投げさせたり、空振りして捕手の二塁送球を邪魔したり。そうやって大下さんが首尾よく二塁へ進んだら、今度は私がヒットを打って大下さんを本塁へ帰すか、最悪でも一、三塁のチャンスをつくらなきゃいかん。それができないでベンチに帰ってくると、おまえは何やっとるんだと、チームメートに白い目で見られるんです」

そう語った三村監督は90年代、野村、緒方に自分が現役だったころの〝赤ヘル野球〟の再現を求めた。だからか、野村や緒方、前田智徳や江藤智(現巨人打撃コーチ)、それに現阪神監督の金本も、和気あいあいと励まし合うような間柄では決してなく、いつもピリピリした緊張感を漂わせていたものだ。

 そんな三村監督時代の広島で、三塁コーチを務めていたのが高代延博である。この高代コーチについては、当時ヤクルト監督として戦った野村克也がこんなことを言っていた。

 「走者が出て、打席に金本が入ったら、まず三塁コーチの高代を見るわな。こんときが、すごい不気味なんや。何をやってくるかわからん。(旧)広島市民球場の試合になると、(捕手の)古田(敦也)が投手にどんなに裏をかいて、どんな意表を突いた球を投げさしてもカツーン! といかれてしまう。アレはサイン盗みでもやっとるんやないかな」

コメント力でも群を抜いている

 かつての金本、高代コンビは、名将・ノムさんをして、ここまで警戒させていたのだ。だから、今年の阪神がやることは侮れない。

 戦略に長けた金本監督は、コメント力でも群を抜いている。ダブルスチールなどが成功すると、「選手みんなが積極的に走ろういう意識を持ってくれとるよね。(投手の)藤浪(晋太郎)にも塁に出たら、こういうスライディングをしよう、いう話をしとる」とニコニコ。審判のジャッジが遅れると、「問題外じゃ! あんなに打球の判定が遅かったら、ランナーはどうすればええかわからんやろ」とプンプン。こんな開けっ広げなキャラも、チームに勢いをつけている要因だろう。

 今季の阪神に待ったをかけられるチームがあるとしたら、緒方カープ以外にあるまい。先週末、甲子園での今季初対決では2勝1敗でカープが勝ち越した。しかも3戦目は一挙5得点の猛攻で逆転勝ち。次回は金本阪神がどうやり返すか、いまから楽しみである。

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