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第357回(2016年4月12日)

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「パナマ文書」はICIJ(国際調査報道ジャーナリスト連合)に提供され、80か国107社の報道機関に所属する約400名のジャーナリストが内容を分析。4月3日、その分析結果の一部が公表されました。

現役の首相等14人、首脳経験者12人を含む46か国140人の政治家・公職者、その家族、著名人等の名前が明らかになり、物議を醸しています。

激震の皮切りはアイスランドのグンロイグソン首相。同首相は英領バージン諸島のペーパーカンパニーを購入し、同社を介して自国の3銀行に投資。リーマン・ショックの影響で当該3行が破綻したものの、同首相は投資事実を伏せたまま銀行の債務処理に関与。そのことが発覚し、国民の批判を受けて4月7日にあえなく辞任。

英国のキャメロン首相も亡父がパナマに設立した会社に妻とともに投資していたことが発覚。首相就任直前に同社株を売却していたものの、批判が高まっています。

中国の習近平国家主席、共産党序列5位の劉雲山政治局常務委員、序列7位の張高麗副首相の親族も英領バージン諸島の企業の株主や役員になっていたことが発覚。

中国政府は批判の高まりを警戒し、言論統制を強化。インターネット関連記事へのアクセスを制限。「パナマ文書」関係の報道は削除され、検索エンジンにヒットしない状況です。反腐敗を掲げ、汚職摘発を進めてきた習政権は批判封じ込めに躍起です。

ロシアのプーチン大統領の盟友がタックス・ヘイブンで約20億ドルの資金を運用していたことが判明。複雑な資金授受の仕組みにはプーチン大統領と関係が深い「ロシア銀行」が関与。英大手紙やICIJは「プーチン大統領が無関係とは思えない。タックス・ヘイブンはまるで大統領の個人口座のようだ」と指摘。

ロシア政府は「パナマ文書」流出事件を「西側の陰謀」と断じ、プーチン大統領が「陰謀の標的」になっていると抗弁しています。

北朝鮮は英国人を介して英領バージン諸島に企業を設立。同社は武器業者と取引していたほか、核兵器開発にも関与していたことが判明。

アルゼンチン検察当局は大統領の捜査を開始、メキシコ税務当局は「パナマ文書」に登場した国内33人の調査を開始、震源地パナマでは大統領が独立委員会による調査を開始。EU(欧州連合)はタックス・ヘイブンのブラックリストを作成し、不正に対して厳罰を科す制度創設を目指すことになりました。

タックス・ヘイブンで資産運用することは、合法・適法であれば問題ないという主張もあります。しかし、タックス・ヘイブンを通した資金の動きが巨額かつ不透明であり、顧客情報の秘匿を理由にほとんどブラックボックスであることが問題視されています。

ICIJは「ガラス張りにすることが重要。政治家や富裕層がなぜタックス・ヘイブンを利用するのか。設立企業がなぜ多額の資産を持っているのか。納税者や有権者が知りたいと思うのは当然だ」と指摘しています。

注目は日本。「パナマ文書」に登場する日本人や日本企業は約400。現状、政治家等の公職者は含まれていませんが、大手警備会社創業者一族が700億円超の株式をタックス・ヘイブンに移転していたこと等も確認されています。

「パナマ文書」は世界的大スキャンダルですが、不思議なことに日本では意外に報道が控えめ。しかも、4月6日の記者会見で官房長官は「詳細は承知してない。日本政府としては調査しない」旨を早々と明言。

「パナマ文書」に登場する企業名の中には大手広告代理店も登場します。政府のみならず、スポンサーや広告代理店に弱い日本のマスコミ体質が気になります。マスコミには是々非々で社会的不公正と戦ってもらいたいものです。

有価証券報告書によれば、東証上場企業の時価総額上位50社のうち45社がタックス・ヘイブンに子会社を設立。その数354社、資本金総額8.7兆円。多くの大企業がタックス・ヘイブンを利用して「租税回避行動」を行っている可能性があります。

とは言え、有価証券報告書で情報開示し、合法・適法に行っていれば、犯罪ではなく道義上の問題かつ今後の政策課。しかし、情報開示せず、違法に課税逃れしている事例もあるでしょう。こうした不正は洗い出す必要があります。

タックス・ヘイブン活用による企業の脱法的節税は2013年にも話題になりました。当時、日本の企業・富裕層がケイマン諸島だけで55兆円(世界2位の規模)の租税回避を行っていることが判明。

租税回避による逸失税収の穴埋めはその他の企業や国民に課される構図を鑑みると、看過できません。課税の公平性を損ねており、事態の改善が急務です。

なお、「パナマ文書」には米国企業・米国人はあまり登場していません。その理由は、米国そのものがタックス・ヘイブン的であることが影響しているかもしれません。

米国では、海外子会社の国外収益は国内送金されない限り課税免除。また、出資者1名のLLC(有限責任会社)について、当該出資者が非居住者である場合の国外収益は課税免除。こうした制度が事実上タックス・ヘイブン的に機能しているのかもしれません。

ICIJは「世界各国で記者が分析を続けており、今後数か月にわたって「パナマ文書」に関する報道が続く」と言及。5月には分析結果がさらに公表されるそうです。

13日、OECDも各国税務当局による緊急会合をパリで開催。「パナマ文書」問題を踏まえ、対策を協議する模様です。

現時点で課税逃れ防止策として有力視されているのは、大企業・富裕層の海外銀行口座情報等を各国税務当局が相互提供するネットワークの拡大。日本を含む約100か国・地域が参加し、2017年導入を目指します。

来月の「伊勢志摩サミット」でも議論してほしいと思いますが、及び腰の日本政府。さて、どう対応するでしょうか。

(了)

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