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iPhoneのシャッター音問題

日本社会の、人に迷惑をかけない、同化する、という圧力は、行きつくところまで来ている気がする。それにしても不思議なのが、iPhoneのシャッター音問題である。これほど、日本的な感性のおかしさを示していることはないと思う。

周知のように、日本で売られているiPhoneは、シャッター音が消せない。一方、海外で売られているiPhoneは、シャッター音を消せる。なぜこのような違いがあるかと言えば、「盗撮」を防ぐ、という理屈らしい。

この議論は、日本において常に見られるパターンである、盗撮をするという、一部の不届きなものがいる。そのような人たちの行為を防止するために、全員が、シャッター音が出る、という仕様を我慢すべきである、という理屈である。意味がわからない。

盗撮をする輩はけしからんが、そのようなやつは、エネルギーを注いで、たとえばシャッター音が消せるアプリを手に入れたりして、なんとかして実行する。つまり、シャッター音がデフォルトで出ることは、そういう人に対する抑止力の決め手になっていない。

そして、ここからが重要な問題なのだが、シャッター音が盗撮の抑止力になる、という議論をする人たちは、たいていの場合、シャッター音がなること自体が、周囲の人のプライバシーの侵害になるという事実に、気づいていないのである。

たとえば、電車の中でキンドルで本を読んでいて、頁をキャプチャしたいとする。当然、シャッター音がなる。その時、周囲の人たちの、静穏な環境というプライバシーが侵害される。そのことは、問題ではない、と感じているらしい。どこかおかしい。

以前から中島義道さんが言われていることだが、日本社会は、静穏な環境というプライバシーが破壊されることに対して、寛容、というか、鈍感である。だから平気で妙なBGMをかけ、やたらと放送する。あげくの果ては、動く歩道が、「おきをつけください」と延々としゃべっている。

iPhoneのシャッター音が強制的になることが、環境や文脈によっては、周囲の人の静穏な環境というプライバシーの侵害になることを気にしないというのは、異常なことだと思う。そのくせ、近くに保育園ができるとうるさいと騒ぐわけのわからない人たちもいるのである。

ぼくは、日本で売られるiPhoneのシャッター音は消せるようにすることが当然だと考えている。Apple Japanには、ぜひ検討いただきたい。そうでなくても、海外のSIMフリー版をわざわざ手に入れる人たちはたくさんいるのだから。

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