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「舛添東京都知事が3分でできる、効果的な待機児童対策」の課題について

 先日、駒崎弘樹さんがこんな記事を寄せていました。

 外出前なので簡単に触れたいと思います。

舛添東京都知事が3分でできる、効果的な待機児童対策はこれだ!

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 タイトルがキャッチーすぎて、駒崎さんの問題意識がちゃんと伝わらなかったのか、この問題に詳しくない人からは賞賛される一方、専門家からは「また駒崎か」的な酷評も出てしまっておるようです。話の根幹のところでは議論が必要な部分だけに、センセーショナルに捉えられすぎて、あたかも本件が悪法であるかのように伝わるのは残念なことです。

 私個人からすると、どちらかというと駒崎さんの仰ることに賛成です。ただし、現在の制度の趣旨からすると東京都のしたいことも理解できます。

 駒崎さんは東京都の「バリアフリー条例」が問題だとされていますが、その条例が敷かれた背景と、この後の流れについての説明が一切ありません。説明を加えるならば、東京都の建築物バリアフリー条例は、バリアフリー法だけでなく、先に施行された障害者差別解消法での議論内容を先取りして実施された先進事例のひとつです。

 それが新規で承認されるべき保育園の認可の問題の足枷になっているのは、駒崎さんの論のとおりです。

 ただし、なぜそこでバリアフリーが必要なのか、万能トイレを求めるのかというと、その「認可させるべき保育園そのもの」に求められるものが違うからです。確かに待機児童が多いことに対して解消されるべきという優先順位や、例外規定の柔軟さなども問題になりえるわけですけれども、そもそも公的に認可される保育園は、たとえば障害を抱えた児童も差別なく受け入れなければなりません。そこで、バリアフリー条例の求める最低限の施設が保育園になければ「当園は、障害児童を受け入れる条件が整っていないので、入園要望があっても受け入れられません」という話になってしまいます。

 実質的には、これらの障害児が一般の保育園で健常児童に混ざって保育されるというのはあんまり考えづらく、普通は専用の施設を希望される家庭が多いのではないかとは思います。ただ、希望があったとき、「施設の不備を理由に入園を断るというのは、法の精神から反する」と言われればそうなのかなと感じるわけです。

 法律の定めるところ、国公立の教育機関などの公的機関は義務であり、それに準ずる施設はほぼ実施しなければなりませんので、公的な助成が入って経営を成り立たせている認可保育園がこれらの建築物バリアフリー条例を義務として制限を受けるのは当たり前のことだ、と言われればその通りなのでしょう。入園児童を恣意的に選びたいなら、公的助成を受けずに未認可でやれよ、と。

 これを、保育業界ど真ん中にいる駒崎さんが「バリアフリー条項をやめれば待機児童対策になるだろ」と主張したところで、詳しい人からは「じゃあ認可受けないでやれば」とか「自分のことだけ考えてキャッチーな暴論言って掻き回しているだけじゃないの」などという批判もでるわけです。

 一方で、彼の記事にもあるとおり、待機児童対策のために小規模認可保育所というカテゴリーが新設され、設備的に行き届かないけど少人数の託児には充分というサテライトをたくさん作ることで待機児童問題を解決しようという駒崎さんの議論にも大きな一理を感じます。機動的に小規模施設を充実させる施策が、より大所高所からの障害者対策の規制で妨害されていたら、それは元も子もないよなとは思うわけであります。

 なお、駒崎さんがバリアフリー条例を国のバリアフリー法と絡めて論じてますが、認可保育園においては営業面積に関わらず事前協議で例外として規制除外を求めることができます。事前に、行政とコミュニケーションをとって対応していれば、そう問題になるような話でもないと思うんですよね。バリアフリー法があるので東京都のバリアフリー条例が敷かれているだけではなく、もしも都にそう言われて開園を邪魔されているのだとしたら、何か別の理由で嫌がられているとかそういうことがあるかもしれません。

 確かに悪法やとんでもないお役所仕事で起きる弊害もあるんだけれども、その法律ができた趣旨や背景にも心を配ることができれば、もう少し具体的な着地点も見えてくるだろうになあ、と地味に思った次第でございます。 

 短文で指摘するはずが、思わず力が入ってしまい遅刻してしまいました。関係者の皆さま、申し訳ございません。

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