- 2016年04月11日 09:00
経営大学院、学費無料にするとどうなるか
米アリゾナ州立大学W.P.キャリー経営大学院には、世界中から多くの注目が集まった。今年の秋から2年間の経営修士号(MBA)取得コースの学費を無料にすると発表したからだ。志願者数は同校の予想をはるかに超えた。
同校がフルタイムのMBAコースの学費(同州の学生が5万4000ドル=約600万円、海外の学生が9万ドル)をゼロにすると発表したのは昨年10月だった。それ以降、同校には志願者が殺到し、それまでの記録が更新された。また、事務局はひっきりなしにかかってくる電話や電子メールの問い合わせに対応する人員確保を余儀なくされた。
このフルタイムのMBAコースには、4月4日時点で1165通の出願があった。これは、昨年度の全出願数の3倍近くに上る。学校関係者によると、電話や電子メールの数はこれをはるかに上回り、学校を驚かせた。
同経営大学院のエイミー・ヒルマン学長によると、同校は非伝統的な志願者、つまり同校の従来の志願者たちとは違ったバックグラウンドを持つ人々を呼び込もうとした。費用の関係で、経営大学院に行くことなど考えもしなかったような人々だ。この授与奨学金の原資は、不動産王で慈善家のウィリアム・キャリー氏から2003年に受け取った5000万ドルの寄付だ。
ヒルマン学長は「奨学金への需要がこれほどに大きいことを理解していなかった」と話した。
学費の専門家によると、今回の同校の経験は、ときに厳しいビジネスの真実を浮き彫りにすると話す。何かを無償で提供するとなると、余計な作業が増えるという真実だ。同校のMBAコースの定員は限られているため、志願者をより厳しく選抜しなければならない。そうなると、入学事務局にはより多くのマンパワーが必要になる、とノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院のサンディープ・バライガ教授は指摘する。
ヒルマン学長によると、入学事務局は発表後、「総動員」での対応を迫られたという。同校は学内の他の部署のスタッフや学生アンバサダーをかき集め、電話や電子メールの対応にあたらせた。遠くはウズベキスタン、ボリビアやウガンダのなどからも問い合わせがあった。
事務局の担当者が最も多く聞かれる質問の1つは、MBAコースが本当に無料なのかという質問だ。事務局のMBAコース担当責任者であるケイ・ケック氏によると、それを疑問に思う人もいるため、詳細を説明して、このコースが冗談でないことを理解してもらっているという。
ヒルマン学長は、現段階で、非伝統的な志願者を引き寄せるという目的は達成しつつあると話している。学校関係者によると、入学者の半数は決まった。同校は次年度のMBAコースの定員を最大120人としている。
ケック氏は最近、有望な志願者の面接をした。それは既婚で4人の子持ちのアリゾナ州の起業家だった。彼は経営大学院入学希望者向け適性テストのGMATを受けたばかりで、独学で学んだビジネススキルを正式な教育で補いたいと思っている。ケック氏によると、彼は奨学金があれば経営大学院入学の検討が可能になると述べたという。
一方で、同校は希望者を退けることにもかなりの時間を費やしている。スタッフは何時間もかけて電話や電子メールに対応してその人を精査し、見込みのない人の出願を思いとどまらせようとしている。ヒルマン学長は、これが「問い合わせ対応の悲しい側面」だと述べる。事務局のスタッフによると、問い合わせをしてくる人の中には、経営大学院の入学試験を受けたことがない人や、フルタイムのコースに入学するために仕事を辞めなくてはならないことを知らない人もいる。
MBAコースに出願するためには通常、GMATなどの標準化された試験を受けるほか、大学の成績証明書、エッセーおよび推薦状を提出する必要もある。
By LINDSAY GELLMAN
- ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)
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