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奨学金問題と併せて考えたい、もう一つの大学進学形態 - 川崎隆夫 (経営コンサルタント)

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自民党と公明党は、経済的な理由で子どもの教育に格差が生じないよう、返済が不要な「給付型奨学金」の創設を求める提言を、安倍首相に提出しました。提言では、経済的に困窮している家庭から大学などに進学する道を閉ざさないことや、教育支出により卒業後に多額の借金を背負わないようにするために、「給付型奨学金」の創設を求めています。併せて、無利子の奨学金についても、対象・支給額を広げるという方向で、検討が進んでいます。
返済義務を負わない「給付型奨学金」の創設など奨学金制度全般の改革については、是非推進していただきたい施策ですが、一方で財源は限られているわけですから、別の施策についても併せて検討を進める必要があるだろうと思います。

■大学の通信教育課程の特徴


日本における高校卒業生の大学・短大進学率は現在50%を超え、専門学校まで含めると、70%近くの人が進学の道を選んでいます。この数字を見る限り、高校卒業後に大学に進学することは今では当然のことであり、半ば義務教育化しつつあると感じます。

一方で親の所得格差は拡大し、経済的理由で大学への進学を断念せざるをえない人は、毎年数万人に上るといわれています。このような状況を打開するために、「給付型奨学金」の創設を含む奨学金全般について検討が行われることは、大変喜ばしいことではありますが、一方で無利子の奨学金等の拡充については、将来の返済の問題がついてまわります。

そこで筆者は、一般の大学進学とは別の進学形態として、働きながら学ぶことができ、かつ学費負担が軽い「大学の通信教育課程への進学」という道があることについても、国がもっと積極的に推奨するべきではないかと考えています。

大学の通信教育課程の特徴としては、一般的に以下のようなものが挙げられます。

1) リーズナブルな学費
大学の通信教育課程の最大の特徴は、通学課程と比較して学費が各段に安いことです。例えば中央大学法学部を例にとると、一般の通学課程の場合、初年度の納入金は約120万円にも上るのに対し、通信教育課程の場合、初年度の納入金は約11万円で済み、通学課程の1割弱しか学費負担が生じません。

また慶応義塾大学の通信教育課程を見ても、初年度の納付金は諸経費を除き13万円程度に留まるため、同大学経済学部通学課程の初年度納付金約130万円と比較しても、同じく1割程度の学費負担で済む計算となります。よって、この程度の学費負担であれば、経済的に困窮している家庭の生徒であっても、返済義務のある奨学金を利用せずに、働きながら大学で学ぶことができるため、通信教育課程に進む生徒が増えていけば、将来的には奨学金支給の抑制にも繋がることが期待されます。

2) 授業は通学課程も通信教育課程も、同じ教員が担当
原則として、通学課程と通信教育課程では、同じ科目の授業は同じ教師が担当するため、授業内容に差が生じません。

3) 好きな場所、時間を選んで学習することが可能
スクーリング等を除き通学する必要がなく、かつ好きな時間、場所を選んで学ぶことができるため、インターネット環境さえあれば、地方在住の人でも都会の大学に入学することが可能になるため、わざわざ都会まで出ていく必要がありません。

4) 学位は、通学課程と同じ「学士」を授与
卒業により取得できる学位は、通学課程の学生と通信教育課程の学生の間に差がありません。全く同じ「学士号」が取得できます。

5) ほぼ「全入制」ではあるものの、卒業することは困難
入学は簡単ですが、4年間での卒業率は極めて低く、一部の大学では4年間で卒業できる比率が10%を切る状況となっています。よって真剣に学習に取り組まないと、卒業できないリスクも生じます。つまり欧米の大学と同じく、学習意欲の高い人向けの制度と言えるでしょう。

このように大学の通信教育課程は、経済的な問題を抱えながらも、学習意欲の高い学生が働きながら学ぶには適した学習環境となっていますので、経済的な問題で大学への進学を躊躇しているものの、高い学習意欲をもつ高校生は、大学の通信教育課程への進学という道も検討されるのが望ましいと思います。

■大学の通信教育課程に対する社会的評価


大学の通信教育課程を卒業した人の多くは、仕事と学業を両立させて真剣に学習に取り組んできた人ばかりなので、極めて学習意欲が高く、優秀な人が沢山います。筆者が以前経営大学院で学んでいた時も、働きながら大学の通信教育課程を卒業され、その後大学院に進まれた人が何人か在籍されていました。彼らは例外なく優秀であり、大手企業から大学院に派遣されてくる高学歴で将来を嘱望された「エリート社員」たちと比較しても、能力面については全く遜色ありませんでした。

上記の事例以外にも、大学の通信教育課程で学んだ後に難関資格である司法試験にチャレンジして見事合格し法曹界で活躍されている人や、大学院に進みその後大学の教員になった人、大手企業への転職に成功された人など、数多くの成功事例が生まれているのも事実です。

一方で、大学の通信教育課程の学生に対する社会的な評価は、同じ大学の通学課程の学生と比較した場合、残念ながらまだ低いと言わざるをえません。 特に一般企業への就職・転職の面では、不利になるケースも多いようです。その代表的な理由として、以下のようなものが挙げられます。

1)大学入試が無く事実上の「全入」制度のため、学生の「学力」に疑問が残る。
2)単位取得が難しいため、内定を出しても必ずしも卒業できるかどうかわからない。
3)ゼミやサークル活動の経験に乏しい人が多いため、コミュニケーションやリーダーシップの面などが心配だ。 

上記の1)については、最近では有名大学であっても付属高やAO入試等による入学者の比率が高くなり、必ずしも学生全員の「学力」が高いとは限りません。特に有名大学であっても、小学校からエスカレータ式に大学まで進める学校もいくつかあります。エスカレータ式で進学をしてきた彼らと、4年間働きながら厳しい学習に取り組んできた通信教育課程出身者との「学力」の間に、本当に大きな差があるのでしょうか?

2)の単位取得については、通信制の学生は確かに不利な面はあるものの、必ずしも卒業できないリスクが高いという学生ばかりでは無いため、企業の通信教育課程に対する理解が深まれば、留学生等の採用と同じように、ケースバイケースで対応することは十分可能だろうと思います。

3)のゼミやサークル活動に関する懸念についても、通信制の学生は企業等で働いている割合が高く、社会経験を持ち合わせている人が多いため、通学制の学生と比べてコミュニケーション力やリーダーシップの面で著しく劣るということは無いはずです。 逆に通信制の学生は、通学制の学生以上に忍耐力や意思の強さなどを持ち合わせている割合が高いと予想されるため、そこが彼らの強みになるだろうと思います。

以上のことから、企業の採用時において通信教育課程の学生に対する評価が通学制の学生よりも低い傾向があるとしたら、それらの多くは、先入観に基づくものではないかと感じるのです。

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