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課長は過労自殺してるのに… 違法な長時間労働で送検された会社と社長は、なぜ「不起訴処分」なのか?

社員に月100時間を超える違法な残業をさせたとして書類送検された滋賀県の工場と当時の社長について、大津地方検察庁が「起訴するほど悪質ではない」として不起訴処分にしたと3月18日のNHKニュースが報じた(現在はサイトから削除)。

長時間労働をさせられた2人のうち1人が自殺し、労基署がこれを過労自殺と認定している。ネットには「人間が死ぬまで働かせることは、起訴が必要なほどの悪質なことではないのか」などと違和感を抱く声もあがっている。

起訴するかどうかは、情状を踏まえて検察官が判断する

この事件はおととし、道路標識などを製造する会社(本社・大阪)と63歳の元社長が、滋賀県竜王町の工場に勤務していた2人の従業員に2か月間長時間労働をさせたとして、昨年12月に労基署から書類送検されていたもの。

40歳の課長は最大で1か月に132時間、別の30代の社員も100時間を超える残業をさせられており、課長は自殺。その後、過労自殺と認定されている。

昨年12月の毎日新聞の記事によると、会社は「課長は管理職で法規制外」などと労基法違反容疑を一部否認したが、労基署は「課長だった男性は自分の労働時間を決定する裁量と権限を持っていたとは言えない」として書類送検に踏み切ったという。

キャリコネニュースが大津地検に電話取材したところ、担当者は「次席検事が会見の場でそのような発言(「起訴するほど悪質ではない」)をしたことは確か」と認めた。

この点について、残業代未払いや不当解雇などの労働問題について担当するアディーレ法律事務所の岩沙好幸弁護士に聞いてみると、今回のような事件でも不起訴となることはあり得るのだという。
>「今回のような事件は、労働問題を扱う弁護士として本当に残念ですし、ご遺族も非常にショックだったと思います。ただし、労基法に違反して長時間労働をさせた罪と、過労死させた罪は別物です。
今回の不起訴処分は、前者に関するもの。後者は、理論上は業務上過失致死に当たり得ますが、経営者に予見可能性がないと判断されることが多く、今回も問題となっていないのです」

昨年はABCマートが略式起訴されている

岩沙弁護士によると、起訴か不起訴は「事案の悪質性や前科の有無、反省の態度、再犯可能性などを総合考慮して、検察官が決める」との確かに交通事故で相手を死亡させてしまった場合でも、状況によっては不起訴になったり、執行猶予がついたりすることは少なくない。裁判所が「情状酌量の余地あり」として量刑を決めるのと同様、検察官もさまざまな「情状」を踏まえて起訴の判断をしているようだ。
「例えば2001年には、過労死した従業員に連日の深夜残業をさせながら労働時間の管理や健康診断をしなかったとして、東京地検が労働基準法違反および労働安全衛生法違反で、内装工事会社の株式会社ジュンプロダクツと代表者を略式起訴したものがあります。
最近でも、靴販売大手のABCマートの従業員が、不適切な形で月100時間前後の時間外労働をさせられていたとして、東京労働局が同社と役員・店長2人を労働基準法違反の疑いで書類送検した事例では、東京地検は略式起訴しました」

また岩沙弁護士によると、この処分に納得がいかない場合には「検察審査会に対する審査申立て」という不服を申し立てる制度があるという。申立てができるのは告訴・告発をした人、または被害者(被害者が死亡した場合には、その遺族)。今回のケースでは送検した労基署か、過労死した課長の遺族ということになる。

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