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なぜ待機児童問題の議論は難しいのか〜ニコニコ生放送「父が考える、保育園問題」から

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■若者の間に横たわる格差問題

(沖縄県40代女性からの質問):今後、「恋愛できず、結婚できず、子供をつくれない貧困層」と、「恋愛できて、結婚できて、子供をつくれる富裕層」に日本が二極化する中、「保育園に入れないで困っています」という問題は、「仕事は時給800円のコンビニバイト、”希望は戦争”」的な未婚男性から見れば、優先度の高い問題だとは決して感じられないと思います。

待機児童問題をリアルな社会問題だと感じているのは、実は富裕層なのではないでしょうか。父親になれない「結婚待機男性」問題こそ、深刻な社会問題なのではないでしょうか。

駒崎:子どもがいるということ自体が、もはや富裕な方々の、ある意味で贅沢な悩みなんじゃないかっていう問題提起ですね。

西田:先ほどの「親同士の連帯が困難」という問題と関係しますね。

2つ補助線を引くと、独身男性の人にとっても、この社会が維持されなくなるのは困るでしょう、という視点が一つあるでしょう。もう1つは、特に若年世代では4割近くが非正規雇用になっている今、男性だけの稼ぎでなんとかなっている家庭というのは、全体から見ればさほど多くないだろうという視点があります。

さきほども申し上げたように、今や共働き世帯がマジョリティになっているわけですから、必ずしも格差の問題に関連づけることは出来ないんじゃないかという気がします。つまり、より汎用性のある課題だということです。

:全然違う観点から、すごくラジカルな話をしますけど、最近「ネットワーク理論」を調べているのですが、人間の性行動というのは正規分布をしないんです。つまり「この半年間で何人ぐらいと性交渉を持ちましたか」と尋ねると、すごく多い人と、すごく少ない人に二極化したグラフになるんです。これはすごく重要な事実だと思うんです。

僕達は「みんなが恋愛する」と思い込んでいるし、みんなが性交渉をし、子どもを産むという一応の前提の下、「恋愛」とは別の「婚姻」というシステムを作ってきたわけですが、個人の自由の幅が広くなってしまうと、多くの人達にとって性交渉は面倒なことであって、恋愛もしないという風になってしまうと思うんです。このグラフが意味していることは、そういうことではないでしょうか。

つまり、夫婦が1組あたり2人ずつ産むと…という想定自体が、ちょっと無理のある設定になりつつあって、子どもをたくさん作る人達と、ほとんど作らない人達に分かれて、トータルでみると人口が維持される、という風になるのかもしれない。そして、これはおそらく日本だけではなく、世界的にもそうなるのではないでしょうか。

実際問題、今の世の中では恋愛をして、結婚して、子どもを2人作って…というのが、標準的な幸せの形、ということにされているんですが、そうではない幸せを掴みたい人も、ものすごくいっぱいいるわけですよね。そういう人達に対して、「キミたちも子どもつくれ」と言うのは難しいんですよ。「それだったら、子供を持つのはムリだ」と考える人たちは、別に子供をつくらなくていいと思うんですよね。

だとすると、結局、大事なのは、子どもいっぱいつくる人を支援するシステムが実は必要なんじゃないか、とか、トータルで人口を維持するために必要なことは何か、もっと根底のところから考えなければいけないと思います。

ネットを見ていると、そこの論点設定に誤解がある気がするんです。「みんなが子どもをつくれるような社会を目指すべき」と思っている方もいると思いますが、それは目指すべき社会ではないんですよ。

西田:ただ、機会は開かれていなければならないと。

:もちろんです。

駒崎:まさにフランスでは子どもが3人いれば、シングルマザーが仕事をしなくても暮らせるような社会保障の制度があります。ある種、出生率を高めるという政策としても合理的だと思います。

僕もラジカルな話をしますと、実は少子化問題って、人類史上、過去にはあんまり起きていません。「国民国家」というものがなかった時代には、人がいないところで作物が収穫できれば、そこへの人口移動が起きるので、人口が減ることはなかったんです。

それが「国民国家」という枠組みを作ったが故に、「じゃあ、そちらに入ります」ということに対して「いやいや、入るなよ」となりました。言わば、この「国家」という枠組みを溶かせば、少子化の問題というのも一緒に溶けていくんですよね。

:移民奨励問題につながって来ますね。

駒崎:そういう意味で、国民国家としての有り様がある一方で、その基盤が掘り崩されていく人口動態の変化と、移民問題とをどうバランス取っていくかみたいなものが、ある種問われています。

徐々に、実質的な”移民”が定着していって、恐らく数十年後に、「気づいたら移民が入っていましたね」と、なし崩し的になっていくんじゃないかっていう気もします。

:少子化対策が遅すぎたという指摘もあるかもしれませんが、もし10年前に今のような議論があったとしても、僕の世代はそんなに子どもを作らなかったと思います。ちょっとした空気によって変わるものじゃないと思います。高度な消費社会の中、みんな一人暮らしにも慣れていて、情報があって色んなことが出来る環境から、核家族になって、奥さんが仕事辞めて、子どもを育てて…となれるかというと、なれないわけですよ。

その解決のために、保育園をいっぱい作れば産むようになるかといえば、僕にはそうは思えません。みんな本当は産みたいはずだから、保育園をいっぱいつくれば、みんな産むんだっていう前提は違うと思うんですよね。

子供をつくって育てるということは、すごく時間もコストがかかるし、リスクもある。今の社会では、その道をあえて選ぶというのが”変わった選択”になりつつあるんですよね。そういう前提で物事を考えていかないといけないのではないでしょうか。

(あずま・ひろき)1971年生まれ。作家、思想家。ゲンロン代表取締役。著書に『一般意志2.0』(講談社)、『弱いつながり』(幻冬舎)、『ゲンロン2 慰霊の空間』など。

(かわしま・たかゆき)1964年生まれ。三井物産ロジスティクス・パートナーズ株式会社代表取締役。NPOコヂカラニッポン代表、NPOファザーリング・ジャパン理事。著書に『いつまでも会社があると思うなよ!』(PHP)。

(こまざき・ひろき)1979年生まれ。認定NPO法人フローレンス代表理事、 全国小規模保育協議会理事長。現在、厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進委員会座長、内閣府「子ども・子育て会議」委員、東京都「子供・子育て会議」委員、横須賀市こども政策アドバイザー。 著書に『社会をちょっと変えてみた――ふつうの人が政治を動かした七つの物語』(岩波書店 )、『社会を変えたい人のためのソーシャルビジネス入門』 (PHP新書)など。

(にしだ・りょうすけ)1983年生まれ。東京工業大学大学リベラルアーツ研究教育院准教授。博士(政策・メディア)。著書に『民主主義』(幻冬舎)、『メディアと自民党』(角川新書)、『マーケティング化する民主主義』 (イースト新書)など。

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