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総合区地獄

大阪では「総合区」に関する話題がジワジワ再燃している。松井知事が本日2016年4月6日の記者会見において『「2018年秋ぐらいまでに「特別区」と「総合区」を選ぶ住民投票をやるべき』との認識を示されたそうだ。

 先に頭を混乱させた上で、整理をしていきたい。

 公明党は、昨年の住民投票の結果を受けて、大阪市を解体廃止して特別区を設置するか否かについては結論が出ているという認識もと、現在の大阪市の24行政区を将来的に合区することで総合区とする検討に着手している。総合区のもとでは、従来の24行政区は地域自治区として地域コミュニティーを活かすと主張している。

 一方、自民党は昨年の住民投票以前より、合区を前提としない総合区の活用を進めるべきとの一定の方向性を示しており、現在の行政区の2,3を総合区とする試行により、今後の総合区の活用のあり方を模索すべきであるとの見解を表明している。(ただ、昨年の市長選挙後においては、その結果を受けての考え方を現在のところ示してはいない。)

 さて、「特別区」「行政区」「総合区」「地域自治区」と<区>と名の付く呼び名が4つ出てきたが、違いの詳細はお分かりだろうか。実は、私も分からない。少し丁寧に正直に真実を語れば、分からないわけではないが、詳細を他者に説明するにあたっては、ネットや過去の資料などをほじくり返して確認しなければ正確な説明ができる状況ではない。非常に複雑なのだ。

 あまり一度の投稿で長文となることは良しとしないので、「地域自治区」については、今回は省かせて頂く。「特別区」「行政区」「総合区」この中で現在、大阪の行政に存在するのは「行政区」だけである。であるならば、現在の「行政区」を『「特別区」にするのか、「総合区」にするのかを選択する』という表現は、現状をどの様に変えるのかという点において誤りでは無いように感じる。しかし、「特別区」と「総合区」とを単に比べた時には『「特別区」の方が良い』という結論が決まっており、比較の対象となるものではに事を知っておいて頂きたい。

 「特別区」と「総合区」とは比較の対象ではない!

 「特別区」との比較の対象は「市」であり、共に地方公共団体であるということで同一である。

 一方、「行政区」との比較対象は「総合区」であるという表現は、正確であり、共に地方公共団体ではなく政令市内に置かれる「区」の種類である。

 「特別区」と比較すべきは「市」である。

 そもそも第30次地方選度調査会の最終報告で出てきた「総合区」という言葉が状況を複雑にしている。他の市町村よりも規模の大きな人口を抱える政令市において、身近な住民自治の強化を図るために「行政区」における区長権限などを強めたものが「総合区」である。しかし、「行政区」と「総合区」との違いが一般には非常に分かり難い。また、現在の「行政区」を活用しながらも「総合区」的な区の権限強化ができないわけではないこともあってか、地方自治法改正により「総合区」が活用できるようになった今年4月以降も全国の中で「総合区」を活用しようとする政令市は存在しない。

【参考:府県と政令市との間に生じる二重行政の課題の解消をするにあたり、府県に権限を集中させるのが都制度であり、政令市に権限を一元化するのが特別市制度である。共に、府県と政令市との間の対立を生じさせるものであり、対立ではない府県と政令市との協調の手法として調整会議の設置が第30次地方制度調査会の最終報告に基づく地方自治法改正で義務付けられている。】

 大阪市においては、約270万人人口に対して24の行政区があるという体制は、他の政令市と比較すれば行政区の数が多く、きめ細やかな身近な行政が実施できる体制であると言える一方で、各区一館といった施設整備を行いがちな経過などを考えれば、24区体制が非効率であるという指摘もある。この指摘に対して、行政区のブロック化や最終的には合区を行うことで行政の効率化を図れるのではないかと解決策は想定され得る。「総合区」は今の「行政区」をバージョンアップさせるという点において、この解決策を実施するテコとして活用できる可能性を秘めている。しかし、行政の効率化という内部的な課題解決は、住民生活に大きな影響を与えるわけではなく「総合区」という新たな言葉が、ただただ混乱を巻き起こしている様にも感じる。

注1:但し、合区という事象については、一定住所変更なども含めて住民には重大な影響を与える可能性があることについても付言しておく。注2:ブロック化…税務事務や生活衛生業務などを複数の行政区を一単位として行政サービスを行う事。)

 混乱からの脱却にあたり、今一度、正しい共通認識を共有しておきたい。

 「特別区」と「総合区」は比較の対象ではない。
 「特別区」の比較の対象は「市」である。


 この認識を先ずもっておけば、砂に埋もれてしまうことなく、次なる大都市制度議論への歩みの一歩を踏みしめることができる。

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