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特定秘密に歯が立たない国会 - 南部義典

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憲法によって国家を縛り、その憲法に基づいて政治を行う。
民主主義国家の基盤ともいえるその原則が、近年、大きく揺らぎつつあります。
憲法違反の発言を繰り返す政治家、憲法を無視して暴走する国会…。
「日本の立憲政治は、崩壊の危機にある!」
そう警鐘を鳴らす南部義典さんが、現在進行形のさまざまな具体的事例を、
「憲法」の観点から検証していきます。

情報監視審、初めての報告書

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 先月30日、衆参の情報監視審査会(いずれも委員8名)は、1年間の実質的な活動を踏まえ、発足後初めてとなる「報告書」を公表しました。衆議院の報告書は147頁、参議院の報告書は64頁あり、それなりの体裁ですが、多くのメディアが報じたとおり、内容的には及第点に遠く及ばないものでした。「監視」をして何を正したのか、国民にはよくわかりません。報告書は、特定秘密保護行政の問題点を指摘し、運用改善の勧告を行うどころか、情報監視審査会それ自体の運用の拙劣と能力的な限界を浮き彫りにした、というのが私の受け止めです。将来に向けて、情報監視審査会の運営を充実させ、機能を強化していくために、意味のある「先例」を築き上げる努力をした形跡が、衆参いずれにも感じ取れないのです。後述するように、この点は与党(自民党)の責任が重大です。

 特定秘密保護法が施行された2014年12月以降、国会は現実に、政府が指定する特定秘密に対峙しなければならなくなりました。しかし、情報監視審査会の立上げが“政府後追いの、見切り発車”だったことは、火を見るより明らかでした。どのように運営することが国民の「知る権利」に応えることになるのか、与党も野党も具体的なイメージをつかめないまま、今日までズルズルと来てしまったわけです。報告書の内容が及第点に遠く及ばないと評価されたのも、至って当然でしょう。

 情報監視審査会が実際に始動したのは2015年3月でした(すでに法律の施行から3カ月遅れです!)。特定秘密に関する調査権、審査権が、きょうまでの1年間どのように行使されたか(行使されなかったか)、報告書を読み解いていくと、制度、運用のレベルを超えて、国会の存在意義をも揺るがすような根本的な問題が明らかになります。

国会提示を前提とした、わかりやすい整理を

 情報監視審査会はこの1年間、政府から主に特定秘密の帳簿(⇔特定秘密の概要、指定した年月日、有効期間などが書かれています。特定秘密そのものではありません)の提出を受けながら、担当官僚へのヒアリングを実施し、質疑を行うことを続けてきました。果たして、それだけで特定秘密の合法性と妥当性がチェックできるのか、第三者的に見てもかなり疑わしいところがありますが、案の定、今回の報告書では、衆参ともに、この帳簿の分かりやすさを求めました。帳簿を提示されただけでは、素人目には理解できなかったわけです。

 そもそも論ですが、情報監視審査会を立ち上げる際、少なくとも特定秘密の帳簿を国会に提示することを前提に、わかりやすい概要表示を政府に命じておくべきではなかったでしょうか。情報監視審査会が“政府後追いの、見切り発車”だったので、いまさら詮無い話ですが、こうした基本的な問題の解決を運用2年目以降に先送りしてしまったことは、大きな問題です。

 情報監視審査会の求めを受けて、特定秘密の概要表示は今後、どのように改善されていくでしょうか。情報監視審査会は会議自体が非公開で、会議録(本文、概要)も公開されません。私たちが政府の対応を知るには、来年(2017年)3月末に公表される次の報告書まで待たなくてはなりませんが、それもおかしな話です。この点は、随時報告の形で、報告の頻度を上げていく必要があります。

秘密提示「衆議院1件」に対する疑問

 報告書によると、衆議院情報監視審査会は1件、参議院情報監視審査会は4件、政府から特定秘密の提示(⇔提供ではありません)を受けたとされています(次表)。

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 私は、衆議院情報監視審査会に対して提示された「1件」に関して、素朴な疑問を持っています。参議院情報監視審査会は2015年中に4件の提示を受けていたところ、衆議院の方は今年に入っても実績「ゼロ」だったため、委員が実績づくりのためだけに衛星情報センター(都内)に足を運んだのではないか、と思うのです。

 永田町の肌感覚からすると、1月25日というタイミングが、あまりにも無理やりな印象を受けます。1月22日、衆議院本会議でいわゆる政府四演説が行われ、26日から各党の代表質問が行われることになっており、25日はその狭間になるわけですが、各種新年会が真っ盛りであるこのシーズンに、自分の選挙区外で予定を好んで入れる議員はいません。それでも、報告書にはさすがに実績「ゼロ」とは書けないので(国民の大顰蹙をかいます)、すでに参議院で提示を受けた4件のうち、最も当たり障りのない(といっては語弊があるかもしれませんが)衛星情報センターに半ば頼み込むような感じで、提示を要求したのではないでしょうか。1月25日は、そのギリギリのタイミングだったはずです。今回はかろうじて、面子を保てたかもしれませんが、衆議院情報監視審査会の存在意義に関わります。

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