- 2016年04月06日 12:03
風を吹かせよ、「逆風」という風を!- 鈴木耕
2/2安倍首相が強気な理由
それでも安倍首相は、衆参同時選に打って出るつもりらしい。ノブスケじいちゃんから受け継いできた念願の「憲法改正」の発議のために必要な、衆参両院の3分の2議席獲得にも、自信を見せているというから不思議である。
こんなスキャンダルまみれの自民党の状況の中で、なぜそんな自信が持てるのか? 親しい政治ジャーナリストの分析を聞いてみた。
妥協の末にやっと発足した民進党の支持率が、まったく上がってこないからですよ。いまの支持率の状況が続くようなら、自民党は勝てると踏んでいるんです。
安倍官邸は当初、民主党と維新が一緒になれば、少なくとも20%程度の支持率に達すると思っていたようです。ところがふたを開けてみると、民主・維新の合計支持率をも下回って、各メディアの調査では、上限がやっと15%前後という結果。つまり『新党への風』が、まったく吹いていない。これが安倍総理の強気の背景です。
この状況だったら、少なくとも1人区では負けるわけがない。そこへ、衆参同時選にはあれほど反対していた公明党が、なぜか急に軟化。これには、各選挙区でのそうとうのバーターがあったようですが、山口代表はあっさり安倍首相の意向を飲んでしまった。公明党はもう、与党内での右傾化の歯止めの役割をまったく放棄してしまったと言われても仕方ない。
多分、この公明党の容認によって、同時選の芽は8割ほどにまで膨らんだと見ていいでしょう。
新党への風が吹いていない。簡単に言えば、そういうことだ。業界団体と創価学会という固い組織票があれば、風の吹かない民進党などに負けるわけがない…と。
普通なら、あれほど大騒ぎして発足した「民進党」なのだから、多少の風は吹いてもおかしくはない。少なくとも、両党のこれまでの支持率の合計は上回るだろうと関係者は思っていたようだが、大外れ。
まあ、それも当然ともいえる。憲法、沖縄米軍基地、原発、消費税などの諸問題に関して、民進党内の意見が一致しているようには、とても見えない。各マスメディアはそこを突く。むろん、安倍御用達メディアのあの新聞やこのテレビ局、それにあの雑誌などは、執拗に民進党を批判する。いや、批判というより愚弄、罵倒といったほうがいい。バカにされるほうが、批判よりもキツイ。だから、民進党の支持率は伸びない。
「民進党」という党名も、なんだかなあ…ではあるけれど。
無風下での自民党大勝利
では、間近に迫った選挙で、またも自民党は大勝するだろうか? 実は、それほど事態は自民党に甘くはない。
自民党が大勝した2014年の衆院選を考えてみればいい。あれほど自民党は大勝したのだから、自民党へ大きな「追い風」が吹いたと考えるのが当然だろう。しかし実際は「風」など、そよとも吹かなかったのだ。
例えば、自民党のこの選挙での小選挙区獲得票は約2546万票、比例区では約1765万票で、獲得議席数は291(民主党は73議席)。
では、自民党が惨敗し、民主党が歴史的な政権交代を果たしたときの2009年総選挙ではどうだったか。このときの自民党の得票は、小選挙区で約2730万票、比例区で約1881万票、獲得議席数は119(民主党は309議席)。
一方、民主党は2009年には、小選挙区では約3347万票を獲得していたのが、2014年には約1192万票だった。
つまり、自民党は大勝した2014年選挙での得票数は、実は大敗北を喫した2009年の得票よりも下回っていたのだ。要するに自民党への「追い風」などまったく吹いてはいなかったということだ。
民主党が2012年、2014年に大敗したのは、小選挙区で実に2000万票もの票を失ったからであって、自民党に「追い風」が吹いた結果ではまったくない。「風」を考えるならば、「民主党へは投票したくない」という「大逆風」が吹いた結果なのである。
自民党への「逆風という風」…
さて、ここからが本題だ。
「風」が吹き始めたような気がするのだ、自民党への「逆風という風」が。
最近、たくさんの自民党というハッシュタグ付きのツイートがネット上を賑わしている。曰く「#自民党なんか感じ悪いよね」「#自民党ひどすぎる」「#自民党は毎日がエイプリルフール」「#自民党春の炎上祭り」「#自民党落とすのは私だ」などなど、枚挙にいとまがない。
これも自民党へ「逆風」が吹き始めたひとつの表れだろう。
凄まじいとしか言いようのなかった民主党バッシングがマスメディアを賑わした2012年の総選挙の際に、最も多かったのは「民主党にだけは入れたくない」という意見だったと言われる。つまり、「民主党以外」という選択で自民党は漁夫の利を得たということだ。
「民主党には入れたくない」→「投票しても当選しないなら自分の票は無駄になる」→「ほかに入れる党がない」→「だから投票に行かない」…。こうして2000万票もの票が民主党から逃げた。別に自民党が勝ったわけではない。民主党がひとりで大コケしてしまっただけだ。
2012年と14年の総選挙が、連続して戦後最低の投票率を更新したことは、そういう有権者の意識を示している。
いま、それに似たような現象が起こり始めている。「自民党にだけは投票したくない」という自民党に対する「逆風という風」。これは、安倍自民党が考えている以上に吹き荒れるかもしれない。
各野党それぞれに大した風は吹かなくても、自民党以外という選択肢でまとまった「野党統一候補」が出てくれば、事態は大きく変わる。
「自民党だけには投票したくない」という、自民党にとっての逆風が吹く選挙になれば、安倍改憲路線が破綻する。
そのためには野党共闘が必須の条件となる。野党がバラバラでは、前と同じく50%近くもの「死に票」が出るという死屍累々の投票結果になるだけだ。
ぼくは、繰り返し主張してきたように「憲法改定」よりも、まず「死に票」が膨大に出てしまう現在の選挙制度の改革のほうが先決だ、と考えている。だが、残念ながら間近に迫った選挙には間に合わない。今回は現行制度でいくしかない。
選挙が終わったら、次に備えて「選挙制度改革」の国民的議論を巻き起こさなければならないと強く思う。



