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“友愛”の精神とわが国の今後~元内閣総理大臣からの提言 鳩山 友紀夫(由紀夫)氏

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消えた公文書 「最低でも県外」を断念した理由

 沖縄の基地問題について、私は大きな責任を感じておりますが、やはり、絶対に辺野古に基地を作らせてはいけないと思います。私は、当時、普天間基地の移設先として奄美大島の徳之島に可能性を感じていました。しかし、外務省の役人から「沖縄米軍は北部訓練場で一体となって訓練を行なうが、徳之島からだと移動時間がかかりすぎて十分に訓練が出来ない。『基地は65海里(約120km)以内であるべきだ』という基準が米軍のマニュアルにも明記されている」との説明を受け、徳之島への移設を断念致しました。沖縄から200km離れた徳之島は無論、「120km以内」という基準を満たすためには、事実上沖縄から出る事ができません。この説明が決定打となり「最低でも県外」という公約を断念せざるを得ませんでした。

 この説明の際に見せられた書類は、2015年4月まで極秘文書扱いとなっておりました。極秘期間が解け、あらためて外務省に説明を求めたところ、「そんな紙はありません」「知らない」の一点張りで、担当者に答えてもらえない状況です。極秘文書が保管されていないというのは極めておかしなことであります。当時、外務官僚がアメリカ大使館に「鳩山の言う事は聞かなくていい」と言っていたようです。当時は全く気がつかなかったのですが、いったい日本の官僚はどっちを向いているのか、忸怩たる思いであります。

 私は、日本がより自立をするということは、軍事力を増強することではないと思います。日本国内には、現在もアメリカの基地が常駐しており、米軍基地の73%が沖縄にあります。50年も100年も他国の軍隊が常駐しているというのは主権国家としておかしいと思います。多くの人が「アメリカの軍隊なしでどうやっていくのか」と仰いますが、むしろ日本は戦争が出来ない変わった国で良いのではないでしょうか。 

 安倍政権は、集団的自衛権について、安保関連法制の中で限定的に行使すると言っていますが、アメリカに従順な日本は断ることが難しいと思います。対話と協調こそが重要であって、武力で平和というのは作り得ません。私は、集団的自衛権の行使、そういう方向での憲法改正に反対です。

東アジア共同体の構築に向けて~友愛の精神から

 「友愛」という言葉は、リヒャルト・クーデンホーフカレルギー伯爵の言葉です。彼は、自由と平等を両立する為に必要な精神として「友愛」を掲げました。友愛とは、自分の尊厳を尊重すると同時に、相手の尊厳をも尊重する事です。「相互尊重」「相互理解」「相互扶助」、現代風に言えば「自立と共生」でしょうか。みんな違うからこそ良い、むしろ違いというものを喜びながら共に生きていける社会をつくっていけたら良いと思います。

 人と人の関係だけでなく国家間も同様です。グローバリズムがいきすぎると自由競争の下で弱肉強食の世界になります。グローバリズムとナショナリズムの間で、いくつかの地域が共同して連携していくことがますます重要になってくると思います。かつての共同体は、経済を中心として「関税」という壁に囲まれた地域共同体でしたが、もっとオープンな共同体であるべきです。国というものを固定せず、フレキシブルな繋がり、例えば環境の共同体、文化の共同体、経済の共同体というように、それぞれ範囲が異なる共同体が重なりあって出来ればいいのは無いでしょうか。

 私は、EUに学びながら、東アジア共同体を構築する事を目指しています。東アジアにおいては、北朝鮮をどう取り込んでいくかというのが大変大きなテーマです。今すぐ仲良く、というのは難しいかもしれませんが、例えばスポーツの分野ではうまくやれるかもしれません。最初からすべて除外するのではなく、何か一つでも接点を作りそこから信頼関係を高めていけばよいのです。その先に、日朝間に平和な関係を作り上げていく可能性が見えてきます。

 たくさんの共同体が生まれ、最終的には地球全体が一つの運命共同体になれば戦争もなくなると思います。そういうことを夢に描きながら、少しずつ行動していくことが重要だと思います。今のままでは日本は軍事力を強化し、近隣諸国へ間違ったメッセージを与えかねません。アメリカとも互いに立場の違いをわきまえながら、友愛を築いていく必要が有ります。そのためには、まずは日本が自立すること。日本が世界の孤児にならないように、平和の旗ふり役となれるように、一人ひとりが行動していくことが重要だろうと思います。

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