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- 2016年04月06日 14:33
日本企業はなぜ海外M&Aに失敗するのか - 杉山仁 (JPリサーチ&コンサルティング顧問)
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以上述べてきたとおり、日本と海外の企業文化の違いは、筆者は歴史と地政学要因による文明の違いにあると考えている。宗教の異なる一神教の異民族同士が土地を求めて争いを続けてきたのが、ユーラシア大陸の民族の歴史であり、これは現在でもキリスト教徒とイスラム教徒の一神教同士の終わりのない対立抗争として続いている。
一神教の異民族同士の争いが長いあいだ続くと、当然、相互不信と警戒、支配被支配と奴隷制の世界観、勝っているあいだに収奪する短期志向等の考えが定着し、現在に至るまで、その文明の人びとの行動様式を支配しているのではなかろうか。
これに対し、日本列島は大海に孤絶し、海に囲まれていたという地政学上の要因により、ユーラシア大陸からの異民族との武力衝突が元寇を除いてはなく、かつ多神教であったため、国内でも大規模な宗教戦争がなかったというきわめて恵まれた環境にあり、ここに縄文時代以来1万年以上に亘り、世界でもまれな日本文明が育まれたのである。
歴史と地政学により条件付けられた文明というインフラストラクチャーは、そこに生きる人びとの文化、すなわち考え方と行動様式を規定する。ここからユーラシアの民族と日本人との文化の著しい差が生じたのである。
グローバリゼーションという耳当たりのよい言葉に流されず、彼我の文化と文明の違いと、そこから生ずる行動様式の違いに目を向けるべきである。日本企業は自らとは異なる文明の人びととM&A交渉を行なっていることを十分に認識すべきである。
同時に、日本人の共同体志向はクライシスにあたって、クライシス対策よりも共同体組織の名誉を守ることが優先されがちであるため、これが海外M&Aのリスク要因となっていることを、日本企業は率直に認識することにより、海外M&A成功に役立てるべきであろう。
杉山仁(すぎやまひとし)
(JPリサーチ&コンサルティング顧問)
一九四九年生まれ。七二年一橋大学卒業、旧三菱銀行入行。米英に約十二年間勤務し、海外M&A業務に従事。二〇〇一年転出後、大手企業投資ファンドや上場事業会社で海外M&Aと買収後経営に携わる。海外を含む投資先企業の取締役を務め、内外の子会社経営や買収後リスク対応の経験が豊富。現在、M&Aリスクコンサルティング会社であるJPリサーチ&コンサルティングの顧問を務める。
一神教の異民族同士の争いが長いあいだ続くと、当然、相互不信と警戒、支配被支配と奴隷制の世界観、勝っているあいだに収奪する短期志向等の考えが定着し、現在に至るまで、その文明の人びとの行動様式を支配しているのではなかろうか。
これに対し、日本列島は大海に孤絶し、海に囲まれていたという地政学上の要因により、ユーラシア大陸からの異民族との武力衝突が元寇を除いてはなく、かつ多神教であったため、国内でも大規模な宗教戦争がなかったというきわめて恵まれた環境にあり、ここに縄文時代以来1万年以上に亘り、世界でもまれな日本文明が育まれたのである。
歴史と地政学により条件付けられた文明というインフラストラクチャーは、そこに生きる人びとの文化、すなわち考え方と行動様式を規定する。ここからユーラシアの民族と日本人との文化の著しい差が生じたのである。
グローバリゼーションという耳当たりのよい言葉に流されず、彼我の文化と文明の違いと、そこから生ずる行動様式の違いに目を向けるべきである。日本企業は自らとは異なる文明の人びととM&A交渉を行なっていることを十分に認識すべきである。
同時に、日本人の共同体志向はクライシスにあたって、クライシス対策よりも共同体組織の名誉を守ることが優先されがちであるため、これが海外M&Aのリスク要因となっていることを、日本企業は率直に認識することにより、海外M&A成功に役立てるべきであろう。
杉山仁(すぎやまひとし)
(JPリサーチ&コンサルティング顧問)
一九四九年生まれ。七二年一橋大学卒業、旧三菱銀行入行。米英に約十二年間勤務し、海外M&A業務に従事。二〇〇一年転出後、大手企業投資ファンドや上場事業会社で海外M&Aと買収後経営に携わる。海外を含む投資先企業の取締役を務め、内外の子会社経営や買収後リスク対応の経験が豊富。現在、M&Aリスクコンサルティング会社であるJPリサーチ&コンサルティングの顧問を務める。
Voice 2016年4月号
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中国は全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、今後GDP成長率目標をこれまでの7%から引き下げ「6.5%以上」にするとした。実際の経済成長率は発表される数字の半分程度ともいわれるが、いずれにせよ世界経済を牽引してきた中国経済の高度成長は止まったようだ。しかし、貿易取引の大きな日本や韓国への影響は深刻だ。チャイナショックは、リーマン・ショックに匹敵するほどだという意見も聞く。そこで4月号の総力特集は「チャイナショックが来る」と題し、世界経済にどれほどの影響があるのかを分析した。
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