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日本企業はなぜ海外M&Aに失敗するのか - 杉山仁 (JPリサーチ&コンサルティング顧問)

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 これに対して、征服した異民族を殺戮したり、人権のまったくない奴隷として酷使したユーラシアの人びとには、一神教の教えもあり、そもそも人間平等という考えはなかった。有史以来、世界中の文明圏で奴隷制がなかったのはおそらく日本だけではなかろうか。奴隷制があったかなかったかで、その文明の人びとの振る舞いがまったく異なってくるからだ。

 古代民主制といわれるギリシャの都市国家アテネでは、12万人の市民のほかに3万人の外国人と8万人の奴隷を使っていたことが記録されている。

「民主主義」といっても奴隷には人権はいっさい認めず、家畜と同様に酷使、虐待、虐殺していたのがギリシャの「民主主義」の実態である。  ローマ帝国に至っては、戦争で奴隷になった異民族の男をグラジエイター(「剣闘士」と訳されている)としてコロセウム(闘技場)に追い込み、同じグラジエイター同士をどちらかが死ぬまで剣で戦わせ、これをローマ市民が観覧席から高みの見物をして楽しんだ、という事実は読者もよくご存じのことであろう。奴隷は闘牛の牛と同様の扱いであったのである。

 有史以来、ユーラシア大陸の国家と民族では戦争に敗れた人びとは、殺されるか、家畜同然で死ぬまで酷使されるという過酷な運命が待っていたのである。

 この奴隷制を地理的に海外に拡大していったのが、西欧植民地主義である。16世紀のスペインによるインカ帝国征服を嚆矢として広がった西欧の世界中の植民地では原住民の人権はいっさい認められず、原住民はただ殺戮と搾取の対象であったのである。

 つまりユーラシア大陸においては勝者のみが正義、敗者は家畜同然の奴隷とされたのである。

 奴隷制の伝統に基づく勝者独り勝ちの精神は、アップル、グーグル、IBM、ウォルト・ディズニー等の多国籍企業が、徹底した節税スキームで税金の支払いを少なくし、この結果、積み増した利益を株主と経営者が山分けするという行動の原点となっているのである。

 これは日本企業が長いあいだ培ってきた「三方よし」という、人間平等主義に基づいた互恵の精神と正反対のものである。

 最近話題になっている人工知能やロボットに対する警戒感も、奴隷制度があった国と、日本のような人間平等主義が伝統である国では考え方が違うと思われる。ユーラシアの奴隷制度が長く続いた国では、ロボットを奴隷と捉え、奴隷、すなわちロボットの反乱を警戒する姿勢が根付いていると考えられる。

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