- 2016年04月05日 15:57
未婚ですが、何か? 自分を受け入れた先にある豊かさ - にらさわあきこ (文筆家)
4月1日、Wedge Infinityで連載中の「未婚大国ニッポン」が、ポプラ社より『未婚当然時代〜シングルたちの“絆”のゆくえ〜』として書籍化されました。著者のにらさわあきこさん(公式HPはこちら)に、改めて著作を通して読者に伝えたいことは何なのか? 伺いました。
画像を見る『未婚当然時代~シングルたちの“絆”のゆくえ』にらさわあきこ著(ポプラ新書)
(編集部、以下——)にらさわさんは、そもそもどうして“結婚”というテーマを取り上げようと思われたのでしょうか?
にらさわ 以前から“出会い”というものに関心がありました。人と人との出会いというのは、その人の才能や素質に関係なく、誰しもに訪れるもの。ささやかな出会いが鬱屈した日々の中で突如として訪れると、それをきっかけに人は変わることができる。魅力的な人に出会えれば「この人に認められる素敵な自分になりたい!」などという欲求が沸き、日々に活力がでてきます。
そんなところに魅力を感じて、出会いの瞬間やその後の“発展してゆくさま”を人に会ったらまず聞く、という習慣が昔からありました。
—— でも、“出会い”に関心がある中で、なぜ“結婚”という発展的な(笑)問題を取り上げるようになったのでしょうか?
にらさわ テレビ局で勤務していた頃から恋愛ものや結婚ものが好きで、「理系のイケメンを探せ!」みたいなミーハーな企画をよく立てていました(笑)。
私のライターデビューは女性誌からで、そこでは恋愛記事が断然人気だったんですね。その中で、10年ほど前にいわゆる“モテ本”のブームが到来し、女性の恋愛観を取材することになりました。
ただ、いざ話を伺って聞こえてきたのは「モテるよりも結婚したい……」という切実な声でした。それならば結婚に焦点を定めた方がよいのではと思い、結婚をテーマにした書籍を制作すべく取材を開始。一度取材をした方に再び会いに行き、新たな取材対象者を紹介してもらったり、各社の女性編集者さんたちと合コンをしたり(笑)、ちょうど流行り始めていた交流会などに参加するうちに、気が付いたら年間で500人もの方からお話を伺うことになりました。
—— 1年間で500人もの方からお話を聞くなんて……。取材のたびに多くの方のお話を伺っていると思いますが、今回特に印象に残ったエピソードは何でしたか?
にらさわ 個人で仕事をされている方に、「人と人との絆は所詮そのとき感じた一瞬の現象でしかない」と言われたことがありました。
人と人との関係性において、確かなものはないんだと、私自身が日頃から感じていたことを改めて確認した思いがありました。また一方で、“確かである”と確信できることがあるとすれば、自分が一定以上の期間を費やし、自分なりの“何か”を積み重ねてきたという自負があるものではないかとも思うようになりました。
私が本の中で取り上げた方たちは、お見合いに勤しんでいたり、シェアハウスで暮らしていたり、はたまた地方の方と出会うツアーに参加しようとしてみたり……と、傍から見れば楽しそうなことをしています。でもそれと同時に、将来どうなるかわからない不確かさの中で、不安や息苦しさをも感じていました。
彼らに共通することは、“何か”に十分打ち込んでいるにもかかわらず、自分のやっていることを不十分だと感じていて、自信を持って取り組めていないということでした。
どうしてなのかとさらに話を聞いていく中で、たびたび耳にしたのが、「受け入れられていると感じられない」という言葉。どういうことなのかと、突き詰めて話を聞いていくうちに、誰かに毎日少し話を聞いてもらうだけでも、「受け入れられていると感じる」ことができるようだとわかってきたんです。
つまり、不安を感じている人たちの不安を取り除ける要素があるとしたら、自分自身で何かに打ち込んで毎日を暮らすことに加えて、自分以外の誰かとちょっとしたつながりを持つことなのかなとも思いました。
—— なるほど……。それにしても、現代は未婚者が増えているにもかかわらず、結婚することがより一般的であるとみなされています。未婚者が不安を抱えているという点は変わらないようですね。
にらさわ 現実的な“現象”として、未婚はある意味“当然”のこととなりつつあります。
現代社会では女性も仕事をしつつ家庭を築かなければならないため、結婚は先送りにされがちです。また男性も高い収入を得ねばならないという社会的な重圧を背負わされており、収入の低いときに結婚することに抵抗があるので、やはり結婚は先送りされる。一部の男性に女性が集中するという不均衡も存在し、今の日本の結婚制度は考え直す時期に来ているのかなあとも感じます。
未婚やシングルマザーといった結婚に関わる様々な問題は、個人に責任の所在を求めてもなんの解決にもならないし、息苦しさを感じる人が増えるだけだと思います。未婚者の側も、自分自身や結婚そのものに対して高いハードルを課していて、結婚の機会を自分から喪失しているということを感じます。
—— では、結婚制度に固執しないとすれば、現代の男女は何に心の拠り所を求めればよいのでしょうか?
にらさわ 結婚相手や家族に限らず、人は誰もが自分の話を語りたいし、それを誰かに聞いてほしいと思うものだと感じます。常に誰かとのつながりを求めるものであり、気軽に誰かと声を掛け合いたい。そう考えると、未婚既婚に関わらず、誰かと気軽につながりを持てる場を個人個人で持てるとよいのかもしれません。
日本社会では高校や時には大学までカリキュラム化されており、出会いもその枠内で自然に訪れるものだとされています。でも、ひとたび枠外に出てしまえば、個人で選択をしながら日々を積み重ねてゆくことになる。そして私たちは、まだ何かを自由に選択するということに慣れていないんじゃないかと思うんです。特に、出会いがないと悩む人たちには、自由に選択することが苦手な真面目な人が多いような気がします。
でも、真面目であることは利点でもあるので、それを捨てる必要はない。真面目な人であっても、自由に選択を積み重ねていかなければならないという、新しい時代に直面する中、自分の手で自分の未来を選択していいんだとわかれば、新しい未来がきっと開けてゆく……。それに挑戦し始めている人たちに、今回、たくさん出会いましたし、実現できる“息吹”を大勢の人たちの姿から感じました。
—— 未婚であるということも“当然”の社会。一人ひとりの選択の幅が広がっているんだから、それぞれが自分の選択に従い、人との出会いや自由を謳歌することができれば、必ずしも結婚に固執せずとも人は悠々自適に生きられるのかもしれないですね。本日はありがとうございました。
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