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経団連役員人事でも安倍政権にすり寄る「榊原カラー」は輝くか - 弱体化がますます進む榊原経団連の裏事情

経済ジャーナリスト 水月仁史=文

人材面でも弱体化が進む経団連の裏事情

経団連は、副会長らの役員人事で矢継ぎ早に新機軸を打ち出した。新任の副会長を東京ガス、三越伊勢丹ホールディングス(HD)の両社から初めて起用することを決めた。さらに、昨年初めて女性が就いた審議員会(会長の助言機関)の副議長に、今年も新たに女性を登用する。しかも、地方中堅企業出身という異色な人事だ。

6月で2期4年の任期を折り返す経団連の榊原定征会長は、役員人事に「榊原カラー」を打ち出し、政策提言力とその実現面で経団連の存在意義を高めたい意向だ。半面、伝統を崩す異例ともとれる副会長の人選には、人材面の弱体化が進んでいる経団連の事情もにじみ出る。

経団連は6月2日に開催する定時総会で選任する新任副会長に、東京ガスの岡本毅会長、三菱商事の小林健会長、三越伊勢丹HDの石塚邦雄会長、三井住友銀行の國部毅頭取の4氏を内定した。任期満了で副会長を退任するアサヒグループホールディングスの荻田伍相談役、東京海上日動火災保険の石原邦夫相談役の後任に充てる。同時に、経団連の副会長は昨年、それぞれ任期途中だった東芝の佐々木則夫前副会長が不正会計問題で辞任し、王子ホールディングスの篠田和久前会長は体調不良で退任(15年7月に死去)しており、欠員分も補う。これにより、「榊原経団連」を支える副会長陣は現在の14人が16人に戻る。

経団連の副会長ポストは、伝統的に「経団連銘柄」と呼ばれる役員を歴代輩出してきた中核企業が「指定席」としてきた。その意味で、小林、國部の両氏はそれぞれ指定席化してきた総合商社、大手銀行の出身で、既定路線といえる。ところが、岡本、石塚の両氏はともに出身企業からの初起用に加え、業界的にもガス、流通からの人選という点でも、近年にない異例の人選に映る。

地方創生、女性活躍社会の意向をくんだ人選

経団連の歴史をたどれば、公益事業代表は東京電力が圧倒的な存在で、会長、副会長を輩出してきた。しかし、2011年の福島第1原発事故で実質国有化された東電は活動から退き、同じ公益事業の東京ガスにポストが転がり込んだ格好だ。他方、流通業からはかつてダイエーの創業者である中内功氏、現在のセブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長が副会長を務めた時期があった。

その後は流通業界の担い手不足もあり、副会長ポストは途絶えてきた。その点で岡本、石塚の両氏の起用は異例に映る。榊原会長は両氏の起用を、安倍晋三政権が成長戦略に据えるインフラ輸出推進やインバウンド需要拡大にそれぞれ関連する業界出身だけに、その「発信力に期待する」と語る。安倍政権に擦り寄る榊原会長が、今回の副会長人事でその姿勢を一段と鮮明にしたとみるのが自然の流れだ。

それは、審議員会の新副議長人事にも端的に表れている。6月2日付で就任する6人の1人に、石川県の伝統工芸品・金沢箔製造の箔一(金沢市)の浅野邦子会長を選んだからだ。榊原会長は浅野氏を「地域産業活性化のまさに担い手」と評しており、地方創生、女性活躍社会の実現を掲げる安倍政権の意向をくんだ人選とみて間違いない。

経団連は戦後経済を支えてきた製造業中心の経済団体で、重厚長大型の中核企業に偏重した役員人事を貫いてきた。その点で、今回の異例、異色の役員人事は硬直化した活動の活性化を促すかもしれない。しかし、東電、東芝という中核企業が重要な役割を担えなくなるなど、人材面の弱体化が着実に経団連の基盤を蝕んでいる事実を打ち消すことはできない。そんな事情も今回の役員人事からは垣間見られる。

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