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スポーツ通じて考える 過ち犯した少年との向き合い方とは - 大元よしき  

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水府学院のラグビー講座

熱いエネルギーをスポーツで活かす“場”作り

 その言葉を受けて「栗原さんの意見と近いのですが、熱いことはマイナスではありません。彼らの熱くなるエネルギーをスポーツで活かす『場』作りとして、僕たちにまた今回のような機会をいただきたいと思います」と小浜が続けた。

 少年たちにとって栗原や小浜のような現役選手や若手OBは、一目で体格の違いや身体能力の違いがわかるため、努力の先に培われるものを体感させやすい。年齢が近いだけに目指すべきひとつのモデルとして目に映るはずである。
病床にあった上田も「もっと早く栗原に声を掛けておけばよかった」と筆者に漏らしていた。従来の講師陣に栗原や小浜が加わったことによって、これから少しずつでも、理解の輪が広がり若手の講師が増えることを期待している。

 ラグビー講座のあと、水府学院の亀井裕之次長は、「ここにいる子たちは家庭や環境に恵まれず、今まであまりスポーツを楽しんだという経験がありません。ですが、今日の彼らの表情を見ていると心の底からスポーツを楽しんでいることが見て取れました。少年たちが社会に戻っていくためには、地域社会の理解と協力が必要なことは言うまでもありません。そのためにも今後ますます外部の方たちとの連携が大切になってきます」と積極的に捉えていた。

過ちを犯した少年とどう向き合うか

 本稿を締めるにあたり、水府学院のラグビー講座を基礎作りから「タグラグビー交流マッチ」まで、けん引役として関わっている小沼公道(現高萩市教育長)氏と長谷川馨氏(鉾田市立野友小学校校長)が、以前に外部講師陣へのアドバイスとして伝えたことを記しておきたい。

 「彼らは大人たちの鏡です。我々が本気であれば彼らの素顔が見えるし、偽りがあれば、彼らもごまかしてくるでしょう。上手くやろうと思えば、彼らもそれに合わせてくる。我々は大人の本気と社会の誠を示すことです。講師の方たちは様々な知識や技能を持って社会で仕事をされていますが、彼らと向き合うには誠実であることが一番の資質です。だから、我々はまっすぐに行きましょう」というものだ。

 社会や大人への不信感のかたまりである彼らに対し、長年社会教育と学校教育に携わってきた二人の教育のエキスパートは、少年たちと向き合うには「誠実」であることが一番必要なことだと言う。その解釈を広げれば、非行少年や少年院に対する社会の向き合い方と受け止めることができる。

 今年も少年院の取り組みの理解を広げ、将来的に協力雇用主を増やす活動の一環として「タグラグビー交流マッチ」が6月3日に予定されている。こうした活動が他の地域や他の競技に広がって、理解の輪が広がることを願っている。それはこうした活動の一つひとつが再犯防止の一歩だと思えるからである。

 ぜひとも、昨年の「タグラグビー交流マッチ。本気で少年を更生させようとする大人たちが参加する社会教育」を、本稿とあわせてご一読いただきたい。

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大元よしき(たいげん・よしき)
ライター
1962年東京生まれ。外資系IT企業からライターに転身。スポーツのほか、歴史関連も執筆中。著書に『あの負けがあってこそ』、『命のバトン―自閉症児と個性派不登校児の教室』、『1万回の体当たり―タックルマン石塚武生 炎のメッセージ』(以上ウェッジ)、『一緒に見上げた空』(扶桑社)。

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