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スポーツ通じて考える 過ち犯した少年との向き合い方とは - 大元よしき  

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大元よしき (ライター)

警察庁の報道発表「平成27年中の少年非行情勢について」によれば、平成27年(2015年)中における刑法犯少年の検挙人員は3万8921人で、前年よりも9440人(19.5%)減少し、04年から12年連続で減少記録を更新している。人口比でも10年以降、6年連続で減り続けていると記されている。

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市原学園のタグラグビー講座でアタック&ディフェンスの指導を受ける参加者

 その中で15年の再犯者数は1万4155人で、前年より2733人(16.2%)減少し、04年以降、こちらも毎年確実に減り続けている。その一方で再犯者率は36.4%と、98年から18年連続で上昇しており、統計のある72年以降最も高い数値となった。これは初犯者数の減少に比べ再犯者の減少が小さいためで、検挙人員に占める再犯者の比率が高まっていることを示している。政府は犯罪を減らすためには、再犯の防止が極めて重要であるとして、「再犯防止に向けた総合対策」をとっている。

 法務省の統計によれば、有職者に比べ無職者の再犯率は著しく高く、再犯を防止するためには就労支援や雇用の確保が重要な課題であると記されている。こうしたことから、法務省は「更生保護における就労支援」に取り組んでいる。

 ただし、社会復帰のためには地域社会の協力や理解抜きには実現しない。以前、少年院の取り組みや収容されている少年を理解する活動の一つとして、「タグラグビー交流マッチ。本気で少年を更生させようとする大人たちが参加する社会教育」をご紹介したことがあった。これは昨年改訂された少年院法の骨子の中に「社会に開かれた施設運営の推進」とあるように、地域社会と連携した取り組みが成されるようになり、その一環として始まったスポーツを通した地域社会の理解者、支援者作りの活動である。

 各地域の少年院には、それぞれ実施している矯正教育課程があるので一概には言えないが、水府学院で行われている「タグラグビー交流マッチ」は、競技を変えるなどすれば他の施設でも容易に応用ができると思われる。

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市原学園にて指導中の土佐忠麿氏

 当然のことながら活動内容の検証は必要だが、再犯を抑止するためには、今後ますます少年院と地域社会が連携した取り組みが必要になってくると考えられる。様々な地域で、様々な取り組みが行われ、少年による再犯という社会にとっての不幸が減少することを願わずにはいられない。

平成12年から続く「市原学園」伝統のタグラグビー

 『ルポ・少年院の子どもたち』では、「スポーツ」をキーワードに少年院と矯正教育の取材を続けてきた。今回は「ラグビー」を活用した2つの少年院を取り上げたい。

 2016年2月19日(金)千葉県の少年院「市原学園」で行われているタグラグビーを取材した。この市原学園は、15年に施行(14年改正)された少年院法で、早期改善の可能性が高いと判断され『短期社会適応課程』の対象となる少年を収容する標準的な期間が6カ月以内の少年院である(市原学園の標準的な教育期間は20週間)。

 市原学園では00年から体育指導にタグラグビーを取り入れてきた。バレーボール、サッカー、水泳など、季節ごとに異なる競技を取り入れながら、社会復帰に向けて少年たちの心身を鍛錬している。しかし、担当する法務教官の異動に伴い、技術的な指導ができる教官が少なくなってしまったことから、少年向けの指導、および教官への指導を含めて今回ラグビーの専門家を招聘した。

 講師はYOKOHAMA TKMのチーフアドバイザー花岡伸明氏と明治大学ラグビー部コーチ(4月より朝日大学ラグビー部コーチ)の土佐忠麿氏の2名である。

 花岡は11~12年に茨城県の「水府学院」で指導に当たった経験を踏まえ、「対象が少年院の子たちだからといって、我々外部の講師が、ことさら構えるような姿勢を見せたり、特別視するようなことがあってはいけないし、何か特別な話を準備したりする必要はないと思っている。くだけ過ぎず、矯正施設という節度を守りながら、最大限タグラグビーが楽しめるような時間にしたいと考えている。ただし、タグラグビーとは言え、ラグビーを教える以上は本気でいくよ」と指導スタンスを筆者に語り、土佐とは事前にアイデアを出し合って、様々なケースに対応できるよう練習メニューを詰めていった。

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市原学園にて指導中の花岡伸明氏

 当日、講師の前に整列した少年たちの表情は硬かった。運動する楽しさよりも不安が勝っているようで態度もぎこちなかったが、ラグビーボールを使ったリレーゲームからは一転して盛り上がり、少年たちと講師間の距離が縮まった。

 入園時17歳以上、20歳未満(在園中に20歳になる少年もいる)という少年たちだが、その表情は同じような年代の若者たちよりも幼い印象を受ける。高校生の体育の授業といった雰囲気だ。

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