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延命治療制限を先送りする医療は継続不可能

新年度の診療報酬改定で1回で70枚を超える湿布の処方枚数が制限されることとなった。

精神治療の減薬加算(病院に減薬のインセンティブを与える)も含め、治療設計に経済効率が関与していく方向で医療体制が改定されている。

一見、医療者側はこのような方向性にいい顔をしないように思われるが、(経営的感覚の強い人は別として)現場ではそうでもない。

むしろ、医療費の適正配分に対する疑問、というかこれでやっていけるのか、継続可能なのか、という不安感、不透明感が蔓延しているように思える。

ズバリ、この問題(治療設計と経済効率、医療費の適正配分)の本丸は高齢者の死に方、延命治療の可否にある。
(もう一つのヤマは分子標的薬などの高価な薬剤の使い方の問題。)

4/2に医療専門サイトm3.comと週刊ダイヤモンドが実施した医師に対するアンケートの意見(アクセス制限あり)を紹介する。

・ねたきり、認知症患者への透析導入をやめる。

・後期高齢者に対する抗がん剤治療(緩和的処置を除く)や救命・延命治療(気管内挿管、人工呼吸管理、体外循環等)を保険給付外とする。

・社会活動への復帰見込みの小さい後期高齢者への過度の給付が行われないようにする制度設計は、裁判を回避できる仕組みと合わせて考えないと。

・生活保護者に対する医療の現物給付に関して5%程度の自己負担を求めるべき。

・死に対する教育を行わないと、今のままでは死を受け入れられない。(無闇に延命する。)

・患者の年金を家族が利用しており、年金受給などのために延命治療を要求する家族にどう対応するかが課題。

・開業の自由市場を制限する。(クリニックの乱立→アクセスの過剰と質の低下を回避)

・平均寿命を超えた患者の場合、定期健診、疼痛緩和、常識的保存療法以外は10%自己負担とする。


後期高齢者の死亡前入院費の調査分析(前田由美子 日本医師会総合政策研究機構2007)によれば、終末期の延命治療に要する費用は1日10万円を超える。また、亡くなるまでの平均額は一人当たり1000万強と言われる。

今後75歳以上の後期高齢者は著しく増加することが予想され、2025年には2000万人を超えるとみられる。

こんなこと(終末期に延命治療を施す)をやっているのは日本くらいなもので、例えばスウェーデンでは、終末期には輸液/経管栄養/昇圧剤/抗生剤/利尿剤/透析/バイタルサイン/飲水量調整は行わない。
使用する薬剤は鎮痛剤/制吐剤/解熱剤/精神安定剤だけ。
脱水や栄養不良は通常の老衰現象として捉えている。

日本の医療制度の設計の弱点は、医療の政策決定が現場の本音ではなく、(すべての国民に最高の医療を提供するという)理想と(そのための)業界団体の権限の調整がその少数の代表者によって厚労省講堂の低層棟2階会議室で決められるシステム自体にある。

在宅プロジェクトの強引な推進にしてもそうだが、昨今の医療行政には現場の声(本音)が届きにくく、理想とそれにマッチする情報だけが採り上げられているような危うさを感じる。

例えば、在宅プロジェクトの推進は家族モデル(あるいは地域共同体モデル)が前提で設計されているが、家族や地域社会が崩れつつある現状で、医療者が関与する範囲が構想内で機能するのか疑問に思わざるを得ない。

国民もこのあたり、「政府の言うとおりにしておけば老後は安泰」神話を信じていないのではないか、と思う。

そういった意味でもこの「死に方の問題」は根が深く、重要度も相当高いのではないだろうか。

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