- 2016年04月01日 21:22
東京と上海でUberを使ってみたら 日中両国の違いが浮き彫りに - 高田勝巳 (株式会社アクアビジネスコンサルティング代表)
先日、上海の虹橋空港から、東京の羽田空港に着いた際、グーグルマップで家までの電車のルートを検索したら、Uberの広告がでてきた。
初回半額だか30%引きとかあったので、都内の自宅まで定額を使えばお得と思い、入管を通り、荷物を受け取るまでの間にネットで利用登録し申し込んだら、ほぼ待つことなく羽田空港国際線のハイヤー乗車口に黒塗りのクラウンハイブリッドが迎えに来てくれた。
どういうことかよくわからず乗り込んだら、車はUberが都内のハイヤー会社から借り受けて運行する緑ナンバーの車両であった。
本国米国では、自家用車を相乗りすることから始まったUberであると思うが、日本では、さすが、それでは白タクとなってしまうので、コンプライアンス経営をしているわけである。
運転手の対応は全くハイヤーのそれで丁寧でそつのない快適なものであった。料金はほぼタクシーよりやや高い程度で、距離によってはタクシーより安くなることもあるとのこと。
空港定額の料金は、タクシー会社のものよりやや高いレベルのようだ。大事なお客さんを案内する際には使い勝手がいいと感じた。東京で、中国からの大事なお客様を案内するときは、車両とサービスがハイヤー並みのMKを使うことが多いが、時間帯によってはとりにくいこともあるので、そのようなときにはいいかもしれない。
その運転手によると、中国でも使えるというので、その後、上海に戻った帰りに早速、虹橋空港で使ってみた。
虹橋空港もタクシー乗り場は結構長い時間並ぶことが多いし、上海のタクシーは最近随分よくなったとはいえ、まだまだ70年代のVWサンタナベースの車が多く、車内も汚い車両が多い。雨の日は窓が曇るというので、なぜか、冬でもエアコン(ヒーター?)をつけながら窓を開けられて寒い思いもする。
運転手の対応は、さすがに上海では遠回りされた経験はないものの、運転手によって差が大きい。先日、虹橋空港から乗った際は、私の家が空港の近くなので嫌がったのか、空港をでたら直ぐに多くの車が順番待ちをしているガソリンスタンドに入られてしまい、客を届けてからガソリンを入れろと文句をいったら、お金は取らないから他の車に乗ってくれと無視してガソリンスタンドに入られてしまった。私は急いでいたので仕方なく降りて他のタクシーをなんとか探して乗り込んだ次第。
中国でもUberを使ってみたら……
一方中国のUberはどうであろうか?
虹橋空港で荷物を待っている間にネットで呼ぶと、空港を出たところで待っていてくれた。
車は、上海汽車が買収したイギリスのローバーベースの車で、栄威という車。車内はそれほど広くないが、掃除が行き届き、内装も革張りでなかなか豪華な感じ。私が最近乗車した範囲では、他に中国メーカーのBYDのSUV、GMのビュイックリーガルもあった。
その他、Uber Blackといって、相乗りを前提としない、アウディーのA6やトヨタのカムリ以上の車格の車と、ビュイックのワゴン程度の7人乗りのワゴンも指定できるが、今回乗った栄威は、相乗りがベースで、同じ方向で途中乗る人がいれば、相乗りになるが、その場合は、価格がタクシーよりも相当安くなる。
今回は自宅まで距離が短いので、相乗りにはならなかったが、先日自宅から浦東の友人宅に行った際は、帰りに私以外に2人が相乗りになった。運賃は通常の半額近くであったと記憶している。相乗りしない場合は、概ねタクシーと同じイメージだ。
面白いのは、Uber Blackの車が豪華なこと。アウディーA6のほか、BMWの5シリーズ、ベンツのEは序の口で、この前は、電気自動車のTESLAが来たから驚いた(知人によると、先日、北京で利用したらなぜかポルシェ911が来たという話も聞いた)。こういう高級車の場合は、個人というより、リース会社(中国のリース会社は法定上グレーだが運転手付きでリースすることが多い)が車が空いている時に回したり、企業の社用車の運転手がボスが出張しているときにお小遣い稼ぎしていることもあるようだ。
意外と便利な中国Uber
私にとって、楽なのは、日本で登録したクレジットカードで決済できるので、着いたら車を降りるだけという利便性だ。中国では、通常のタクシーを対象としたネット決済できるタクシー会社サービスもあるが、なぜか登録が全て中国の身分証明書番号でなされるため、外国人は中国国内の銀行に口座を持っていても登録できず、現金で払うしかなく、現金決済ができないサービスは利用もできない。
また、こうしたサービスは配車の際、運転手が受託する前に行き先が表示されるので、行き先が近くであると車があっても受託しないケースや、サービスによっては、ネット上でチップを提示することもできるので、混んでいるときはチップをいれないと運転手がこないという問題がある。また、行き先へのルートは、全てネット上で最短ルートが明示されるので、道に詳しくない地方にいっても遠回りされる恐れはない。
今回、運転手から聴取した範囲では、Uberの場合は運転手に場所が示されないし、システムが強制的に近くにいる車を配車するので、運転手は行き先を選べず、ユーザーにとってはありがたいシステムだ。また、運転手の態度もこれまで5、6回乗った範囲では全て良かった。進んでトランクの荷物を降ろしてくれる。普通のタクシーでは手伝ってくれない場合が多い。
今回、空港から乗った運転手は多分30歳前後、自分でこの車を買って、これ専門でやっているそうだ。月収はガソリン代などを抜いた手取りベースで1万元というから悪くはない。大卒給与の倍くらいのイメージか。
また、米国と同様に普通のドライバーが気が向いたときに同乗者を探したり、月に何日かだけアルバイト感覚でやる場合もあるそうだ。月に10回以上受託するとボーナスが出るとのこと。
摘発の恐れも……
ただリスクもある。たまに白タクとして警察に捕まるそうだ。空港の出口で警察が張っており、運転手と乗客から個別に話を聞いてUberとわかると2万元(40万円近く)の罰金。でも、この罰金はUberが全額払ってくれるそうだ。問題は、車を2週間拘束されること。この間は車を使えなくなる。それでも、Uberがワークしているのは、おそらく摘発の頻度が高くないからであろう。
ユーザーにとっては、利便性を考えれば、Uberの方がよっぽど使い勝手がいい、ということは、逆にタクシー会社にとっては脅威であろう。当局もタクシー会社からのクレームにより、取り締まりをしているポーズをしているのかもしれない。
一方でUberのサービスを許可しておいて、一方で取り締まりを行うという、矛盾を容認するところが中国らしくて面白い。こういう事例はいくらでもある。やや話が飛躍しすぎかもしれないが、社会主義と市場経済、非透明性、非公平性と市場が併存する株式市場、国際化を進めながら自由兌換は頑なに拒否する人民元取引などなど。
こうした矛盾を共存させるやり方は、 鄧小平の改革開放から多く見られる。それまでの計画経済に市場経済を取り入れる外資を導入する、改革開放を始めるにあたって、矛盾はあっても、「問題が起きれば、やめたらいい」というノリで始めた結果が現在の中国経済の台頭だ。矛盾ゆえの歪みを蓄積し、ときにその歪みが暴発するが、それでもどこかで調整して発展を続けてきた中国。
Uber取り締まりにみる日中の違い
一方、日本は、制度の整合性を重視するので、始めるまでに時間はかかるが、一旦運用が始まれば多くはトラブルがなく、安定稼働がしやすくなる。その反面、経済成長は犠牲にしている部分もあるのかもしれない。老子の言葉に、「水清ければ魚棲まず」といった意味の言葉があるが、中国はまさにこのカオスを受入れることで魚が住む環境を保っているといえよう。こうした日本と中国のいいところがうまく融合できたらどれほどいいかと思う次第。
それでは、中国は、法的に見てグレーまたはブラックとも言えるUberをなぜ受け入れているのか、私が推察した結果は以下の通り。
⒈ユーザーの利便性、相乗りというエコの観点からみればメリット大で、人民の生活の利便性に寄与することができる。
⒉これまで国有中心の保護産業であったタクシー業界に競争原理をもたらし、サービスの向上を促すことができる。
⒊これは、うがった見方かもしれないが、Uberに投資する国際金融資本と中国政府の間でなんらかのディールが成り立っている。
いずれにせよ、現段階は試験運用と言える段階で、今後少しずつ法制面でも整合性を取っていくものと思われる。ユーザーとしては、これからも是非サービスを拡大させていってもらいたいと思う次第である。
コンプライアンス経営にも温度差
一方、外国から中国への投資という観点では、Uberが上記のように法的にはグレーまたはブラックとも言える状況でも中国に投資し、実際に運営を続けている点に、私は興味がある。
日本企業であれば、コンプライアンス違反として踏み込めない領域だと思うのであるが、Uberはコンプライアンス上どのような理論構成で投資を継続しているのか。
もともと、米国から始まったグローバル経済、ネイブ統制、コンプライアンス経営のはずであるが、本家本元の米国と暖簾分けを受けた日本ではその運用に温度差があるといつも感じている。
リスクマネーとして投資家も納得していれば、そのような投資が許容されるのか、おそらく日本ではそういうことではないのだと思う。日本は日本、なんでも米国の真似をする必要はないのであるが、日本のグローバルビジネスのポジショニングとして今一度見直しておきたいポイントと考えている。
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