- 2016年04月01日 11:00
東京五輪エンブレム選定は、とにかく丁寧さ・透明性重視
エンブレム選定は4月末に
桜の満開と同様、ようやく2020年東京五輪・パラリンピックの新しいエンブレムの最終候補作品が公表されることになりそうだ。白紙撤回から7カ月。3月28日の月曜日。大会組織委員会・エンブレム委員会の宮田亮平委員長(東京芸大学長)はのんびりした口調でこう、漏らした。
画像を見る東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 公式サイトより
「ちょっとここにきて寒くなったものだから、桜がねえ、咲く時期が少しずれたんで、半分ホッとしているのと、半分“こりゃ大変だな”“もうちょっとがんばらなきゃ”というのが、両方入り混じっております」
昨年12月、仕切り直しのエンブレムの公募には、約1万5000点もの作品が集まった。エンブレム委員会で選考を重ねて最終候補4作品に絞り込み、現在、国内外の商標調査が実施されている。これほど慎重なのはもちろん、前回の反省を踏まえ、「不適切な選定」といった批判や「盗作」「模倣」の疑念を避けるためである。
商標調査の進捗具合を知っているからだろう、エンブレム委員会は最終候補作品を4月8日の金曜日をめどに公開し、4月末の最終審査で新しいエンブレムを選ぶことを決めた。宮田委員長はこう、説明した。
「複数の候補作品を公表した後、国民のみなさまから意見をいただく“国民参画”を実施した上で、エンブレム委員会による最終審査を行います」
これまた、専門家だけで閉鎖的だった前回選定の反省を踏まえ、公表して意見を集めるのは、多くの人に参画してもらい、納得してもらうためである。「多くの人に愛される五輪エンブレム」とはいえ、国民全員の支持を受けることなどあり得ない。むしろ、公表の狙いは、決定の前にウェブ世論で「先行する作品に似ているものがあるかどうか」のチェックをしておくことではないか。
シンプルなデザインと明確なコンセプト
最終候補の作品を公開し、1週間~10日間程度、国民からの意見をはがきや電子メールで募集したあと、エンブレム委員にそれらの意見を開示し、4月末に予定する最終審査の参考にしてもらう方針。
最終審査での議論と投票は非公開で実施される。投票は、21人の委員による記名投票で、1つの作品が過半数を超えるまで続けられる。つまり、1回の投票で全ての作品が過半数を超えなかった場合は、最下位の作品を除き、残りの作品に対して再度投票を行い、過半数を超える作品が出るまで繰り返される。いわば、国際オリンピック委員会(IOC)によるオリンピック大会開催都市の選定の際の投票と同じ方式である。
ただIOC委員は約100人、エンブレム委員は21人である。「なぜ、そういった投票方法なのですか? 理由は?」と問われれば、宮田委員長は「理由!」と発して、言葉を失った。代わりに組織委スタッフが説明する。
「そこのところはエンブレム委員会で決めたことです。委員長以下、丁寧にきちんとやろう、一発で決めるのではなく、丁寧に決めようということです」
要は、「丁寧に」、そして「透明性のあるプロセス」を踏みたいということだろう。ならば、議論や投票過程も公開にしてもらいたいところだが、「委員の間で忌憚なく、意見交換をしたいから」ということである。
いずれにしろ、五輪エンブレムは、50年先、100年先にも残る大会のシンボルとなるものだ。「日の丸」と「太陽」を連想させる1964年東京五輪のエンブレムのごとく、長く人々に愛されるためには、シンプルなデザインだけでなく、明確なコンセプトや理念が込められていなければならない。選定するエンブレム委員会には、その点のアカウンタビリティ(説明責任)も求められることになる。
松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)など多数。2015年4月より、早稲田大学大学院修士課程に在学中。リンク先を見る『一流コーチのコトバ 』(プレジデント社)
[著]松瀬 学
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