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破壊的イノベーションの真の推進者 - 森山祐樹(中小企業診断士)

昨今の日本経済、政府・地方自治体、企業においてイノベーションが叫ばれて久しい。日本全体としてそれを後押ししていくことで、経済や社会の発展を成し遂げていこうという気運が高まっている。しかしながら、世に出るイノベーションには、歓迎されるものがある一方で、既存業界はもちろんのこと、後押しをしているはずの国や地方自治体からの抵抗に合うケースも存在する。これらは破壊的イノベーションとも呼ばれ、業界に大きな波紋を呼んでいる。

最近の例では、「みんれび」が提供し、アマゾンで販売している「お坊さん便」、ライドシェアサービスの「ウーバー」、観光立国推進によりその存在感を増す「民泊」などがある。これらは既存業界のみならず、政府や法までも巻き込んだイノベーションを作り上げている。

■日本宗教界の破壊的イノベーション 「お坊さん便」

「みんれび」が提供するお坊さん便は、都会などで寺やお坊さんとのつながりが希薄となった層が、手軽で低価格でその地域に疎い者であっても利用できるサービスである。しかしながら、このサービスに対し、全日本仏教会は猛反発し、抗議文を提出するに至った。

このサービスが多くのメディアで取り上げられ、利用者の支持を得ているのは、現代の日本人が求める本質(家族構成や社会の発展による宗教・寺とのつながりの希薄化、葬儀の多様性、世間体、信仰心ではなく儀式としてのお坊さん等)に応えるものであり、消費者ニーズの変化である。全日本仏教界が考える既存の宗教行為とは異なる面があるのではないだろうか。そもそも、これらのニーズは仏教会が抱えていた既存市場ではなく、利用したくてもこれまではできなかった層を取り込んだいわば新規市場である。そこに加えて、これまでの宗教行為に不満を持っていた層がそのニーズを満たすために流出したと考えられる。

一方、お坊さん側にもニーズがあり、檀家の減少に伴い収入が減少傾向にあるお坊さんには手軽に新規顧客を開拓でき、仕事をもらえる手段として両者の求めていたものをマッチングさせた商品であった。これは現代のライフスタイルやニーズに対応するために生まれたサービスであり、いわば必然のものであったと言える。

■ライドシェアリング

 その他、ライドシェアリングで全世界に大きな波紋を呼んだウーバーは、日本においても例に洩れずタクシー業界からの猛反発があり、最後には国土交通省が待ったをかけたものの、その有用性や期待度は疑いようがない。また、ライドシェアは単なる都市部のビジネスとしてのみならず、このビジネスモデルを活用することにより、地方の過疎化地域等の既存交通インフラ(電車や路線バス)にかわる低コストの解決策を生み出す将来性をも秘めている。

■民泊

 民泊についても同様である。観光立国を目指して、外国人誘致を図った結果、国内の宿泊施設が不足し、シェアリングエコノミーの考え方とそのニーズから生まれた新しいビジネスモデルである。これについても、既存のホテル・旅館業界は猛反発をしているが、京王電鉄が民泊の予約仲介サイト運営会社に出資する等、既存業界との軋轢を承知で民泊を支援する動きが活発化してきている。また、行政側も昨今の宿泊施設不足を背景に、民泊を進めるための体制作りを急ぎつつある。

■破壊的イノベーションの証明

 お坊さん便、ウーバー、民泊などに見られるように、既存企業・業界をはじめとする利害関係者からの反発は破壊的イノベーションの特徴でもある。(既存企業が破壊される可能性を当初は認識せずに破壊が進むイノベーションも存在する)むしろ、反発をされるほど既存業界は危機感を持っているということであり、その破壊可能性の大きさを証明するバロメーターにもなろう。

これらの破壊的イノベーションを生み出す企業の裏には、既存業界や行政との軋轢が生まれることは十二分に理解しながらも、これらの企業・サービスを支援し続ける投資家が存在する。例えば、ウーバーは各国でタクシー業界からの反発を生んではいるものの、グーグルやゴールドマンサックスなどの投資家から資金を集め続け、同社が起業から5年間で調達した資金は借入と株式発行を合わせて50億ドルを超える。また、お坊さん便を提供するみんれびは、国内においてグローバルブレイン、三井住友海上キャピタル、SMBCベンチャーキャピタルからの資金調達を受け、販路としてはアマゾンが大きな支援をしている。

これら破壊的イノベーションを提供する企業の投資家や協力者は、様々な規制の壁や既存業界からの反発や衝突を理解しつつも、既存業界を敵に回してでもこのサービスには価値があるという判断を下している。そして、なお彼らに軍資金を与え続けることで、その破壊的イノベーションが規制の壁を破り、既存業界の反発を撥ね退け、その業界に大きな風穴を開けるため、思う存分に戦うことを投資家自身が強く望んでいるのである。

【参考記事】
■ポルシェの拡大戦略に潜む罠とは(森山祐樹 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/47952351-20160229.html
■日本企業のM&A「対等の精神」に潜む影 「ファミマとユニーの経営統合」(森山祐樹 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/47656741-20160129.html
■フェラーリの戦略にみる企業価値経営(森山祐樹 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/47203706-20151215.html
■地方創生時代に輝く地方企業の挑戦と秀逸な競争戦略(森山祐樹 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/46572214-20151014.html
■ブルーボトルコーヒーに見る戦略ストーリー「人気のブルーボトルコーヒーは何を捨てたのか!?」(森山祐樹 中小企業診断士)
http://sharescafe.net/45855247-20150808.html

森山祐樹

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