記事

「トイレは毎回、流しません!」政治家の居住実態、その判定根拠ってなに? - 選挙ドットコム編集部

フィリピンではアキノ現大統領の任期満了に伴い、2016年5月に大統領選挙が実施されます。2月9日には、各候補者による選挙戦がスタートしましたが、出だしから波乱含みの展開です。

同日の朝日新聞(http://www.asahi.com/articles/ASJ293DMTJ29UHBI00R.html)には、「有力女性候補者の住民票が国内になく立候補できない」との記事が掲載されました。選挙管理委員会から待ったをかけられた女性候補は、昨年12月に異議を申し立て、現在は最高裁で審議されているということです。

日本では似たような事例はあるのでしょうか。今回は、「立候補者の住民票問題」について調べてみました。

当選無効も! 立候補者を待ち受ける思わぬ落とし穴とは

ニュースでも度々取り上げられますが、地方議員が立候補する地域に住民票を移して当選した後、「居住実態がない」と判断され「当選取り消し」になった例が複数ありました

市区町村議会に立候補する場合、選挙をする際のルールを定めた「公職選挙法」では「日本国民で満25歳以上で、その市区町村議会議員の選挙権を持っていること。引き続き3カ月以上、その市区町村に住所のある者」とあります。

これをそのまま読むと、3カ月前にひとまず住民票を移すだけでも、手続き上は問題はなさそうです。しかし実際には、当選者が「無効」と判断される事態が相次いでいます。なぜでしょうか。

※参照:総務省|選挙権と被選挙権 http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo02.html

実際に「当選無効」となった例。国内では…

具体的に見ていきましょう。

「当選無効」と判断されて話題となったのは、新座市議会議員だった立川明日香氏と、狭山市議会議員の須藤梓氏です。

立川氏は、12年2月19日の埼玉県新座市議選で初当選し「美人すぎる市議」として、その華やかな経歴とともに注目されました。しかし2カ月後、「転入届した住所の水光熱費がほとんどない」ことで「居住実態がない」と判断され当選無効になりました。

立川氏はこれを不服とし、県選管に申し立てをするものの棄却され、東京高裁に提訴。しかし、12月になってこれを取り下げ、失職しました

記者会見で「トイレは毎回、流しません」と釈明したことも話題となりました。

須藤氏は、15年4月26日に実施された「統一地方選挙」の狭山市議選で初当選。しかし、その後の調査で、物件の鍵を受け取って住み始めたのが同年1月31日だということが判明しました。投票日までの居住期間が3カ月を切っています。また、水道使用量はゼロ、ガス・電気の契約が同年2月下旬であったことも明らかになり、市選管は「生活拠点を移したとはいえない」「居住実態がない」と判断し、当選無効としました。

須藤氏はこれを不服として、県選管に対して申し立ての意向を示した際、「同市に転入届を出した1月20日以降、旅行中を除いて狭山市内で寝泊まりしていた」と説明しました。しかし、この申し立ては棄却され、約2カ月後に失職しました。

このとき、県の選管は「申立人の生活の本拠であったことを客観的に示す事実は認められない」との文書を、埼玉県のHP(http://www.pref.saitama.lg.jp/a0001/news/page/140904-11.html)に公開しました。

「当選無効」の取り消しを求めて裁判で争っていたのが、横浜市議会議員の中山まゆみ氏です。中山氏は15年4月の横浜市議選で初当選しましたが、「住民票を移した場所の水光熱の使用がわずかで、夫と子どもがいる都内の旧住居にたびたび戻り、選挙区での生活実態は30日程度で居住実態がない」とされ、当選無効になりました。これを受けて、中山氏は東京高裁に提訴しましたが、今年1月28日、高裁が「生活実態はなかった」と結論付け、中山氏の請求を棄却しました。2月11日の神奈川新聞(http://www.kanaloco.jp/article/151812)によると、中山氏はこれを不服として最高裁判所に上告しています。

住民票を移動しても、光熱費が動いていないと、実際は住んでいない?

この他にも、全国各地で複数名の議員が「当選無効」とされ失職したり、現在も係争中だったりしています。なぜそうなってしまったのか。選管が指摘したポイントを調べてみました。

・住民票を移動しただけで暮らしていない
・居住地とされた場所の水光熱費がまったくないか、ほとんどない
・住民票の場所に家や部屋があっても住んでおらず、別の場所から通っている
・転入届を出した日に居住地が決まっておらず、知人、友人宅に居候していた
・家族は別の場所に住んでいるのに、立候補者本人の住民票だけを移動している
・銀行口座の出金場所が選挙区以外に集中している

過去に最高裁が「その者の住所とする意思だけでは足りず、客観的に生活の本拠たる実体を必要とするものと解すべき」との判断を出していました。

要約すると「ただ単に住所を移すだけではダメで、実際に生活していること。『住所』というのは、生活の本拠地のことだよ」ということです。

こうした判例もあり、「水光熱費」は「実際に生活しているかどうか」の根拠とされているようです。そうなると、例えば地方議員が長期旅行に出かけている場合、水光熱費を生活実態の根拠にできるのでしょうか? 過去の事例を調べてみましたが、具体例を見つけることはできませんでした。

候補者の「居住実態」は、なぜ問題になるの?

ネット上では、「3カ月しか住んでいないのに?」や「期間は関係ないのでは?」「当選を取り消すのは民意の抹殺になる」「どこに住んでいてもいいじゃない」など、さまざまな意見があります。なぜここまで「候補者の居住実態」が問題視されるのでしょうか。

そもそも、「3カ月以上、市町村の区域内に住所を有する者」という規定があるのは、市区町村議員選挙だけです。それは「地域密着型」で、「地域の一員として活動する」ことを前提にしているため、地域の実情をきちんと知っている必要があるためです。地域の一員となるための最低条件として「3カ月以上の居住」という要件が設定されているのです。

一連の問題で「当選無効」とされた議員側にも言い分はあるでしょうが、公選法で定められたルールがあり、争点となっている「居住実態」の解釈については裁判所の判断も示されています。法律を守り、地域のための政治をして欲しいものです。

画像を見る

選挙ドットコム編集部

選挙をもっとオモシロク” 選挙・政治分野における情報公開やITの活用を促進し、国民の関心を高めることで戦後最高の投票率を更新することを目指しています。

Twitter : https://twitter.com/go2senkyo

Webサイト : http://go2senkyo.com/

あわせて読みたい

「公職選挙法」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    Apple製品にも影響?LGの大量廃棄

    tenten99

  2. 2

    告白も投資もしない現代の日本人

    島村優

  3. 3

    評判の結合映画 おっぱいに注目

    松田健次

  4. 4

    桜を見る会は血税による巨大買収

    田中龍作

  5. 5

    SNS話題「養育費2億円」嘘だった

    BLOGOS しらべる部

  6. 6

    ホテルでWiFiが不調な時の対処法

    かさこ

  7. 7

    背景を追わぬマスコミの薬物報道

    BLOGOS しらべる部

  8. 8

    来年の確定申告で不要な書類2つ

    韋駄天太助

  9. 9

    桜を見る会への指摘は揚げ足取り

    鈴木宗男

  10. 10

    YouTubeが足切りへ 衰退は必至か

    諌山裕

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。