- 2016年03月30日 07:15
「朝9時に出社」って実は楽?──働き方を選べる環境が、社員にとって優しくない理由
2/2できる仕事=育休後に戻れる場所を増やしておく
画像を見る育休について伺いたいです。育休を取っている間、その人の仕事をだれかほかの人が埋めなきゃいけないですよね。そうすると、育休を取った人が職場に戻ってきたとき、仕事があるんでしょうか?
画像を見るいまのご質問は、ポイントが2つあると思います。
まず、ある人が育休をとったとき、その人がやっていた仕事を、ほかの人がやらないといけないのかどうか? 実は、そこからわからない。
たとえば、ドイツの人はけっこう長く育児のために休みを取るそうなんですね。「その人がいない間、その人の仕事は誰がやるんですか?」と僕が聞いたら、「それは(ほかの人には)できませんよ」と答えるんです。
日本人だったら、「えぇっ? ふつう誰かカバーするでしょ」と思うんですけれど、「だって休みに入ってるんだから、しょうがないでしょ」と(笑)。それはカルチャーショックでしたね。日本だったら、怒られそうな話ですよ。
つまり彼らは、「必ずしも(ほかの人がそれを)やる必要がない」と考えているんですね。そこで「必ず」やろうとすると、相当負担が大きい。その負担を負ってまで本当にやる必要があるのか? そこは1度、疑ったほうがいい。
そうですね。
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もうひとつ「戻ってくる場所があるのか」と、これはけっこう大事な問題ですね。誰かほかに、その人の仕事をやってくれる人ができたとする。そうすると、戻ってきた人がもしその仕事しかできないと、やる仕事がないわけですよね。
なので、大事なのは「2つ以上の仕事ができるようにしておくこと」。産休に入りそうな人は、早めに2つ以上のキャリアを経験していただくということを、いま人事のひとつの方針としています。そうすると仕事の幅が広がって、育休のあとに戻れる場所の可能性が増えるんですよね。
戻ってきてから新しい仕事を始めるのだと、子育てで大変な時期に余計負担がかかるので、早めにいろいろな仕事を経験してもらっておくようにしています。
「真剣」になれることは探し続けなければならない
画像を見る講演で「真剣」ということについて、お話されていました。青野さんのように「真剣になれること」を見つけられる人ばかりでなく、一生見つけられない人も多いと思うんですが、何が違うんでしょう?
画像を見る僕は1度会社の業績を悪化させて、社長をやめようと思ったことがあるんですけど、そのときに松下幸之助さんの本にあった「本気になって真剣に志を立てよう」という言葉を読んで、すごい衝撃を受けたんです。「真剣」って、「真(まこと)」の「剣(つるぎ)」ですからね。
つまり「命をかける」ってことです。自分は、そこまでの思いで仕事をしてきたか? と考えてみたら、全然そんなことはなかった。
だから、これからは命をかけて仕事をしようと思って、命をかけられるものは何かと考えた。そこで「世界一のグループウェアを作る」ということに行き着いたんですね。
でも、まだやっぱり探しているんですよ。状況は変わっていくので、ずっと探している。
去年の今ごろ、僕けっこう悩んでいたんです。先のことが見えちゃって、めっちゃ落ち込んでいた。そこからまた真剣になれるものを探そうと思って、情報発信を始めたら、社会を動かせる実感が湧いてきて、「あ、これだったら、僕はまた真剣になれそうだ」と思えた。
こういうのを、一生繰り返していくと思うんですね。
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最初から「一生真剣になれるもの」を探そうと思ったら、それは大変だと思うんですよ。だから「5分真剣になれること」を探す。
人生ってしょせん、5分の積み重ねなんですね。5分を積み重ねている間に、もしかしたら1時間ぐらいは真剣になれるかもしれない。1年、いや3年は真剣になれるかもしれない。それが長くなれば、人生ずっとこれで真剣になれるのかもしれない。
そういうのが、だんだん見つかっていくのかな、と思いますけどね。それは、探し続けないと、なかなか難しいですよね。ずっと自問自答をしていないといけない。
それが見つかると、ある意味「覚悟ができる」んですね。「僕は今、なにをするべきだろうか? よし、世界中でチームワークにあふれる社会を作るためには、これはやった方がいい、たぶんこれはやらないほうがいい」っていうふうに、常に、自分の判断軸ができるんです。
教員の工藤と申します。平の社員をチームリーダーなどの役職に任命すると、意識が変わりますよね。地位が上になったら、自動的に真剣にならざるを得ない。そういう意味で「ポジションが人を作る」と僕は思っているんですが、それと同じではないですか? ご自身の経験から、いかがでしょうか?
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僕、大企業の社長がいかに真剣じゃないかを見てきたんですよ(一同笑)。役職が人を作るときもありますけど、作らないときの方が多いですかね。
逆に、役職にかかわらず真剣な人もたくさん見てきました。
ただ、真剣な人の周りに人は集まってくるので、そういう人がリーダーになっていくケースは多いと思います。たとえば駒崎さん(NPO法人フローレンス代表)みたいな人の周りには、「なんとか助けよう」と人が集まって来る。そういう人がリーダーになりやすい。
でも、社長になったら真剣になるかっていうと、相当怪しいですね(笑)。
「選択」できることが「責任」につながる
画像を見る坂根シルックさん。東京農工大学リーディング大学院特任准教授。文化人タレント、フィンランド語翻訳家・通訳。シルックさんがサイボウズのワークスタイルムービー「大丈夫」をテレビ番組で紹介したことから青野さんと交流が生まれた。
画像を見るあっという間に時間が過ぎました。最後に、今回のお話をうかがってわたしが思ったことをお話させてください。
私も以前、ノキアというグローバル企業で働いていました。ノキア社ももともとは紙を作る会社でしたが、その後、長靴を作ったりして、いろいろな事業をやった。そこからサイボウズさんと同じように、「通信で行こう」とビジョンをひとつに絞って決めたところから、成長していったんです。
だからやっぱり「これをやっていこう」とビジョンを絞った、青野社長の熱い気持ちが成果を生んでいるんだろうな、というのはすごく思いました。
もうひとつ、「選択できることは、責任につながる」ということ。そこは本当に、これから若い人たちが自分でやりたいと思ったことに責任を持ってやっていくうえで、大事なことです。青野社長の素晴らしい経験を聞けたことは、きっとみんな今後の役に立つと思います。
どうもありがとうございました。
文:大塚玲子/写真:尾木 司



