- 2016年03月29日 06:07
【台湾メーカーの危機感】
台湾メーカーのホンハイ精密工業のシャープ買収について、久々にThe Economistで記事を発見。このままではテクノロジーの世界で出遅れてしまうという台湾側の危機感という視点で書いていて、おもしろいです。危機感の矛先は中国です。
中国のサプライチェーンのことを"red supply chain"と呼ぶんですね。数年前、台湾で開発して安い労働力の中国で製造するビジネスモデルがチャイワン(チャイナ+台湾の造語)と言われていましたが、そうした蜜月関係は終わりを告げているようです。
Taiwan2.0- The island’s electronics firms are in need of an upgrade(台湾バージョン 2.0~台湾のエレクトロニクス企業はアップグレードが必要だ)は、ざっくりこんな内容です(全文の翻訳ではありません)。
台湾のホンハイによる赤字企業のシャープの買収は、日本が外資にどれだけ開かれているかを図る試験として注意深く見られている。一方で、台湾でもこの買収は注視されている。
仮に合意がまとまり、ホンハイの郭台銘(Terry Gou)会長がシャープのブランドや技術力を取り込むことができれば、最大顧客のアップルなどに、より幅広い部品を提供することができるようになる。
さらに、ホンハイは消費者に革新的な商品を届けるメーカーに転換するかもしれない。台湾のエコノミストは、グローバル展開を目指す台湾企業のモデルになる可能性があると言う。
台湾の輸出のうち、電機が占めるのはあわせて40%にのぼり、台湾のGDPの 15%を占める。台湾の電機メーカーは過去20年以上、西側に向けてコンピューターなどを組み立てることで大いに成功してきた。
当初、こうした工場はすべて台湾にあったが、中国の開放路線に従っていつかの拠点は中国本土に移転。台湾の生産ノウハウと中国の安い労働力の組み合わせは、一人勝ちの様相だった。
しかし、ここにきて、中台の協力関係に変化が出ている。台湾企業は、本土のライバル=赤いサプライチェーン(red supply chain)が追いつきつつあると恐れているのだ。
台湾の TSMCなどの半導体メーカーはこれまでのところ、強固だ。しかし、Innolux(ホンハイの傘下)やAU Optoelectronicsといった台湾の液晶メーカーは、中国のBOEやChina Star Optoelectronicsなどの脅威にさらされている。
ことし 2月の台湾の貿易統計によると、輸出全体は対前年同月比で12%減ったところ、液晶パネルなどの輸出は34%急落した。
中国市場に依存する国や地域は多いが、中国メーカーが自前で製造できるようになるともっとも打撃を受けるのが台湾だ、と専門家は見る。韓国による中国への依存度も高いが、それでも自動車や化粧品など輸出製品は幅広い。
イノベーションの度合いは異なる。ホンハイは、シャープの有機EL技術に着目していて、衰退しているシャープを取り込み、技術開発のために投資をするだけの体力がある。
同様に韓国のサムソンも国際的な競争を維持するだけの研究開発やマーケティングを続ける資金がある。しかし、多くの台湾企業は、小規模で他の企業のサプライチェーンの一部に過ぎない。
自らのブランドで製品を売れるようになれば、より高い利益を稼げる。ただ、過去の経験から、名の知られた納入先のライバルになることから、難しい。例えば台湾のHTCや Asusは、スマホやパソコンを自社ブランドで生産したものの、部品を納入している大手メーカーからそっぽを向かれてしまった。
ホンハイがシャープブランドで利益を得ようと乗り出すには、既存の大手メーカーの逆鱗に触れない製品に限られるだろうと予想するのは台湾の専門家。
短期的には、アップルなどのブランドのある大手メーカーに、これまで以上に幅広い部品を納入できることを優先すると見られる。その結果、アップルとのバーゲニングパワーが増すというわけだ。専門家は、アップルにしてみれば、スマホのライバルのサムスンからは有機ELは買わないだろうと見ている。
台湾の次期総統の蔡英文氏は、「効率重視の経済からイノベーション重視の経済への転換」を公約している。蔡英文氏は、中国への依存度を引き下げてアメリカや日本とのテクノロジーでの結び付きの強化を目指している。
問題は、どのようにそれを実現するのか。今の政権は、IoT、3Dプリンター、バイオテクノロジー、再生可能エネルギーに力を入れるよう促してきた。明るい材料もあるが、簡単な解決策はない。その間、中国本土のライバルたちは、巨大な市場と政府による多額の投資をバックにさらに繁栄することだろう。



