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イランの“変化”は本物なのか 議会選挙では穏健派躍進も - 岡崎研究所

英フィナンシャル・タイムズ紙のディビッド・ガードナー国際問題編集員が、2月25日に行われた議会選挙と専門家会議への選挙の結果について、2月28日付同紙に「イランの改革派が選挙で多くの議席を確保し、力を得ている」との論説を寄せ、イランは変化している、と論じています。論旨は次の通り。

選挙結果が示すロウハ二大統領への強い支持

 イラン・イスラム共和国ではイスラム主義者が支配しているとされているが、神政主義者の努力にもかかわらず、共和国の諸制度が反撃を続けている。
選挙の予備的結果は穏健なロウハニ大統領への強い支持を示している。穏健保守派を含む改革派は首都テヘランの30の選挙区すべてで強硬派に勝ったようである。ロウハニとラフサンジャニ元大統領が、ハメネイの後継者を選ぶ専門家会議選挙でリードしている。

 監督者評議会(任命制の候補者審査機関)は改革派数千人を立候補資格なしと排除した。1979年の革命以来の体制側は、97年ハタミが大差で大統領に選ばれたことや、2009年選挙でアハマドネジャド大統領の再選への抗議活動(緑の運動)を力で抑圧する必要があったことから教訓を得ている。擁護者、最高指導者、革命防衛隊など、神政制度はイランの政治を支配してきたが、共和国の諸制度がイランの有権者が希望すれば力を得るということを、苦い経験から知っている。改革派は数で強硬派を圧倒する戦術に出て、何千人の候補者を出し、少なくとも何人かが生き残るようにし、投票の重要性を強調した。

 来年再選挙を迎えるロウハニは選挙結果に大喜びしている。「競争は終わった。国内の能力と国際的機会を基に、イランの経済発展の新しい章を開く。人民は選挙された政府に信頼性と力を与えた」と彼は述べた。

 首都以外の結果はテヘランのように一方的ではないだろう。しかし強硬派は議会支配力を失った。ロウハニは国を国際市場や投資家に結び付け、経済を改革し、イランの若者にとり自由でそれなりの生活水準を与える良い場所にいる。

 しかし今後、激しい政争になろう。革命防衛隊などは、ロウハニと核合意は政権変化への坂道であると恐れている。最高指導者が核合意を支持したことが問題であったが、革命防衛隊は自分のビジネス帝国を守ろうとするだろう。しかし彼らの統制は完全ではない。

専門家会議(任期8年)の選挙も今回は重要である。ハメネイは76歳で病気と言われており、その後継者を選ぶことになろう。反動的な現議長モハンマド・ヤズディと、アハマドネジャド陣営の指導者、モハンマド・タグリ・メスバフ・ヤズディは、議席を失ったようである。そのうえ、ハメネイの代わりに最高指導者ではなく、評議会を選ぶとの話もある。

 ハタミや他の改革派は、イスラム共和国の核心的アイデア、ホメイニのヴェラーヤテ・ファギーフ(法学者統治)に挑戦しないで失敗した。ロウハニはそんな挑戦をする必要がないことになる可能性もある。

出典:David Gardner,‘Iran reformists find strength in numbers to secure place in polls’(Financial Times, February 28, 2016)
http://www.ft.com/intl/cms/s/0/2874e858-de20-11e5-b67f-a61732c1d025.html#axzz41ZcpQJtw

 今回の選挙は核合意という大きな進展があった後で、それを推進した穏健派が躍進した選挙であり、その意義は大きいものがあります。

共和国的側面増すイラン

 第1に、核合意と制裁解除を取引するロウハニ大統領の路線はイラン国民の大勢により支持されたと考えてよいでしょう。イランが特に経済面で国際社会に復帰してくることは確実です。大きなビジネスチャンスが出てきます。石油情勢についても、価格を下押しする方向で輸出量が増えることになるでしょう。これは選挙前からそうなると考えられていましたが、その方向性がよりしっかりしてきたと言えるでしょう。核合意は大筋で順守されるでしょう。

 第2に、イランはイスラム共和国です。その政治にはイスラム的側面と共和国的側面があります。ガードナーは、後者の面が強くなってきていると評価しています。

 イランの政治では、最終的権力はイスラム法学者である最高指導者に帰属しますが、他の面では民主主義的な決定による側面もあります。革命から年月が経つにつれ、共和国的制度、言い換えれば民主主義的制度の権力が強まっていると言えます。ただ、軍に対する最高司令官はハメネイであり、ロウハニ大統領ではありません。現秩序を守る保守派にはよりどころとするところが多くあり、ガードナーが示唆するようにヴェラーヤテ・ファギーフ(法学者統治)が簡単に力を失うとは思えません。ただ、最高指導者が評議会に変わると、大きな変化になります。

 なお、イスラムには政教分離の考え方はありません。サウジにおける王家とワッハーブ派の関係もその現れです。ただ、イランは法学者の統治を掲げている点が特殊です。

 イランの国内政治、対外政策がどうなるか、大国であるがゆえに、今後我々は注意を払っていく必要がありますが、方向としては良い方向に変化していることに疑問の余地はありません。変化を促す方向で、対イラン関係を進めていくのが良いと思われます。スティムソン元米国務長官は「人を信頼に値する人にするには、その人を信頼していくしか方法がない」と言ったことがありますが、イランについても、そういう態度で臨んでいくしかないのでしょう。

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