- 2016年03月28日 11:00
なぜ経済成長率が下がるとセックス回数が減るか
船曳建夫 編集=渡辺一朗 構成=奥田由意
江戸時代も晩婚、少子化だった
──江戸時代は夜這いの風習や春画からの連想で性に開放的だったと思われているが、晩婚で出生率が低かった。
江戸時代中期以降、人口は2000万から3000万まで緩やかに漸増しました。内政が安定し、内戦や大きな疫病・飢饉がなく、死亡率を低く抑えられたのです。300の藩で地方分権し、よく統治していました。
当時は晩婚で21歳くらいで結婚しており、出生率も低かった。子の数を養える範囲に抑えるために、共同体の知恵として、出産可能期間を短くする晩婚が実践されていたのです。
リンク先を見るわが国は江戸時代にも晩婚・少子化を経験していた!で、男性が集中していた。人口は男性30万人に対して女性20万人。未婚の男も多かったという。
一転、明治時代は国力増強のため、結婚・出産が奨励されました。富国強兵政策で、働き口も十分あり、子供が増えても養えた。人口は急激な上昇に転じ、戦後の高度経済成長期まで約100年にわたり増え続け、現在再び未婚・晩婚化に転じています。
日本列島で生産できる食糧には限界があり、社会が無意識にそれを感じ取って人口を抑制しようとしていることと、結婚を遠ざけたくなる“個人の事情”が合致した結果でしょう。
未来への不安で結婚には慎重
──結婚を遠ざける今どきの若者たちが抱える“個人の事情”とは?
今の若者が抱える3大問題は、家族、将来、恋愛です。恋愛については「恋愛感情がない」とか「異性と付き合ってもセックスはしない」など、価値観も多様化しています。
高度成長期には社会全体に上昇機運がありました。将来についても「なんとかなる」と考えたのか、恋愛したらセックスをしてそのまま結婚――という感じで、皆少ない選択肢の中でも早めに結婚していました。
ところが今は社会が固定化しており、選択を誤ると脱落するのではという不安がいつもつきまといます。そのため若者たちは「確実に未来を読みきりたい」と思っています。
特に女性は出産期限から逆算して結婚を考えるのでなおさら慎重になって、価値観の一致、収入の安定、自分の仕事や趣味への理解など、結婚の条件がどんどん厳しくなっていくのです。
画像を見る結婚を決断できない女が「BL」にハマる理由
どこまで深まっても結婚に行き着かず、自分と無縁なBLの世界なら、プレッシャーなく楽しめる!?
恋愛の先に結婚を意識することなく、純粋に恋愛気分を楽しめるBL(ボーイズ・ラブ)が人気なのも、そうした重圧の裏返しではないでしょうか。
性に関わる画像や動画に簡単に手が届き、「二次元」で満足しているともいえるでしょう。一方で、性に対する個人の意識が多様化しているにもかかわらず、メディアはセックスについてパターン化したイメージばかり発信しています。若い男女はそれに違和感や抵抗を覚え、性から遠ざかっているのでは、とも考えています。
画像を見る 船曳建夫(ふなびき・たけお)
< style="font-size: small;">1948年生まれ。 東京大学大学院教授。専門は文化人類学。ケンブリッジ大学大学院社会人類学博士課程修了(Ph.D)。主著に『二世論』『「日本人論」再考』『旅する知』。編著に『知の技法』シリーズなど。
既婚者の55.2%、交際相手がいる未婚者でも29.0%がセックスレスの実態
コンドームの老舗メーカー、相模ゴム工業が、全国の20代から60代の男女約1万4000人に対して行った調査(2013年1月実施)によると、既婚者や交際相手がいる人のセックスの回数は月平均2.1回。また、既婚者の半数以上の55.2%、交際中の人では29%が「セックスレスだと思う」と回答している。
リンク先を見るグラフは「セックスをしたくない理由」を男女・年代別に示したものだ。老若男女を問わず多いのが「面倒くさい」という身も蓋もないもの。30代女性では、実に約6割にのぼる。
30代では働きざかり、子育ての時期に当たるせいか「仕事や家事などが忙しく疲れている」という回答の割合が男女とも高い。
20代女性で「性欲がない」という回答が5割以上もあったのは特筆に値する。男性でも30~40代より、20代がより多く「性欲がない」と答えている。
この調査結果は恋愛や結婚から遠ざかりがちな近年の若者の動向とも一致している。ちなみに女性では、20代から50代までのほうが、60代よりも「性欲がない」と答えた割合が高い。
どの時点かで湧いてくるものなのか、枯れたまま老いてしまうのかは、気掛かりなところだ。
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