記事

【テロのニューノーマル】

ベルギーの首都ブリュッセルには以前、両親が8年間住んでいて、毎年訪れていただけに今週の同時テロ事件はひとごとではありません。The Economistは、こうしたテロが日常的になり警戒を怠れない状態が続くとして、New Normalと呼んでいます。

画像を見る

ニューノーマル(新たな通常)は、リーマンショックのあとの先進国の低成長・低金利・低物価を指して、Mohamed El-Erian(当時は PIMCOのCEO)が頻繁に使った言葉として知られますが、テロもそうだなんて恐ろしいです。

Bombings in Brussels, The new normal(ブリュッセルの爆発、ニューノーマル)は、ざくっとこんな感じです(全文の翻訳ではありません)。

Welcome to the new normal(ニューノーマルにようこそ)と結んでいます。

画像を見る

(すべてThe Economistより)

ブリュッセルの市民は、次なるテロをひどく恐れていた。しかし、いくら予測していたとは言え、3月22日にISが国際空港と地下鉄の駅で起こした連続テロ事件は、ショックであり、苦しみであったことに変わりない。死者は30人以上にのぼり、200人以上がけがをした。

今後、ヨーロッパは再度、▼悲しみ、▼罪のない人々が殺されたことに対する絶望、▼聖戦(ジハード)の名のもとに殺戮を行う若い男女への憎しみ、▼警察や諜報機関の能力に対する疑問、▼このニュースが忘れられるころに起きるであろう担当者の辞任、というテロの段階を踏んでいくことだろう。

それを待たずしても、2つの教訓は明らかだ。▼何年も追跡されながら、ISはヨーロッパの心臓部で連続テロ事件を起こすだけの資金力などのリソースがあること、▼欧米の大都市はすべてが標的になり得るという長期のテロ対策を覚悟する必要があること。

ISのしぶとさは、警戒するべきだ。去年130人以上が犠牲となったパリのテロ事件の主犯格と見られる Salah Abdeslamが警察に逮捕された数日後にブリュッセルが襲撃された。4か月にわたって、ブリュッセル郊外の自宅のすぐ近くで、同情的な友人や近所の人たちにかくまってもらっていたのだ。つまり、自らの手を血に染めることはできなくても、Abdeslamの手法を是認する人がいるということになる。

ISは支持を拡大しているだけでなく、新たなリクルートも行っている。ヨーロッパの6か国で、パリのテロ事件にかかわったとして18人のジハーディストが逮捕されている。それでもISは短時間でブリュッセルのテロのような複雑なオペレーションを組めることが分かった。

フランス当局によると、髪の毛の染料やマニキュアの除光液など一般に売っている化学物質で爆弾を作れると言う。今のところ、まだ爆弾製造装置やコミュニケーションの手段を分析することができていない。こうした脅威は続くだろう。ほぼ確実なのは、より多く都市でいっそうのテロが起きることだろう。

画像を見る

政府はどう対応するべきか?まずは、テロリストは、過剰反応を挑発したいのだと広く伝えること(an awareness that terrorists set out to provoke an overreaction)。彼らは、▼ドナルド・トランプなどの政治家がアメリカからイスラム教徒を追い出せと公約すること、▼東欧の首脳がキリスト教徒に限ってシリアからの難民を受け入れると言うこと、▼フランスの極右政党「国民戦線」党首のマリーン・ルペンらが屋外で礼拝するイスラム教徒をナチスの占領と同一視することなどを大喜びする。

こうした不寛容(intolerance)こそ、不満を抱く人々をテロリストの支持者に、過激派を自爆者に転換させていくのだ。同様にISは、西側諸国で何十人もの人々が自国で殺害されることを喜ぶ。ベイルートやトルコで何百人ものイスラム教徒が爆死したり、シリアの戦いをきっかけに難民キャンプで朽ちている何百万人とは違う意味を持つのである。

画像を見る

政府の対応として、一般の人々をちゃんと守るために政府が動いていることを示すことも重要だ。それは、過剰反応を防ぐことにもつながる。テロに対する一般の鋭い反応は、政府が国民を敵から守るという基本的な任務を遂行できないのではないかという危機感がベースにある。

過剰反応を呼び起こすことなく安心感を示せと言われると、どんな政府も苦労する。

2つのテロ事件のあったフランスは、今なお緊急事態 (state of emergency)にあり、警察は令状なく家宅捜索ができるほか、容疑者を自宅監禁することもできる。オランド大統領は今も頻繁にフランスは戦争中だと宣言している。去年11月のテロ事件の直後には理解できたとしても、今では逆効果である。

最大の解決策は中東和平だ。言ってみても夢に過ぎないが。その間にも、ISのテロリスト育成は続き、西側は西側で自国内の過激派と対峙しないといけない。

警察や諜報機関は自国のあらゆる分野で活動することが求められている。監視から過激派の教育まで。容易にできることとしては、必要な投資を行うこと。時代遅れのITシステムは、組織間の協力を阻む。諜報にかかわる人員の拡大も不可欠だ。組織間の協力は良くはなっているが、プライバシー保護が壁となり、データの共有が難しい。警察よりもジハーディストの方が簡単に国境を行き来できる(イギリスの EU離脱=BREXITが実現するとハードルがさらに高くなる)。

多くの人たちは、セキュリティと自由のバランスをめぐり苦しんだり、後悔したりするだろう。ただ、ジハーディストが西側を脅かす限り、行動を起こす以外の道はない

ニューノーマルにようこそ(Welcome to the new normal)。

あわせて読みたい

「テロ」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    「スゴイ日本!」ばかりのテレビ五輪放送。在留外国人は東京五輪を楽しめるか

    Dr-Seton

    08月05日 08:29

  2. 2

    なぜ選手が首長を訪問? 名古屋・河村市長のメダルかじりで「表敬訪問」に疑問の声

    BLOGOS しらべる部

    08月05日 18:37

  3. 3

    淀川長治さんが『キネマの神様』を絶賛?CMに「冒涜」と映画ファン激怒

    女性自身

    08月05日 09:07

  4. 4

    環境省がエアコンのサブスクを検討 背景に熱中症死亡者の8割超える高齢者

    BLOGOS しらべる部

    08月04日 18:05

  5. 5

    ベラルーシ選手はなぜ政治亡命したのか ルカシェンコ政権の迫害ぶりを示した東京大会

    WEDGE Infinity

    08月05日 09:18

  6. 6

    ワクチン完全接種5割の8月末まで好転無しか

    団藤保晴

    08月05日 09:02

  7. 7

    入院制限の前にやることがあるでしょう

    鈴木しんじ

    08月05日 14:09

  8. 8

    "ラ王世代"にはない価値観「これ絶対うまいやつ!」というラーメンが若者に大人気なワケ

    PRESIDENT Online

    08月05日 14:29

  9. 9

    ひろゆき「バカほど『自分にごほうび』といってムダにお金を使う」

    PRESIDENT Online

    08月05日 15:33

  10. 10

    東京都、新規感染者数5042人に疑問

    諌山裕

    08月05日 17:42

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。