- 2016年03月23日 13:00
米軍も諦めた研究を実用化! 人工クモの糸で産業革命【1】 -対談:スパイバー社長 関山和秀×田原総一朗
1/2村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影
山形・鶴岡に、米軍もNASAも断念した「夢の繊維」をつくった男がいる。関山和秀、32歳。鋼鉄より強いというクモの糸の人工合成に世界で初めて成功。自動車や飛行機への応用も目指すという。
将来はクモ糸が金属の代わりに
【田原】いまはどれくらいできるようになったのですか。
【関山】全方位的に改善していって、いまは生産性が当初の4500倍になりました。
【田原】すごいですね。
画像を見る ゴールドウィンと開発したクモ糸製ジャケット【関山】私たちはラッキーでした。日本には発酵や繊維の分野で世界トップレベルの会社がたくさんあります。たとえば発酵分野でいえば、お酒やお醤油の会社が高度な発酵技術を持っています。私たちは、そうした会社をリタイアしたエンジニアの方々に声をかけて、いろいろとご指導をしていただいた。これは本当に大きかったですね。
【田原】生産性が飛躍的に向上したきっかけはあったんですか。
【関山】ブレークスルーがあればおもしろいのですが、残念ながらそういう話は全然ないんです。研究は細かい工夫の積み重ね。地道に改善を重ねて、数ミリが数十ミリに、数十ミリが数百ミリに、そしてグラムになるというように、段階的に生産性を高めてきたというのが正直なところですね。
【田原】2013年には、つくった糸を「QMONOS」という名前で発表しました。
【関山】その糸で青いドレスをつくり、六本木ヒルズで発表しました。海外でも大きく取り上げられ、それなりに注目していただけました。さらに15年10月にスポーツ用品のゴールドウィンさんと共同開発したパーカを発表しました。これは16年に商品化を予定しています。
【田原】実用化が着実に進んでいますね。商品としては、やっぱり衣料品が中心ですか。
画像を見る【関山】現在、ほかにも自動車部品の小島プレスさんと提携して自動車に使えないかと研究しています。
【田原】なるほど。いま自動車メーカーは炭素繊維を車体に使おうとしていますね。クモの糸は、その代わりになりうる?
【関山】少し違います。クモの糸は炭素繊維と補完関係にあります。炭素繊維はとても硬いので自動車のシャーシに向いています。ただ、硬い素材は衝撃を吸収しにくいので、事故があってぶつかったときにもろい面があります。一方、クモの糸は衝撃を吸収する性能が高い。両方を組み合わせれば、硬くて衝撃にも強い樹脂ができます。ですから、クモの糸の実用化が進めば炭素繊維の普及も加速するという関係ですね。競合するとしたら、むしろ金属でしょう。自動車や飛行機などの輸送機器は、安全性を高めるとともに、軽量化して燃費効率を高めることも求められています。鉄の比重は7.8ですが、クモの糸は1.3くらい。将来は金属の代わりに使われる機会が増えていくはずです。
【田原】将来に期待大ですね。いま競合といえる会社はあるのですか。
【関山】サンフランシスコに同じようなことをやっているベンチャーがあります。でも、私たちのほうが1.5歩か2歩くらい先を行っています。
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