記事

『フジテレビ凋落』の書を読んで

フジテレビはなぜ凋落したのか」(新潮新書・吉野嘉高著)を読んだ。先日、立ち寄った神田神保町の三省堂で文庫売上ランキング4位だった。

私はかつて「日本テレビで体験した事で残しておきたい実話」についての本を書こうとした事がある。様々な出版社の人に接触したが、その度ごとにこれまでの「テレビ本」の最近の売上データを示されて「吉川さん。テレビについての本は今絶対売れません。」と言われた。

だから、同じテレビ本でもこの手のスキャンダラスで他人の不幸を抉る類のタイトルの本はなぜ売れているのだろうか?果たしてその内容とはどんなものであるのか?ちょっと覗いてみる様な気持ちで購入した。

しかし、この本、家に帰って読みだしたら止まらない。かなり面白くて一晩で読了してしまったのである。扇情的な題名の割にはかなり誠実な本であったのだ。

元フジテレビ社員(在籍23年間)の現・大学教授の著者が、自己の生々しい体験を交えつつ、多数のフジテレビ社員にも取材して、過去・現在の同局の幹部の発言等も掘り起こし、冷静にフジの浮沈を一つの原因(たとえば流布している『日枝会長が悪い』とか『韓流ドラマを数多く放送したから悪い』という極端な風説や噂)ではなく複合要因として数々な原因を挙げているのがとても好感を持てた。

私はなにか大きな変化というのは負の変化でも正の変化でもたった一つの原因ではなく複数の要因が関与していると言うのが歴史でも科学でも経済でもいわゆる定説であると思っている。この本の中の複数の指摘の中でも

「フジテレビが激変する時代や環境へ上手く的適応出来なかった。」
「社員がブランド意識を持ち過ぎ、視聴者の気持ちから乖離し、自らを一流企業のエリートと勘違いしてしまった。」
「上も悪かったが、下も悪かった。」
「大部屋制度が無くなり組織に壁が出来てセクショナリズムが幅を利かせ、組織としての一体感・流動性・スピード感を失った。」
「テレビ作りにのめり込む『テレビバカ』がいなくなり、細部の枝葉末節を指摘するが結局は責任を取らない上司が蔓延った。」
「万事に行きすぎる管理主義が横行した。」
「新しい冒険と実験的試みが減少してしまった。」

等の指摘が印象的であった。あれだけ隆盛を誇っていた組織の浮沈を描いた書として読むと他山の石として背筋がスーとなると言うか、誠に尽きせぬ興味があった。著者はもうフジを辞めたとは言え書くのがつらい内容もあったと想像されるのである。

そして、著者は最後に「フジがこうした危機を乗り越えるためにはこれからどうしたら良いか?」という提案すらしている。この本は正直で冷静であるがほとんど悪意が込められていないのだ。それどころか、読了後かすかに自分がかつて所属した「フジテレビジョン」に対する愛すらも感じるのである。

というわけで、全てのメディア関係者も「自分の組織・自分の関係している組織にも起こりうること」として「必読の書である」と言ったらちょっと大げさだろうか?
いずれにしてもかつての同僚がまだ沢山働いている組織について、勇気を持ってモノ申す作業は身を斬る仕事であることは想像に難くないのである。

昨今の企業や組織の浮沈を見るにつけ、内外からのまともな批判を封じたり無視したりした場合一体何がおこるのか?を思わず想起してしまったのである。(了)

あわせて読みたい

「テレビ業界」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    少年マガジンからグラビア奪うな

    倉持由香

  2. 2

    米国識者 GSOMIA破棄は「自害」

    高英起

  3. 3

    大谷がヒザ手術 二刀流は無理か

    幻冬舎plus

  4. 4

    前環境相「真意伝わっていない」

    原田義昭

  5. 5

    英軍の靖国参拝めぐる右派の誤解

    清 義明

  6. 6

    千葉悩ます倒木処理 識者が助言

    田中淳夫

  7. 7

    未だに処理水批判する韓国の悲愴

    自由人

  8. 8

    千葉のゴルフ場を悪者にする謎

    かさこ

  9. 9

    韓国政府の日本語サイトに苦言

    AbemaTIMES

  10. 10

    君が代独唱 平原綾香に称賛の声

    女性自身

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。