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岩盤規制をぶち壊す「農業×IT」の方程式

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「植物工場」で先を行くオランダやイスラエル

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安倍晋三首相は2014年3月、オランダを訪問し、施設園芸産業の集積地「グリーンポート」を視察した。オランダの農産物輸出額は米国に次いで世界第2位。施設園芸の高い生産性に支えられている。

【弘兼】私はオランダで最先端の施設園芸を取材したことがあります。オランダは日本の九州ほどの面積にもかかわらず、農産物の輸出額はアメリカに次いで世界2位。ガラスで建てられた温室は、IT技術を使い、徹底的に管理されていました。そしてワーヘニンゲン大学を中心とする「フードバレー」には、世界中から研究者が集まっていました。

【金丸】オランダだけでなく、イスラエルもITを活用した農業に積極的です。周囲を敵国に囲まれているイスラエルにとって、食糧の確保は安全保障のうえで非常に重要度が高い。現地でもトップクラスのIT技術者が農業に携わっていますね。

IT技術者は農作物の生産には直接関わりませんが、農業者とコラボレーションをしながら、ひとつのチームをつくりあげています。農業を戦略的に成長産業として捉えているから、期待も大きい。一方で、日本の農業はITの導入に消極的でした。農業以外の産業はどんどんハイテク化しているのに、農業は取り残されている。ほかの業界で起きている技術革新やイノベーションをもっと取り入れてほしいですね。

【弘兼】つまりほかの国では、これから農業のハイテク化が加速していくということですよね。

【金丸】ええ。アメリカやカナダ、オーストラリアといった農業国は、耕作地に恵まれていたため、これまで、それほどハイテク化が必要ではありませんでした。しかしこれからはオランダなどの先進事例を参考にしてどんどん進化していくでしょうね。

【弘兼】日本とオランダで「植物工場」を取材した経験からいうと、「これは日本人が得意なジャンルではないか」と思いました。出入り口ではエアカーテンをくぐり抜け、内部はコンピュータで空調管理されている。私は半導体の製造過程のようなイメージを持ったんです。

【金丸】おっしゃる通りです。自動車産業が世界各地に工場を建ててきたように、これからは日本の技術を活かした「植物工場」を輸出することもできるはず。コンテンツが自動車から野菜などに変わるだけの話です。

「食の安全」への関心は日本にとってプラスに

【弘兼】世界的に食の安全への関心が高まっています。「植物工場」の中には雑菌がいませんから、農作物は文字通り完全無農薬ですよね。

【金丸】そうですね。安全・安心というのは、日本の持つイメージとしても有効ではないかと思います。

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「株式会社」の農業参入も増えている

【弘兼】TPPが締結されると日本に安い農産物が流れてくると危惧する人もいます。これからの日本の農業について、どのように考えますか。

【金丸】安い農産物が入ってくるのは避けられないでしょう。私は日本の農業というのは、世界中のある一定以上のプレミアムを求める人に買ってもらえればいいと思っているんです。甘い、おいしい、安全。そういった魅力を評価してもらう。

【弘兼】「日本食」への関心も高まっていますよね。

【金丸】そうですね。たとえばいまアメリカの西海岸では「だし」や「ゆず」がそのまま英語になっているんです。「だし」という概念が浸透し始めた。日本が持っているものが世界から見るとすごいと思われている。ラーメンも世界的なブームになっています。それも日本のシェフが作るということが売りになっている。もっと日本人は自分たちが作るものに自信を持っていいと思いますよ。

弘兼憲史の着眼点

▼なぜ「社業1割」で政府の仕事に関わるのか

対談を終えた後、金丸さんに「社業と財界活動の割合はどれぐらいですか」と訊ねたところ、「社業1割ですかね」という答えが返ってきました。

「ちょっと危険だなと思っています。本来、そんなに余裕はないんですよ」

農業分野への取り組みは、金丸さんの本業に直接プラスになるものではありません。それでも金丸さんが政府の仕事に注力するのは、日本の将来のためにという思いがあるからです。

「会社というのは、社長の器通りにしかならない。本業以外の情報を得たり、付き合いを広げることは、器を大きくすることになる。短期的に自分の会社の利益を考えて口を出すのは、見苦しいし、美しくない。結局のところ、人のために動くことが自分のところに返ってくるんじゃないですかね」

私は『会長島耕作』で、島の台詞として「社業30%、財界活動70%のスタンスでいこうと思っている」と描きました。これからは会長として、自分の企業のことだけではなく、日本全体について考えて行動していく。そう宣言させたわけです。

財界活動とは、企業の勝手な都合を主張するのではなく、日本経済への責務を踏まえた提言をすべきです。そのためには異分野への関わりも求められます。その点で金丸さんはリアルな「会長島耕作」の1人だといえます。

▼リーダーや経営者には「未来志向」が必要

優れたリーダーや経営者は、前向きな未来志向の持ち主です。金丸さんは規制改革会議に、やる気にあふれた若手の農業関係者を何人も呼んだそうです。彼らの話をすると、実に楽しそうな表情に変わっていました。

「国際的な二毛作に取り組もうとする農家もあるんです。日本で収穫を終えたら、今度はインドネシアで田植えをする。稲作の高い技術は海を越えます」

悲観するだけでは、物事は前に進みません。未来を向く人たちを、見つけ、つなげていく。金丸さんの得意分野が活きていると感じます。

弘兼憲史(ひろかね・けんし)
1947年、山口県生まれ。早稲田大学法学部を卒業後、松下電器産業(現・パナソニック)勤務を経て、74年に『風薫る』で漫画家デビュー。85年『人間交差点』で第30回小学館漫画賞、91年『課長島耕作』で第15回講談社漫画賞、2003年『黄昏流星群』で日本漫画家協会賞大賞を受賞。07年紫綬褒章受章。

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