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- 2016年03月19日 07:42
「社民党は"若者のためにも憲法9条をしっかり守る"」【各党に聞く福祉・若者政策】
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吉川元衆議院議員
BLOGOS編集部では参院選に向け、主だった党の担当者にインタビューを実施。今回は社会民主党所属の吉川元衆議院議員に話を聞いた。【大谷広太(編集部)】
■奨学金制度改革を
—とくに社会福祉・若者分野で解決しなければならないと考えている政策課題は何でしょうか。吉川:もう山程ありますからね(笑)。若年層で言っても、子どもから大学生まで、切り口が様々ですから。そこで、我が党では若者向け政策集「Youth Vision」などを掲載している若者向けホームページを立ち上げました(社民ユース)。
ひとつは奨学金制度改革ですね。日本の奨学金制度は世界にも類を見ないくらいガラパゴス化した、非常にいびつなものです。現在、有利子奨学金の財源は「財政投融資」なので利子を取っていますが、ナンセンスな話ですよね。諸外国では、そもそも奨学金は給付するものであって、日本のように「有利子」と「無利子」に分かれていて、後者をわざわざ「給付型」とは言ったりするようなことはないからです。海外の有識者に尋ねてみても「それって"学生ローン"でしょ?」と言われてしまうのです。
現在、学部卒の段階で200〜300万円、院まで行くと1000万円近い”借金”を背負って社会人になっているのです。私たちが社会人になった頃は、正規の仕事に就けて、なおかつ給料も毎年上がっていく、ボーナスも出る、という将来に対する見通しもありました。しかし、今や4割の若者が非正規雇用になっているという状況です。どうやって返済していくんだということになりますよね。
こうした状況を受けて、文部科学省が給付型の奨学金について研究をしていると言うのですが、想定しているのは千数百人程度の規模で、全体の学生から考えればごくわずかですから実施されても解決にはなりません。政府が検討している「所得連動型」も、それ自体は悪い話ではないけれども、返済期間が30年、40年…と延びていくことになる。返済が終わらないうちに、今度は自分の子どもが奨学金を借りることになるわけですから、一族で”奨学金返済地獄”に陥ってしまいます。
そこで社民党では、奨学金は原則、無利子とし、返済義務の無い「給付型奨学金制度」の創設と量的拡充を目指しています。また、所得連動型についても、一定年限、例えば20年で区切り、その後は免除する仕組みをつくります。
■労働時間の規制撤廃をしてはならない
吉川:それから、雇用の問題ですね。非正規雇用の方がこれだけ増加してしまっているのは、経済現象ではなくて労働政策の誤りによるものです。規制緩和によって労働市場を“焼け野原”にしてしまったという側面があるのです。もともと労働法制というのは、労働者保護のためのものなのですが、ただでさえそうした考え方が薄い派遣法が、さらに数次に渡って緩和されてしまっているのです。加えて、労働時間の規制撤廃が議論されていますが、これは簡単に言えば残業代を払わずに残業させることを可能にするものです。対象者について政府は「年収1000万を超えるレベル」としていますが、ここで派遣法のことを思い出して欲しいのです。当初、派遣法では「特殊な技能を要する職種に限っているんだ」ということで、通訳や当時まだ普及していなかったコンピュータ関連の職種が対象で、「この人たちは技術があるから、賃金は高く、下がらないんだ」というのがその理由でしたが、実際には賃金は下がっていきましたし、派遣できる領域も広がって、今やなんでもできる状態です。最初は小さな穴だったものが、経済界の求めに応じてどんどん広がっていったのです。
経団連は最終的にこの基準を年収400万円にまで下げたい意向のようです。そうすれば働かせる側、雇用する側が労働時間の管理をしなくても良いことになってしまいます。残業代が発生している間は、コストの観点からも、労働が正しく行われているか企業がチェックする意識が働きますが、制限がなくなれば管理もおろそかになるでしょう。これでは長時間労働が蔓延し、過労死が増大するのは明らかです。学校の先生を見れば、それがよくわかります。残業代が出ませんから、国からの仕事、県からの仕事、教育委員会の仕事、あれもやれ、これもやれという状態です。現場の管理者は労働時間を把握する、残業を制限する、という感覚もないから、全部やらせたほうが良い、という雰囲気ですよ。
19世紀イギリスの「工場法」に始まり、20世紀には「労働時間は法的に規制しなければならない」という考え方が基本になっています。「市場に任せれば良い、労使交渉で決めれば良い」という考え方では、労働時間は際限なく延びてしまうものなのです。この大原則、教訓をあっさりと捨ててしまうのは、若者にとっては地獄のようなものです。
■教育分野への公的支出拡大を
ー少子化、子育てについてはいかがでしょうか。吉川:先ほどの奨学金の問題に戻るようですが、若者と話していると、特に男性で「正規になったら結婚しようと思う」と言う人が結構いるんです。結婚して、子どもを産みたい、育てたいとなったときに、やはりお金が重要になってきます。とくに教育分野の資金です。
日本は教育予算の公的な支出がOECD諸国の中で6年連続で最低です。1位になれとは言いませんが、せめて平均以上に持って行くために、現在の約1.5倍、つまり5兆円の教育予算を7〜8兆くらいに引き上げなければだめだと思います。奨学金や、厚生労働省の管轄ではあるけれども、保育も含めた、「子育て」「教育」に関する公的支出の拡大をしなければなりません。
文部科学委員会で先日も議論したのですが、財務省は「今は少子化なんです、だから子どもが増えたら教育予算を増やします」という説明をします。しかし、これは詭弁です。子どもを産み、育て、教育するのにはお金がかかる、そのお金がないから、子どもが増えないのです。財務省の言う通りにしていると、いつまで経っても教育予算は増えず、少子化もますます進むと思います。選挙目当てで補正予算で4000億円をバラまくくらいだったら、教育予算を増やすべきでしょう。
就学前の子どもたちへの保育や幼稚園の「質」も非常に大切です。今、政府は50万人分の保育の受け皿を拡大すると言っています。しかし、質の悪い保育はかえってマイナスだと言われていますから、それが気がかりです。事業所の中に保育所をつくることが推進されていますが、工場の場合、有害物質や騒音、臭いといった問題はどうするのでしょうか。あるいは、東北地方の沿岸部では住宅や学校の高台移転が始まっていますが、事業所はまさに低地に設定されています。そこに保育施設を作って本当に良いのか、考えなければなりません。親を働かせるために便利だから、ということではいけないのです。
貧困の連鎖も日本は異常ですね。総理にそのことを質問すると「日本は豊かな国です」と言うのでますが、今や6人に1人が貧困家庭で、ご飯がお腹いっぱい食べられない子どもが存在しているのです。これでは戦後間もない頃の日本のようだと思います。そうした子どもたちに食事を提供する「子ども食堂」などが、NPOやNGOが寄付を受けながら頑張っていますが、そこに公的資金を入れていかなければなりません。子どもの貧困は、実は政治の貧困に他なりません。
こんなひどい話もあります。政府が昨年10月に「子供の未来応援基金」というのを作ったのですが、募集開始からの2か月で集まった寄付金は300万円でした。しかも全て個人からのもので、企業からはゼロでした。そこでPRに力を入れた結果、2月末には約2000万円まで増えましたが、そのPRのためになんと2億円も使っているんですよ。寄付にたよるのではなく、予算を付ければいいのにと思います。



