- 2016年03月18日 12:18
反アサド勢力が停戦合意に失望した理由 - 岡崎研究所
2月11日のシリア停戦合意について、ケーガン夫妻(夫フレデリック:米AEI Critical Threatプロジェクトディレクター、妻キンバリー:米Institute for the Study of War所長)が、米AEIのサイトに2月12日付で「シリアの停戦はロシア、アサド、イランにとっての大勝利」との論評を寄せ、厳しくこの合意を批判しています。両名の論旨は次の通り。
[画像をブログで見る]長引く紛争により廃墟と化したダマスカスの街(iStock)
停戦後も人道支援をコントロールできるアサド連合
2月11日のシリア停戦合意は、ロシアとアサド体制にとって大きな勝利である。ロシア、イラン、シリアは、アレッポを包囲し、戦場での優位を得るための軍事作戦を行っている最中である。今般の「敵対行為停止」合意は、彼らのこれまでの成果とさらなる前進を確実なものにする一方、米国が支持している反政府軍がそれを押し戻すのを妨げる。
合意は、アレッポとその周辺の何十万もの人々へのアクセスを認めることをアサド連合に要求していない。アサド連合は、自ら包囲し飢えさせている他の地域への人道支援も完全にコントロールしうる。合意は、米支持の反政府軍の参加なしで結ばれており、反政府軍が重要な地を失っている時に、彼らに停戦を強制するものである。
さらにロシアは、シリア北部の全ての反乱軍をISISかヌスラ戦線と決めつけている。ラブロフ外相は今日、「不法な軍事組織に占拠された都市を解放するための攻撃は必要なことだ。占拠はヌスラ戦線、ジャイシュ・アル・イスラム、アハラール・アル・シャームによりなされている」と言った。
ロシアは今般の合意を、アレッポの全ての反乱軍に対する作戦、アレッポの包囲の継続を許すものと見なし、現在アレッポにいる非ヌスラ戦線、非ISISの反乱軍を弱め続けるだろう。
今般の「停戦」は、国連が人道に対する犯罪と呼んだことをアサド体制に一時的に止めさせるために、反乱軍に譲歩を求める政策を継続するものである。
合意は、ウクライナの停戦のためのミンスク合意に似ている。2015年2月以降、全ての主要なロシア人、分離主義者の軍事的攻勢は停止させることになっていたが、ロシアは、紛争における交戦者でありながら、中立の第三者の地位を獲得、ウクライナ政府から譲歩を引き出すために軍事作戦の増強、縮小を繰り返している。
今般のシリアの「敵対行為停止」は単に失敗に終わるばかりでなく、非ISIS、非アルカイダのスンニ派反政府軍と大衆を疎外してしまうだろう。米国の安全保障上の重要な利益に沿った形での意味ある政治的解決は、彼らを頼りにせざるを得ないのに。
出典:Frederick W. Kagan & Kimberly Kagan,‘The Syrian ceasefire is a big win for Russia, Assad, and Iran’(American Enterprise Institute, February 12, 2016)
http://www.aei.org/publication/the-syrian-ceasefire-is-a-big-win-for-russia-assad-and-iran/
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反アサド勢力を絶望に追いやる合意
2月11日の「敵対行為停止」合意は、良い合意として歓迎する向きも少なくありませんが、この論説が言うように、多くの欠陥があります。
ロシアの空爆やアサド軍の攻勢を止めたり、ヒズボラなどイラン関連勢力の手を縛るよりも、米国などが支持する反政府勢力の手を縛る怖れが大きいです。これは今回の合意について相談もされなかった反アサド勢力を絶望させることになるでしょう。
ロシアはテロリストへの空爆は続けると言っています。ロシアの言うテロリストには、イスラム国やアルカイダのほか、アサドに反対する諸勢力が含まれています。また、アサドは全国での支配の確立を目指すと言っています。
アレッポやその他での人道的危機を回避するために人道援助を届けるということは確かに良いことです。それが今後うまくいき、結果として停戦の効果が出るのであれば今回の合意は意味がありますが、そういうことになる可能性はあまりないように思われます。
ジョン・ケリー国務長官は、人道上の措置を徐々にとっていき、状況を転換することを狙っているのでしょうが、ロシアがアサド政権の再確立を目指していることをよく認識し、騙されないように注意深く対処するべきであると思われます。
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