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いま必要なのは「三本目の矢」の議論

最近の経済政策に関する議論について、若干感じるところがあり、書かせていただきます。

 予算委員会の議論においても、あるいはメディアや党内の議論においても、いわゆるアベノミクス三本の矢について、一番重要な三本目の矢、つまり企業や個人といった各プレーヤーの稼ぐ力、リスクテイクできる環境とその後押しをするための改革という部分に焦点が当たらず、ある意味でそのような構造的な改革をするための時間稼ぎとしての位置づけだった、一本目と二本目、つまり金融緩和と財政政策にばかり焦点が当たっている、そんな気がしてなりません。

 確かに外国人投資家など、日本市場への投資を行っている機関投資家にとって、一番注目する材料が即効性の高い金融政策というのは理解できますし、ある意味当然の反応だと思います。そして、デフレ脱却局面での最初の一押し、呼び水としての需要創出、あるいは法人税減税などの財政政策に当初注目が集まったのもまた当然といえば当然です。

 しかし、アベノミクスのもともとのコンセプトどおり、真にいま必要とされているのは日本の社会構造、企業の機動性を高める改革であり、それは同時に日本の国内の様々な資源や外の資源の国内への呼び込みと相まって、長期的かつ自律的な経済成長に不可欠の政策だったはずです。これこそが安倍政権の経済政策の本丸中の本丸です。

 実際この三年間、労働分野と社会保障分野を除けば、様々な分野での規制改革はそれなりに進み、またコーポレートガバナンス改革や株の持ち合い解消という、企業の収益性を短期的にも長期的にも高める政策も実行に移されてきました。様々な戦略的な減税も実行に移されてきました。

 人口減少に対応するための施策として、マーケットの縮小という側面に対してはTPPへの参加により外のマーケットを日本の市場と同様にチャンスとできる環境を整え、労働力の減少という問題については、女性の就業の支援も従前以上に精力的に行ってきました。

 とはいえ、もちろんまだまだ足りないところもあります。抜けているところもあると思います。だからこそ、こうした点についてのしっかりとした建設的な具体的な議論をこそ、政治家もメディアもせねばなりません。

 実は、世界の標準から考えれば、すでにそれぞれの企業がそれなりのリスクをとれる、積極的な成長戦略に打って出ることができる環境整備は多くの産業においてなされてきたといえる状況でもあります。

 にもかかわらず、このような環境変化が民間セクターのリスクテイクにつながっていないということが根源的な問題の一つです。マイナス金利という環境に対する反応を見てもこの点は明らかだろうと思います。

 本来議論すべきは、なぜこのような事態となってしまっているのか。何が足りないのか、政府は何ができるのか、あるいは何をやってはいけないのか。三本目の矢についての議論でなければなりません。

 金融・財政にはやはり限界がありますし、これは決して打ち出の小づちではありません。いつまでも一本目の矢や二本目の矢に頼るわけにはいかないのです。

 ともすると金融政策、財政政策の評価に終始し、真に必要な構造改革という痛みを伴う政策についての議論をせずにいることは、日本経済の真の成長にとって決していいことではありません。

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