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3つの珍事が同時に

警察官、自白強要を否定 栃木・小1殺害公判
朝日新聞 3月15日

 2005年に起きた栃木県今市市(現日光市)の小1女児殺害事件で、殺人罪に問われた無職勝又拓哉被告(33)の裁判員裁判は14日、宇都宮地裁で自白の任意性に関する審理が続いた。被告の取り調べを担当した栃木県警の警察官3人が証人として出廷し、自白の強要を否定した。
 「平手打ちをされて額を壁にぶつけてけがをした」との被告の訴えに対し、警察官は「被告が壁に額を打ち付ける自傷行為をした」と反論。「女児を殺してごめんなさい、と50回言わされた」という被告の主張についても、警察官は「言っていない」と話した。これらのやりとりは、録音・録画されていない。
 一方、殺人容疑で被告が14年6月に逮捕された際、弁解内容を記録した録音・録画が法廷で再生された。「弁解することはない」と言う被告に対し、「やったのか、やっていないのか、どっちだ」と警察官が繰り返し質問。被告は「事実に間違いない」とうつむいて答える一方、その日のうちに「殺してない」と供述を翻す場面も映し出された。
 被告人質問では、逮捕後に検事の取り調べで殺害を認める供述調書にサインした理由を問われ、「検事に『自白しなくても警察は困らない』と言われて、弁解の余地がないと思った」と説明した。(岩佐友、山下裕志)
>>>>>> この裁判3つの点で前代未聞といえる。

1. Nシステムによる証拠が裁判で資料とされたこと
2. 被疑者への尋問を撮影したビデオが延々と裁判で流されたこと
3. 解剖執刀医が最初から弁護側についていること

Nシステムはひき逃げ事件だけでなく、殺人事件などでも、犯人の車両の追跡に使われている。もはや、警察内ではあたりまえの話なのだが、それがあたかも秘密であるかのような取り扱われ方をされてきた。いかにも日本らしい隠蔽体質的な話だが、むしろそのような話ははっきりとさせたほうがいいだろう。自白に頼る刑事司法から脱却するためにも、客観的な証拠収集は必要なので、この裁判を契機に、隠すことなく正々堂々とNシステムの利用法について議論されるべきだろう。

尋問のビデオについては、自白を強要したか否かが争点となっている。他の先進国がやっているように、取調べはすべて録画するといった完全可視化が行われていれば、自白を強要していないということがはっきり示されるだろう。しかし、日本では完全可視化はされていないので、自白を強要された可能性はどうしても否定されない。警察庁や検察庁は完全可視化には否定的だったが、そのような態度をとるということは、やはり自白を強要しているのだろうなと推察してしまう。この裁判を契機に、完全可視化について再度議論がされるべきだろうと思う。

鑑定人が最初から弁護士についてしまうというのは、我々法医学をやっているものからするときわめて異常な事態である。警察あるいは検察と、解剖執刀医の間に何かあったのだろうなと思ってしまう。死後経過時間や出血した量について、解剖執刀医と他の法医学者で意見が異なっているのだが、ある意味では法医学者による鑑定のバラツキが現れてしまった裁判ともいえる。他の国であれば、法医学研究所に複数の医師が所属し、ディスカッションを経て鑑定がなされるので、ここまでのばらつきは発生しないだろうと考えられる。このような異常な事態が起きているのも、法医学者のポストを増やす施策を怠った国のせいでもある。

この裁判、判決はまだ出ていないものの、どのような判決が出ようとも、日本の刑事司法の危うさが垣間見える裁判のように思う。国が痛切に反省しなければならないことがある。

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