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「東芝問題」で注目された社外取締役「量」よりも深刻な「質」の問題 - 坂本幸雄

「東芝問題」を受けて、あらためて社外取締役に注目が集まっている。そもそも会社のガバナンスを、社内の経営陣のみが監視するということ自体、矛盾があり、米国では「ガバナンスがない」こととみなされる。

 昨年6月に東証一部・二部上場企業を対象に、社外取締役を2人以上選任しない場合の説明が義務化されたが、これで会社のガバナンスが強化されるかというと、答えはノーだ。社内の取締役のほうが多ければ、多数決で意見は通らない。米国では社外取締役の人数のほうが多い、ということが一般的である。

 日本企業の社外取締役は、大学教授、弁護士、検察や官僚のOBなどが目立つ。個々の能力は高いのだろうが、経営には精通しておらず、適性があるとは思えない。日本企業は議論、異論を嫌う傾向にある。余計な口出しをして欲しくないから、あえて経営に疎い人材を選んでいると言っては言いすぎだろうか。

 私自身、日本企業の取締役を務めた経験があるが、取締役会で発言すると、「余計なことは言わないでくれ」と注意を受けた。また、とある日本企業では取締役が発言したところ「ヒラトリは黙ってろ」と上役に言われたそうだが、こうした例は枚挙にいとまがない。一方、米国や台湾企業の取締役会にも参加したことがあるが、こちらの議論は活発だ。彼らは異論を「価値あるもの」として歓迎する。

  私がエルピーダメモリのCEOを務めていたとき、社外取締役として迎え入れたのは、①海外の半導体企業の現役CEO、②「半導体の父」と呼ばれた日立製作所出身のエンジニアで一時期社長候補にもなった人物、③証券会社の現役役員、の3人だ。取締役会ではそれぞれの方から貴重な意見をいただいた。

 証券会社の役員の考え方は大変勉強になった。彼は従業員の給与を上げる、投資をする、提携をするなど、ことあるごとに「それは株主にとってどういう意味があるのか?」と質問をしてきた。常に株主の視点を提供してくれたことは、実務ばかりやってきた私にとって貴重だった。

 CEO就任後まもなくのころ、取締役会で米マイクロンと提携したいと話した。彼は真っ向から反対し、結果として時期尚早という判断になったが、今思えばあの選択は正しかった。当時、エルピーダのシェアは低く、その状況で提携すれば、マネジメントはマイクロンがほぼすべて握ることになるからだ。

 経営者はいつの間にかメリットしか見えない状況に陥ることがあるため、冷静に見てくれる人がいることは大きい。日本企業に多いイエスマンタイプのみの取締役会であれば、提携していただろう。

 社外取締役が営業、財務、技術などの現場に自由に出入りできる仕組みを設けておけば、不祥事予防にも繋がる。

 社外取締役との間には良質の緊張感があった。これが会社の競争力を向上させ、ガバナンスを強化していたことは間違いない。

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