- 2016年03月12日 12:29
フィリピンの大統領選にもトランプ氏? 過激発言で支持率伸ばす 比大統領選の運動解禁 有力候補者5人は混戦か - 水谷竹秀
フィリピンで2月9日、次期大統領選の選挙運動が解禁された。有力候補者5人は各地で決起集会を行い、5月9日の投開票日まで3カ月間、論戦は続く。
2010年に行われた前回大統領選ではアキノ大統領が2位以下に大きく水をあけて圧勝した。しかし、今回の大統領選では「一馬身」抜きん出た候補者が不在のため、有権者の間でも消去法で候補者選びを考えるなど、早くも戸惑いの声が上がっていた。
選挙運動解禁後に初めて開かれた公開討論会では、出席した有力候補者5人が貧困や汚職、ミンダナオ和平問題などを中心に舌戦を繰り広げた。
ダバオ市政を長年牛耳ってきた異色の存在
フィリピンは6%前後の経済成長を維持しているが、貧富の格差は依然として広がったままだ。汚職問題については、アキノ政権がこれまで最優先課題として取り組み、一定の改善はみられたものの、撲滅にはほど遠い。
3月上旬に公表された有力候補者5人の支持率調査結果によると、1位がグレース・ポー上院議員で支持率26%。続いてジェジョマール・ビナイ副大統領が25%、ロドリゴ・ドゥテルテ、ダバオ市長とマニュエル・ロハス前内務自治長官が並んで21%を獲得し、最下位がミリアム・サンチャゴ上院議員の3%だった。
中でも異色の存在としてこれまで注目を集めてきたのがドゥテルテ市長だ。ダバオ市政を長年牛耳り、治安対策を徹底した行政手腕が評価される一方、犯罪者を殺害する処刑団への関与も認めており、米大統領選候補者のトランプ氏を彷彿とさせる過激発言が問題視されている。
公開討論会では「大統領に選出された暁には、違法薬物や犯罪者の取り締まりに向けて法を執行する。犯罪者の殺害も命じる」と強調した。超法規的殺人を正当化するこれら同市長の発言に対しては、国際人権団体などからすでに批判が相次いでいた。
支持率1位のポー上院議員は国民的俳優の娘で、前回上院選ではトップ当選を果たした。ところが大統領選立候補を前に立候補資格の有無の議論が浮上した。審理を続けてきた最高裁は3月上旬、資格を認める判決を下したため、支持率をさらに伸ばす可能性が出てきた。
ポー上院議員と僅差で2位につけたビナイ副大統領は、マニラ首都圏の商業都市、マカティ市政時代に起こした汚職疑惑が現在も尾を引いており、今後の選挙運動に影響を及ぼす恐れがある。
アキノ大統領から後継候補に指名されたロハス前内務自治長官は出馬以来、支持率が低迷中。選挙運動期間中に逆転劇を果たさなければ当選は覚束ない情勢だ。
いずれの候補者も国内向けの政策は提言しているが、外交政策に関する明確な意思はこれまでのところ見えない。
アキノ政権下で急浮上した南シナ海南沙諸島の領有権をめぐる争いでは、実効支配を拡大し続ける中国への対策が次期政権下でも求められる。
親中国に傾く可能性もある
この問題に絡んでアキノ大統領は昨年6月、日本で行われた日比首脳会談で、中国の実効支配拡大は「一方的」として深刻な懸念を表明。その上で、日比防衛装備品・技術移転協定の締結に向けた交渉を開始することで一致した。同協定は今年2月末に署名され、南シナ海問題を踏まえた安全保障・防衛分野の協力関係が強化される。
候補者5人中、対中政策で現政権と同じく強行路線を取るのはロハス前内務自治長官だろう。その他の候補者が選出された場合、親中路線に舵取りを切る可能性も指摘されている。今後の状況次第で各候補者の支持率は変動するとみられるが、かなりの混戦が予想される。
- WEDGE Infinity
- 月刊誌「Wedge」のウェブ版



