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関西電力高浜3・4号機:大津地裁の仮処分決定への私見

昨日の関西電力高浜原子力発電所3・4号機に係る仮処分決定の全文は、先のブログ記事に記載したので適宜参照されたい。

 今日の日本経済新聞ネット記事でも報じられているように、今回の仮処分決定では、過酷事故踏まえ規制基準の策定の必要性や、津波対策や避難計画への疑問が呈されている。

 私から見ると例えば、過酷事故を踏まえた基準が一応に策定されてはいるが、仮に追加すべき基準案があるならば、確たる手続に基づいて検討すれば必要十分となる。避難計画についても、関係各自治体において検討されているところで、今後とも適宜改訂が行われていくことを期待する。
 過酷事故であった福島第一原子力発電所事故を踏まえるならば、事故炉は別として、事故炉以外のプラントの稼働を強制的に停止し、又は停止させ続けるのは大きな間違いであり、逆に危険極まりない。

 今の日本の原子力規制行政や司法判断における最大かつ非常識な問題点は、事故炉以外のプラントまで稼働停止を強制していることと、停止していれば安全だとの思い込みが蔓延していること。福島事故は、大地震後に全基が緊急停止した後に大津波が襲来したことによるものであり、発電中の事故ではない。
 “停止塩漬け状態”は逆に危険だ。ペーパードライバーを増やすのは、交通安全上、全く芳しくない。
 新規制基準の適用に係る的確な猶予期間の設定をしないと、超長期な原子力事業に関する安全投資資金の確保ができなくなる。
 原子力事業の全工程を俯瞰した行政判断、司法判断、マスコミ報道にならないと、原子力強制停止の継続によって、原子力安全を巡る技術や知見の“壊死”が更に拡がるだけだ。

 因みに、昨年5月13日付け夕刊アメーバニュースでの拙稿「原発再稼働を巡る福井地裁と鹿児島地裁の対極判断 〜 どちらが科学的に妥当なのか?」で記載した内容が参考になるので、以下に抜粋しておく。
・・・再稼働が見込まれる関西電力高浜原子力発電所3・4号機と九州電力川内原発1・2号機の再稼働差し止め仮処分申請について、対極的な司法判断が下された。

 高浜原発については、福井地方裁判所が、原子力新規制基準を「緩やかにすぎて合理性を欠き、適合しても安全性は確保されていない」と批判し、再稼働差し止めの仮処分申し立てを認める決定。
 川内原発については、鹿児島地裁が、新基準を「最新の調査・研究を踏まえており、内容に不合理な点は認められない」とし、再稼働差し止めの仮処分申し立てを認めない決定。
 この違いはいったい、どこから来るのだろうか?
 福井地裁は、新基準について「深刻な災害を引き起こすおそれが万が一にもないといえるような厳格な基準にすべき」と、原発に"ゼロリスク"を求め、裁判官自らが原発の安全性について判定。
 鹿児島地裁は、新基準について「専門的知見を有する原子力規制委員会が相当期間、多数回の審議を行うなどして定めたもの」と評価し、安全性が保たれるか否かではなく、その審査プロセスに問題があるか否かを判断の根拠にしている。
 では、裁判所はどこまで立ち入って判断を下すべきなのか?
 最高裁判所は、1992年に四国電力伊方原発の原子炉設置許可取り消しを求めた訴訟で、「裁判所の審理、判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきである」、「現在の科学技術水準に照らし、・・・調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の判断に不合理な点があるものとして、・・・違法と解すべきである」と述べ住民の訴えを棄却した。
 即ち、裁判所は高度な科学的判断が必要な原発の安全性を直接審理するのではなく、行政が行う審査のプロセスに不合理な点が有るか無いかを審理するとしたわけだ。鹿児島地裁は、この最高裁判決を踏まえた審理方法によって判断を下した。福井地裁は、そうはしなかった。関電が保全異議を申し立てたことから、今後、福井地裁で再審理される。
 再稼働差し止め決定が維持された場合、関電は名古屋高裁金沢支部に抗告することになり、最終的には最高裁まで争うことになるのだろう。そうなった場合、最高裁はどのような判断を下すだろうか。
 尚、昨日の日本経済新聞ネット記事には、これまでの経緯などが簡潔にまとまっている図表があるので参照されたい(資料1、資料2)

<資料1>
画像を見る
(出所:2016.3.9 日本経済新聞ネット記事


<資料2>
画像を見る
(出所:2016.3.9 日本経済新聞ネット記事

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